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石巻専修大学 綾 皓二郎
(ファカルティ・ディベロップメント委員会委員長)

 本学は,理工学部と経営学部,大学院からなる,教員数でいえば90人強の小規模の大学です。今回のエッセイは小規模大学ならではの悩みを披瀝することで,私の務めとさせていただきます。
 小さな大学ならFDを推進することは,外からみれば容易と映るかもしれませんが,内実はそうでもないのです。まず,FDセンターという専任教員を配置した組織の設置は難しく,委員会形式で担当しています。近年の大学を巡る内外の環境は,教員に本来の教育・研究以外のたくさんの仕事を強いるものとなっています。それらの仕事のほとんどは決して雑用と呼ばれる類のものとは言えませんが,教員は幾つかの委員や役職を兼担することになって多忙で,委員が全員揃うFD委員会を開催することはかなり難しくなってきています。教授会のない曜日・時限でさえ,学科会議やセミナーなどとぶつかってしまいます。メーリングリストを活用していますが,やはり直接の会議に優るものはないのです。
 本学のFD委員会では,学部に加えて大学院も受け持っています。大学院単独の委員会を設ける人的・時間的余裕はないのです。この大学院のFDをどう推進するかも悩みの種です。大学院では授業といっても一科目の履修者は数人に過ぎませんから,授業評価アンケート方式は適切ではないのです。そこで,昨年度は「大学院生とのFD懇談会」を開催して,大学院生の意見や要望,提案を聞く機会を作りました。小規模大学院の授業改善の研修は,大学院が連合して,あるいは個々の専門学会が主催して行うのがよいのでないかと思っております。"つばさ"で大学院FDの問題を取り上げていただけると助かります。
 ところで,ファカルティ・ディベロップメント(FD)とは何でしょうか。一般の教員には何のことか,直ぐにはわからないというのも,悩みといえば悩みです。鹿児島大学の村島定行先生がカタカナ語の濫用に警告を発しています:"私の勤める大学の工学部にはファカルティ・ディベロップメント委員会という正式の機関がある。長たらして扱いにくい上に,新しく人が来るたびに説明が必要になる。自己啓発あるいは自己評価委員会とでもすれば,こんな問題は起こらない"。このカタカナ語では発音も面倒ですから,FDで済ませているのだと思います。先日,私立大学連盟主催のFD推進会議に参加しました。テーマは「学士課程教育の構築とFD 〜シラバスからカリキュラム・ポリシーへ〜」です。そこでは例の中教審答申のアドミッション・ポリシー(AD),ディプロマ・ポリシー(DP),スタッフ・ディベロップメント(SD)など,カタカナ語とその略語の氾濫でした。中教審も言語活動の充実を答申する段となって,さすがマズイと思ったのでしょう。最近では「入学者受入れの方針」「教育課程編成・実施の方針」「学位授与の方針」と漢字を主に用いるようにしています。これなら,コミュニケーション不全にならず,学生にもわかってもらえます。
 このように答申の表記は改善されることもありますが,中教審に教員の授業外の仕事を減らす答申を期待することは,無理のようです。実際,中教審が答申を出すたびに,教員の仕事は増大するばかりです。これに対して,某先生は,授業改善をはじめとして教育には,教員にもっと自由な時間が必要だと言っております。学校(英語の school)の語源がschole という古代ギリシャ語で"余暇"という意味をもつことを思い出せば,肯ける主張ではあるのです。しかし,今日では教員と学生の多様化が激しく,また教育の経済効率が求められていますので,中教審・文科省は教育改革を大学の自主性と個々の教員の主体性に任せておけない,教育改善には組織的な取り組みが必要と考えているのでしょう。かくしてFD委員会の悩みは尽きません。
   
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