本年度より日本保健医療大学に着任し、新しい教育環境で学生指導に着手しております。
　前年度まで所属した大学でOSCEを関連付けてカリキュラム構成にも参画していました。
　私自身、医学教育の潮流である「詰め込み教育からの脱却」に共感し、学生ならび医療職全て、対象者に向き合った際に生じる症例の病態や障害特性に対し、"何が必要かを考えて行動する"、いわゆる「成人学習理論」に魅力を感じることを多く経験しました。私自身、養成課程で勉強し、国家試験合格までたどり着いたものの、「ゴール（GOAL）」ではなく、「学習のスタート（START）」であったと気付くことが多々あり、担当する症例に向き合い、対話し、ナラティブアプローチの視点で、学習する機会となりました。仮に、就職した時点の知識が「ゴール」だと思い込み、猛進していたら、どれだけの失敗やインシデント報告を書き続けていたのではないかと想像しただけで恐ろしくなります。
　医学教育では、問題にぶちあたったときに、どのように解決すればよいのか、自分で判断できるようする教育を先駆的に重視されており、コアカリキュラムに発展し、実践しています。すなわち、自分が何を知っていて何を知らないかをわかっていて、自分に何が必要かを常に考えて行動するという「成人教育の理論（adult learning theory）」、研究から得られた新しい理論的根拠に基づいたevidence-based education を優先して"主観"を排除する教育体制がカリキュラムに反映されています。「評価の仕方如何によって学生の学習態度が変わる」という諺のように、評価方法も重要視されています。私自身の担当科目は「神経系理学療法」であり、症例の病態は多様であることが臨床上、ほとんどであります。そこで、ルーブリック評価と「コーチング（Coaching）」を用いて授業に取り入れることとしました。この取り組みによって、授業目標である「動作障害に関する問題点と治療プログラムを関連付けて説明できる」、この目標に対してルーブリックを意識させ、到達目標まで学習を進める。次に形成的評価を共有し、「更に高めるための着眼点」、「表現や論点を再考する」、これらの視点について堂々とアドバイスすることに着手しました。学生自身、アドバイスのメリットを理解しつつ、「こんなにアドバイスしてもいいのかな？」、「どうしたら表現がよくなるか？」など、私自身も半信半疑しながら、学生との対話も参考にしながら学生指導に取り組んでおります。 　　　
　少しでも、将来の担当症例を想像できる機会になればと挑戦しております。