2024年4月に関東学院大学高等教育研究・開発センターに着任した高木です。これからどうぞよろしくお願いいたします。
本学では、毎年3回「教育実践力向上セミナー」と題した新任教員向けのFDを実施しています。9月上旬に開催した第1回セミナーでは、参加教員に春学期の授業を振り返り、感じた課題や悩み、うまくいった点などについて意見を交換してもらいました。本学は11学部14学科で構成され、複数のキャンパスに分かれているため、部門を超えた教員間のネットワークを構築することも、本セミナーの目的の一つです。
さて、第1回セミナーの参加者12名に、「FDとして関心があるトピック」についてアンケ―を実施しました。11個のトピックに対して4段階評価で回答を求め、その中で特に関心が高かったものをご紹介します。
まず、出席者全員が「とても関心がある」(5名)あるいは「少し関心がある」(7名)と答えたのは、「授業運営や学生対応の改善」と「授業課題と評価」でした。これは大学教員にとっては当然の関心事かもしれませんが、自由記述欄を見ると、特に合理的配慮が必要な学生への対応に関する悩みが見られます。例えば、出席状況が成績に与える影響や、教員間での情報共有の方法、教員による対応のばらつき、授業における双方向性の確保、といった課題が挙げられていました。
最も多くの教員が「とても関心がある」と答えたのが、「生成AIなど、最新ツールの活用」でした(とても関心がある8名、少し関心がある2名、あまり関心がない2名)。これは少し意外な結果です。生成AIは既に私たちの日常に広く浸透しており、少なくとも一般のユーザーにとっては、一時期のようなブームは過ぎた印象があります。また、大学での教育活用についても、セミナー等で多くの事例紹介があり、参考にはなるのですが、用途(語学学習やディスカッションのパートナー、ファクトチェックの練習台、生成物の傾向分析、資料のたたき台など)のバリエーションはあまり広がっていない印象です。そのため、他の先生方も「はいはいAIね」くらいの感じじゃないかなと漠然と思っていましたが、実際には関心は高いようです。むしろ、これといった活用方法が見当たらないからこそ、何かあるなら知りたいということなのかもしれません。
生成AIに関しては、授業課題等における不正利用の問題も、継続中の課題だといえます。各大学でAI利用のガイドラインが設けられましたが、実際には、見抜くことが難しい不正利用やグレーゾーンは広がっているように思われます。検出ツールやテクニックも存在しますが、誤検出のリスクを考えると、自信を持って導入できるものはないと理解しています。また、口頭試問から"ungrading"まで、生成AIを前提とした課題・評価のあり方のアイディアはありますが、すべての科目に適用できるものではありません。
FDの企画という観点からは、生成AIは扱いづらいトピックでもあります。人工知能研究など各分野の専門家による解説や、一般的な事例報告は世に溢れていますので、各大学で扱うには今更感があります。となると、教員が身近に感じる学内での活用例やトラブル事例をじっくり取り上げて、教員同士で議論する場を設けることが一つの方向性かもしれません。
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