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仙台大学 : 髙橋 徹

黒板とチョークを使った授業


おそらく多くの大学教員が授業方法について、毎時間試行錯誤の連続を繰り返していると思う。私もそんな大学教員のうちの一人である。特に、私の担当している「体育原理」という科目は、中学校・高等学校保健体育科教員免許状を取得するための必修科目ということもあり、年間600名弱の学生に対して単位認定を行うため、どうしても教員の側からの情報発信が中心で学生は受動的にその情報を受け取るという講義形式になってしまいがちである。アクティブ・ラーニングという言葉も世の中に浸透してきた感があるが、学生たちとの双方向型の授業は未だに実現しきれていないという悩みを抱えている。

さて、一般的に大教室で大人数を対象にした授業を行う際に教員が使用するツールには、黒板、チョーク、PC機器などを挙げることができる。私が大学に入学した当時(15年程前)を思い返してみると、黒板にチョークで板書をしながら授業を進める先生と、PC機器を使用してパワーポイントなどで授業を進める先生の割合は半々程度だったように思われる。現在の大学の授業の方法はどうなっているのだろうか?実際に調べたわけではないので正確なことは分からないが、職場の周りの先生方の様子を見る限りでは、PC機器を使用する授業が多くなってきているような印象を受ける。

かく言う私も大学教員になり3年半が経ったが、教員になった当初からパワーポイントを使用した授業を行っている。教員になったばかりの頃は、スライドをいかに見栄え良く作るかを考え、学生を飽きさせないようなアニメーションをどのように入れ込むか、あるいは映像や写真を駆使して華やかに見せるにはどうすれば良いかを考えていた。しかし1年半ほど授業を行った頃に、見栄えばかりを気にしてスライドを作りこむことは自分にとっての自己満足に過ぎないのではないか、学生目線に立った分かり易いスライドを作るべきではないかということに遅れ馳せながら気がついた。  

授業で用いるスライドは、企業の新商品発表時などのプレゼンテーションとは異なるものであることはもちろんのこと、研究者が行う学会発表としてのプレゼンテーションとも異なるものであるはずだ。なぜなら、ここ20年程の間に私たち教員が授業で用いるツールが黒板とチョークからPC機器へと変化したことで、授業の準備方法や授業展開の方法にも工夫が必要になったが、おそらく学生たちにとっては黒板に書かれていた情報がスクリーンに映し出されるようになったという変化に過ぎないからである。つまり、授業で用いるスライドは学生目線に立つならば、あくまでも黒板(の代替品)なのではないだろうか。

"スライド=黒板"だとするならば、授業準備としてスライドを作成する際にも気をつけなければならない事が出てくる。その一つは、自分が板書をしながら授業をすると仮定した際に、スライドの情報を90分間の授業時間内に全て黒板に書き上げることができるだろうかという点である。そこにはもちろん、単なる文字数だけではなく、図表などの視覚情報も含まれる。スライドを使用することで、多くの情報を見栄え良く伝えることは容易になるが、学生たちに本当に伝えなければならないのは、スライドの見栄えよりもその中に書かれている情報であるはずである。そして90分間という時間制限がある以上、時間内に処理しきれる情報の量は限られてくるはずである。90分で処理しきれる情報量、それを判断する基準として、自分で黒板を使って伝えきれるかどうかが一つの目安になるのではないだろうか。

学生たちが授業中に取り組む学習活動の基本には、今も昔も、教科書を読み重要と思われる箇所をチェックすること、黒板(スライド)で示された内容をノートに書き写すこと、教員の話す内容から要点を抜き出すこと、以上の3点が挙げられると思う。だからこそ、私たち教員も様々な最新機器を使用するようになったとしても、黒板とチョークを使用して授業を行うというイメージを忘れてはならないように思う。




   
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