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鶴岡工業高等専門学校 : 本間 浩二


「 学生と"ハラスメント"を考える 」

最近、耳に(目に)しない日はないくらい"パワハラ"というワードが各種メディアから発信されています。特にスポーツ場面におけるパワハラ問題が続発し、それらの動向が注目されるようになると、体育教員である私と学生との会話も自然ななりゆきでその話題に触れることが多くなります。幸い「先生の指導でパワハラに該当することはないですよ」と皆が口を揃えてくれるのでひと安心しているところですが、実際、学生の声を聞いてみると、教員の指導場面についてはいろいろな見方・感じ方・受け止め方をしていること、そして"ハラスメント"についても彼らなりの考え方を持っていることがわかります。以下、学生との談論から得た雑感です。

「相手が嫌だと感じればハラスメント?」「相手がどこまで嫌で、どこまでなら嫌でないか、どう見極める?」「ハラスメントになるかならないかのラインがややこしい」と学生は異口同音に言います。もしも教育現場において"嫌がらせかどうかを決めるのが学生側の感じ方"とするならば、「先生方が何も言えなくなってしまう…」「指導が成り立たなくなる…」「学生のよくない態度を増長させる…」と、学生たちも教育現場の機能が失われてしまうことを懸念します。この点については文科省でも、『〜教育上、必要かつ適正な〜』という表現や『〜主観的言動により判断されるのではなく、諸条件を客観的に考慮して判断されるべき〜』という解説を用いて、判断に対する配慮を求め、すべての "嫌"をハラスメントと捉えるべきではないことを示しています。

嫌がらせとは相手が嫌がるであろうことを、嫌がらせる意図を持って、その行為に及ぶことです。まさかそのような意図を持って学生に対応する教員はいないでしょうが、危惧されるのはそのような意図がなくても相手がその言動を嫌だと感じてしまう場合です。当たり前ですが、人によって受け止め方は微妙に変わります。10名の学生集団に指導する場合、10通りの受け止め方があると考えるのは決して言い過ぎではないでしょう。教員からのある言葉を激励ととるか叱責ととるか、学生によって違いがあると考えるべきです。学生からすれば「同じことを言われても、先生によってこちらの感じ方や受け止め方は変わる」こともあるようです。学生が教員の言動をどう感じるか…、どう受け止めるか…。教員の言動は常に学生個々の感受性というフィルターを通して彼らに届きます。そして、そのフィルターには価値観や性格、感情等の要素による個人差があります。それゆえ我々教員の言動にはデリカシーが必要になってきます。

そして、学生たちの話で最も印象に残ったのが「教員と学生との人間関係、信頼関係が何よりも大切だと思う」という言葉です。「常日頃からの関わり方次第。双方に良好な関係があればどんなに厳しい指導でも胸に届くと思う」という言葉もありました。これは先述の「同じことを言われても、先生によってこちらの感じ方や受け止め方は変わる」という発言にリンクします。… "パワハラか否かの判断基準は言動そのものに問題点があるか問われるべきであるが、それ以前に両者の人間関係や信頼関係にその根幹がある"…、なるほどこう考えると、現在メディアを騒がせている様々な事例の違いが見えてくる気もします。

蓋し「私はパワハラをしない」とは言い切れないのかもしれません。そもそも人と接することには常に何かしらのストレス(気配り、気遣い等)や何かしらのリスク(考え方の相違による摩擦、感情のすれ違い等)を伴います。そのように考えると「自分はパワハラをしない」という考え方が最も危険なスタンスのように思えます。様々なパワハラ事案から学ぶべきことは、「気をつけないと自分も加害者になる可能性が十分ある」という構え方ではないでしょうか。「私は学生に手を上げない」など言わずもがな。しかし、それだけでは構えは短絡的かつ不十分です。

学生との会話の中で気づかされたことを肝に銘じ、今後も普段からの学生との関わり方を大切に考え、自身の態度の在り方に注意を払い、言動には十分気をつけていこうと痛切に思っています。


   
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