この夏は「世界陸上ロンドン大会」で毎日楽しませてもらった。日本選手の活躍にも一喜一憂したが、やはり、男子短距離界のスーパースターであるウサイン・ボルトの引退レースに関心が集中した。しかし結果は、ご存知の通り、100mで3位、4×100mリレーでは途中棄権と、彼の偉大な実績からすれば残念な結末だった。リレー決勝では、ボルトが失速しトラックを転がる姿に世界中の人が悲鳴を上げただろう。しかし、少し時間がたって、別の感慨が沸いている。ボルトは自身の肉体的な限界を理解していたはずであり、今回のような結末も、ある程度は覚悟していたのではないか。しかし、結果はどうあろうと最後まで走り切ろうとし、その姿と覚悟を世界に見せたのではないか。ウサイン・ボルトは「驚異的な記録」と「鮮烈な記憶」を世界中の人に残して、見事に陸上人生のゴールを切ったのだと思う。
さて、教育にも少しは触れておくことにしたい。教員人生も終盤になり、そろそろゴールが見えるようになってきた。学校運営では行動力ある後進たちの応援団に回るよう心掛けたい。FDに関しても、若い先生たちの尻尾に付いていくつもりだ。しかし、自分が教員である今のうちにやっておかなければならない事が他にもいくつか残っている。そのひとつが困窮学生(児童)問題である。早く手を打たなければ、これはさらに深刻になるだろう。行政がすべきことも多いが、個々の学校ができることも実は多いのではないか。例えば、教育経費の削減。教科書・教材などを一から見直し、他国のように教科書・教材のリユースを普及させる。学生や保護者に経済支援の手段をアドバイスする「プッシュ型の情報提供」、学校業務アルバイトを困窮学生に優先して委託するなど。できるところから。
家庭の経済力によらず、子供たちに教育を受けるチャンスを公平に与え、同じスタートラインから社会に送り出す。これからの日本と教育界の優先課題であると考えている。