私の専門分野はロボティクス・メカトロニクスで、RT(ロボット技術)を活用した機械・デバイス・サービスの設計・開発・提案を行っている。また高専ロボコンの指導も担当しており、日々いろいろなロボットの設計開発の現場にいることになる。
さて、このロボットを授業担当教員の立場で、なおかつ工学教育の観点から見てみると、とても魅力的な教材であることが分かる。まずロボット本体を設計・開発するためには、機構、強度、加工など機械工学の知識が必要となる。ロボットには運動を与えるアクチュエータや状況を確認するセンサなどのデバイスが必須であり、これら専門知識は電気・電子工学の分野となる。そして最終的にロボットの動作はコンピュータで制御するため、ソフトウェア等情報工学の知識も必要となる。
このようにロボットは複数の分野にまたがる工学知識と、それらを統合したシステムとして設計をする必要があるため、分野融合が進んでいる工学教育においてうってつけのテーマと言える。私が所属する機械・知能系でもロボットの開発をテーマとした授業をカリキュラムに取り入れている。これは3D-CADの使用方法からスタートし、機構設計、部品の加工、組立てからソフトウェア開発まで行い、コンテストで評価を行う内容となっている。(詳細は本校のホームページを参照して下さい)
このカリキュラムを設計、実施してみて、学生達が生き生きと取り組んでいることを実感する。また上述した工学の専門知識修得に加えて、自分で取り組む力や最後までやり抜く力が涵養されているように思う。これらはロボットを開発するという動機付けと、完成した時の達成感によるところが大きい。良い授業を行うためには、学生の積極的な取組みが必要不可欠であり、これはすべて学習の動機付けに帰着されるように思う。近年、PBL、アクティブラーニングなどの教育手法や、エンジニアリングデザイン教育、社会実装教育などの新しい概念の導入が進められている。これらを上手に活用しつつ、学生に良い動機を与えるカリキュラム設計がFDに繋がっていくと考えている。