主体的・対話的で深い学びの実現のため,近年,各学校種においてアクティブ・ラーニング型の授業を取り入れることが求められている。
さて,工業高等専門学校(高専)で数学を担当している筆者の授業の流れは概ねいつも同じで,
(1)宿題の答え合わせ(前回の復習)
(2)新しい内容の説明
(3)問題演習および答え合わせ
である。宿題の答え合わせは,学生が板書し,その内容を発表するというプレゼン形式。最初は緊張するものの,次第に慣れてきて,能力の高い学生はスムーズなプレゼンを行う。このプレゼン形式の答え合わせは学生にとって強い負荷がかかるはずなのだが,授業アンケートの結果を見ると意外と評判が良い。問題演習の時間では,まずは自分の力で解くように指示し,ある程度時間が経ったら周囲の学生に質問しても良いことにして,主体的に演習に取り組むよう促している。演習時間にすべての問題を解くことはせず,必ず数問は宿題にまわす。自宅での自学自習と,授業冒頭の答え合わせを兼ねた復習がねらいだ。
先日,アクティブ・ラーニングを取り入れて3年生の微分積分の授業を行った。アクティブ・ラーニングを取り入れた授業は初めての経験である。学内公開も兼ねて行ったこの授業はグループワークを中心とした問題演習とし,演習後にはグループの代表者に解答発表もしてもらった。演習の内容は媒介変数表示の微分法と積分法,特に媒介変数表示の曲線の接線や,曲線によって囲まれる図形の面積を求める問題である。適度な難易度(実際には少し難しかったようだが)のプリント教材を用意し,グループ毎(1グループ4〜5人)に演習問題に取り組ませた。グループの島を巡回しながらヒントを出し,教え合いを促しながらなんとか解答発表までこぎつけた。
数学が得意な学生は,筆が止まっている学生に教えることで知識が定着する。数学が苦手な学生も,教えられることにより普段の演習では解くことができない「難問」もなんとか解決する。うまく授業をコントロールすれば,学び合いの授業は高い学習効果が期待できる。問題は大学工学部2年生レベルまでの数学を3年間で勉強する高専数学の修得すべき知識量の多さである。沢山の知識を教えるには座学形式の授業の方が効率が良い。一方,知識の定着という観点からはアクティブ・ラーニング型授業の方が良い。座学形式の授業とグループワークなどを取り入れたアクティブ・ラーニング型授業をうまく融合させながら,高専数学に少しずつアクティブ・ラーニングをなじませていきたい。