私は大学で教職課程の授業を担当していることもあり、受け持つ演習の受講生は教員を目指す学生が多い。彼らは教員採用選考を受験予定であるため、選考で実施される筆記試験や受験勉強の際に役立つと思い、演習の授業の一部を使って速読法のトレーニングを実践している。
「速読」は「読む」という行動を時間的に速く行うことであり、私が実践している速読法のトレーニングでは時間測定読書法(時間を計りながら本を読ませる方法)を取り入れている。一回のトレーニングにかかる時間は30分であり、それを5週に渡って行う。トレーニングを始める前の学生達の読みの速さは、1分間あたり400字から600字と個人差があり、トレーニング終了後にはそれぞれ倍くらいの速さになる。
昨年実施したトレーニング後のアンケートには、次のような感想が述べられていた。
・今まで本や文章を読むという習慣がなかったため、トレーニングによってスピードはもちろんだが、内容の理解度も向上したように感じた。
・普段、本は読まないので、文章を読むことに集中できる良い時間だった。テストの文章を読む時に活かして今後も取り組みたいと思う。
・自分は読書が好きではなくて、その理由が読むことが面倒くさかったり、時間がかかってしまうからである。しかし、速読トレーニングを始めてから少しずつ読むスピードも上がっていき、内容の理解も良くなり、これから本を読んでみようと思った。
紹介した内容は一部だが、ほとんどの受講生が読むスピードが速くなったと実感しており、内容の理解度も高まったと感じているようである。なかでも、トレーニングを経験したことで本を読んでみようと思うといった意欲的な感想は、指導者としてのやりがいを感じさせてくれる。
意欲は、教育心理学では動機づけと呼ばれており、学習行動の出発点となる最も基本的な問題として取り上げられてきた。これまで私が実践してきた速読法のトレーニングは、当初は学生達が速く読めるようになれば受験や受験勉強に役立つと思って始めたことであったが、今では彼らの普段の読書行動の変容も期待できるため、今後も継続していく。
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