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東北文教大学・東北文教大学短期大学部 : 熊谷 義隆


FDは大学教育の改革改善のために行う、組織的な対応でなければならない。確かにその通りなのだが、「組織的」にだけこだわっていると、本当の改善につながらないこともるのではないか。

本学でも教育開発研究センターという組織を設け、1)学生による授業改善アンケートとその結果への教員のコメントとその公開、2)教育改善のためのFD研修会、3)教育改善のためのメールマガジン作成、4)外部の研修会への参加などのFD活動を行っている。以前は公開授業とそれを踏まえた討論会や、授業の教員による相互参観なども行っていた。また、SDと合同の企画もある。これらは組織的に実施されるものであり、それぞれが効果を上げていることも事実である。シラバスの作成や教育方法に教員が自覚的になってきているのは間違いない。それなのに、「組織的」だけでいいのだろうか?などと考えるのは、FDは教員が教育に意識的になり改善することが目的なのだろうか、と思うからである。教員が教育を改善し、学生への教育効果を上げ学習時間も確保して、学習の質を保証できるようにするのが、根本的な目的ではあるまいか。つまり、FDもコミュニケーションと同じく、「何をどう伝えようか」よりも「どのように相手に伝わったか」という受け手である学生にどのような効果があったかというのが、指標になるのではないだろうか。  ある時学生が、「先生方は自分の専門の用語を、学生が分からないのにまるで日常語のように授業で話す。」と言っていたからである。初年時の学生がそう思うのは仕方ない、やがて馴れるさ、とも思っていたが、知ったような顔をして使っていても、本当に理解して使っているのか、と思える場面にも遭遇する。学生にすれば様々な専門の授業を受講するわけだから、一部が半可通なのは出てくるだろう。

こんなことを考えている頃に、国立国語研究所「病院の言葉」委員会が『病院の言葉を分かりやすく 工夫の提案』(2009・3、勁草書房)という本が出た。医師や看護師はじめあらゆる医療の専門家に、患者やその家族など普通の人に医療の専門用語をわかりやすく説明するよう求め、その具体的な工夫を提案している。例えば「誤嚥」という認知度の低い言葉は「食物などが気管に入ってしまうこと」と説明し、「ショック」という一般によく知られている言葉でも医療の専門家は「血圧が下がり、生命の危険がある状態」の意味であり、生命の危険を強調して説明する、という具合である。なるほど、これは大学の授業にも応用できるのではないか。

病院は医学や医療というまとまりがある。大学の場合は、学部・学科のまとまりはあっても、個々の専門は異なっている。そこで「提案」。「大学の言葉を分かりやすく」これを組織的な対応目標とする。そして、それぞれの授業で専門家である個々の教員が、「分かりやすく」伝える「工夫」をする、このようなFDも必要なのではなかろうかと考えている。





   
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