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週刊・授業改善エッセイ
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 宮城学院女子大学 生活科学部 生活文化デザイン学科 : 長谷川 麻子

 いわゆる「文系」の女子学生が、エンジニアになってくれた話 

当学科はかつての家政科が前身で、家庭科教員養成と建築士受験資格が得られるカリキュラムを提供しており、授業科目としては「生活」にまつわる幅広い内容によって構成されているので、文理融合の学科であることが特徴です。ところが、昔、花嫁修業の場であったイメージのせいか、高校や外部の方々からはいわゆる「文系」と分類され、大半の受験生=学生も「文系」の意識で入学してくる様子です。
 一方、筆者自身は工学部建築学科出身、建築設備業の民間企業で初の女性エンジニアとして7年経験したのち、工学系の大学院で学位を取得、その後は工学部建築学科の教員生活20年と、エンジニア系の男性に囲まれて40年近く過ごしてきたので、いわゆる「理系」のガテン系!本学への転職はいろいろな意味で毎日がチャレンジングです。筆者が担当している主な科目は「建築環境学」と「建築設備」で、建築学部や工学部建築学科で学修する内容と同じく、人々の健康を守り快適性を得るための、また、建物内にあるモノの品質を高めたり維持するための空間づくりに必要な理論や知識を扱っています。これらの内容は、建築士を目指す学生に限らず、生活者・消費者として知っておいて損はなく、むしろ、役立つはずです。「建築環境学」の授業では、ところどころ数式や、彼女らにとって見慣れない単位を使わざるを得ず、それを見ただけで拒絶反応を示す学生が居ます。そこで、数式が登場する機会は最低限に抑え、数式自体よりもその意味するところを繰り返し説明し、単位については、登場するたびに同じスライドを表示して、生活に密着した事象を例示しながら解説を加えるようにし、数字や単位を拒絶するのではなく、言語のように使える「ツール」として理解するように促しています。筆者自身、理系のくせに数学が苦手な人間なので、気持ちの上ではうまく寄り添うことができているのではないか、と密かに自負しております。
 本学での経験はまだ2.5年しかありませんが、早速嬉しいできごとがありました。それは昨年度、「文系」女子である2名が、建築設備業のエンジニアとして巣立ってくれたことです。何が功を奏したのか?彼女らの話によれば、授業やゼミの時間に建築設備業の女性エンジニアから業務内容や経験談を語っていただいたこと、そして、建築物のバックヤードツアーで建築設備の実物を目の当たりにしたこと、とのことでした。建築設備業の紹介については、筆者の古巣に加えて学協会活動でお付き合いのある企業にお願いし、毎年3社の女性エンジニアに登壇していただいています。学生にとって、本学の先輩ではなくても、同じ女性が奮闘している様子など、生の声を聴けることは刺激になるようで、ふだんの授業よりも集中して聴いてくれます。また、実際の建築設備を見せることについても、筆者の古巣である企業に協力を得て実現できましたので、人脈はフルに活かして今後も続けたいところです。また、学内の設備見学を実施しただけでも、学生たちのレポートによれば「こんなところに、こんな設備があったとは!」「後輩たちにも、見て知ってほしい」など大変好評で、筆者も励まされましたし、ご協力くださった施設課のみなさんにもお伝えして、今後も続けてみようと考えています。    
 そのほか、少しでも社会性を養ってもらえるよう、授業の冒頭、新聞や建設業界誌の電子版から建設業界の動向、建築業・建築設備業各社の活躍ぶりに加え、エネルギー問題、脱炭素、就職活動関連の記事などを紹介しています。単なる就活対策ではなく、結婚・出産などのライフイベントにかかわらず、スキルアップしながら仕事を続けられるように、それぞれの職業選択につなげられればと考えています。筆者の場合、建築設備業で7年しか続けられなかった不甲斐ない者ですが、いつかこれを超える人材が輩出できれば、と願いつつ、「種まき」を続ける所存です。
                  

   
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