東京造形大学では、デザイン学科の中のアニメーション専攻と言う領域でアニメーションの教育を始めて、早くも15年が経ちました。初めは「美術」というカテゴリーの中では、やや異端児扱いされていたアニメーションですが、今は学生たちも幼い頃からアニメーションにずっと慣れ親しんで育ったのが当たり前の時代になり、またアニメーションがきっかけで「美術」というものに目覚めたという学生も少なくなく、更に海外ではアニメーションからの影響で日本に強い興味を持ち日本を訪れたという外国人も数多くいて、今やアニメーションは「サブ・カルチャー」というよりJAPANの代表的「メイン・カルチャー」の1つに育った印象すらあります。
そうなるとアニメーションというものを教育としてきちんと教える必要が出て来ます。単なる技術的なスキルアップだけではなく、見たもの、感じたもの、伝えたいこと、などをアニメ特有のオタク的な殻に閉じこもらず芸術表現として自由に豊かな「表現者」となるべく精神および身体までを様々なアプローチから鍛え育てるべく教育的指導する、というのが東京造形大学アニメーション専攻の理想です。
そんな中、カリキュラム全体を見ながら授業構成を進める策の1つとして当専攻では1〜4年生までの半期の演習課題をまとめたものを学期末に学生と教員を一同に集めて見せ合う「大講評会」という特別授業を年に2回開催しています。他の教員の授業内容や他の学年の状況などは案外見え辛いものですが、学生と教員が一堂に会して、その学期の現在の学習度合いをズラッと見ることが出来るのは、学生にも教員にも非常に貴重な学習チャンスとなっています。特に学生に対しては、作品を批評するというより、なるべく褒める!褒めて伸ばす!と言うのが実は大きなポイントとなります。また教員にとっては、他の授業との内容調整や今後の新たな方針の参考やヒントを得る機会にもなり、ここで他の授業に負けないような授業成果を更に次に見せよう!と指導意欲に燃える良いライバル心が得られるのです。専攻設立以来続けられているこの「大講評会」のお陰もあり、当専攻内は教員同士の人間関係もとても上手くいっており、まさに風通しの良い教育環境であると感じています。
FD活動として、こうした教育現場を活用した専攻全体の調整の場を持つことは、学生への学習と刺激も兼ねた一石二鳥ながらも教員にとっても貴重な場面であると確信しつつ、まだまだ色々と改良の余地を感じる専攻内の教育環境に更にプラスになるように、今後も日々努力し続けて行きたいと考えています。