一般に工業高等専門学校(高専)の学生は英語が弱いと言われている。確かにTOEIC試験のスコアを同学年の高校生等と比較すると低い傾向にある。しかし、高専の学生は、英語の能力において劣っているのだろうか。高専に入学する学生は、専門を学ぶのに大学入学まで待っていられないという学生が多い。つまり、まず興味が工学の専門にある。また、高校生が目前に大学受験を控えており、とにもかくにも英語の学習に取り組まざるを得ない、という状況と大きく異なる。
しかし、高専の卒業生が大学編入学先や就職先において、海外留学や海外赴任の必要に迫られ集中的に学習した結果、飛躍的にTOEICのスコアが伸びたという事例を耳にする。具体的には、海外留学を望んで猛勉強した結果、TOEICのスコアが600点台に伸びた、という話を聞いたことがある。結局のところ、モチベーションの問題と考えている。
今高専では、国際コミュニケーション能力育成のため、各校様々な取組を行っている。本校では、平成26年度より卒業研究発表会(本科5年生による卒業時の研究発表会)、特別研究発表会(専攻科2年生による修了時の研究発表会)に英語によるプレゼンを一部取り入れ始めた。本科では、半数の学生が概要部分を英語で発表を行った。専攻科では、全員が概要部分を英語で発表した。中には15分の発表を全て英語で行った者も数名いた。英語によるプレゼンが差し迫った状況において、研究の指導教員のみならず、自ら進んで英語科の教員やネイティブの非常勤講師に指導を仰いだ者もいた。この研究発表会における英語のプレゼンの効果は、徐々に広がりを見せ始めている。これまで留学生とのやりとりは日本語のみであったが、英語で行われる光景も見られる。また、短期留学生を学生集会で紹介する際、司会の学生が外国語で話しかけるシーンも見かけるようになった。これらは今までではなかったことであり、国際コミュニケーション能力育成教育の成果が徐々に表れ始めたとみている。要は、英語を使うことについて学生が自らつくっていた壁をいかに崩していくかということではないだろうか。