大学の教員となり早いもので5年目になる。大学で教鞭を取りながら、高校男子バスケットボール部のアスレティックトレーナーとして現場で指導もおこなっている。高校男子バスケットボール部での現場指導は、大学が実施する高大連携事業の一環として、専門知識を持つ大学教員や職員が高校部活動の競技力向上のサポートをすることを目的としている。私が携わっているこの高校男子バスケットボール部は、ヘッドコーチも大学教員が派遣されており、創部13年という浅い歴史の中で日本一に5度輝いている、全国的にも名の知られたチームに成長している。
チームの指導方針は、「自主自立」と「自己啓蒙」を掲げており、自らが明確な目標を設定し、その目標に向かって自ら努力をするという基本理念のもとにある。この「自主自立」と「自己啓蒙」という言葉は、簡単なようで、全うすることは非常に難しい。強い精神力を持ち合わせていなければ、高いモチベーションを持ち続け、設定した目標を達成することは困難である。チームとしてこれらを理念として掲げ、チームとして良い成果が出ることもあれば、なかなか成果が出ないこともある。選手が出来ないから強制的に、「あれをしなさい。これをしなさい。」というような指導に切り替えない。なぜならば、言われてから実行するという指導を受ければ、将来社会人になっても指示を待つ大人になってしまうと考えるからである。高校生の内から、自らやるべきことを考え、自ら1歩前に出て何かを実行する。その中で成功する体験をすれば、さらに上のレベルで物事を考えられるようになる。たとえ、間違って注意を受けることがあるかもしれないが、そこで1つ学ぶことができる。ミスを恐れて、自ら行動を起こさず、言われたことだけやるのでは、そこから学ぶことは少ないであろう。
教員5年目を迎えて、大学生にも同じ指導方針で教鞭を取り、ゼミなどを指導している。しかしながら、学生の中には指示だけを待ち、それ以外のことはやる必要が無いという考えを持っているものが多い気がしている。大学4年間に、「自主自立」と「自己啓蒙」を実践し、多くの専門知識を学ぶことをしなければ、その4年間はとても無駄な時間になってしまうのではないだろうか。この指導方針が現在の高校生や大学生に合致しているのかは、まだ結論付けられていない。これからさらに多くの高校生や大学生と接しながら、見極めていきたい。しかし、「自主自立」と「自己啓蒙」の基本理念は、スポーツだけでなく、すべての分野においても必要とされる理念だと信じている。