教育支援システムの活用とコピペレポート問題
北里大学高等教育開発センターでは、教育支援システムとしてMoodleを学内全体へ提供している。これはWebページを閲覧する感覚で資料ファイルを配布したり、レポートを回収してコメントを返したり、小テストを受験させたりできるシステムである。本学では2007年度に試験的な運用をはじめ、2010年度にアカウント管理や年度更新の方法などのソフト面での整備を完了させた。2011年度から本格的な運用を開始して今年で8年目となる。FD活動の一環として、毎年、目的や内容を変えながら学内向けにMoodleの講習会も開催しており、具体的な使い方の講習だけでなく、そもそもMoodleで何ができるのかを把握してもらうために、Moodleを使った模擬授業を学生の立場で体験する講習などもおこなっている。
こうした環境整備や周知活動により、学内でのMoodleの認知度はかなり上がっている。2018年度には、看護学部、医療衛生学部、一般教育部などを中心に100以上のコースが作られ、授業で活用されている(同一授業複数コースを含む)。また、一年生からの大学への要望として、授業でもっとMoodleを活用して欲しいという意見があったとの報告もあり、学生間でも便利なツールとして認識されていることがうかがえる。本学ではMoodleが教育を支援する基盤的なシステムのひとつになりつつある。
私は一年生を対象とした情報科学の授業を担当しながらMoodleの立ち上げにかかわってきた。講習会の企画も担当しており、事例を経験する目的もかねて、普段の授業でもMoodleを利用している。その中で印象に残ったことをひとつ紹介したい。授業では、学習内容を自分の言葉で説明するレポート課題を出しているが、提出物のうち、Webページを切り貼りしたと思われる、いわゆるコピペレポートが毎年全体の4〜5%程度を占める。Moodleには提出時刻の記録機能や、他の課題の採点結果をあわせて一覧する機能があるが、それを見ると、コピペレポートを書く学生の一部は、かなり余裕をもってはやめに提出をしており、他の課題の成績も決して悪くないことが確認できる。こういった学生は指導のコメントを返すと驚いた様子で問い合わせに来るが、話を聞くと、よくない方法だとは思わなかった、他にどういう方法で文章を書けばいいかわからない、などの反応が返ってくる。以前から話には聞いていたが、素晴らしい文章を探してきて切り貼りすることが、よいレポートを書く方法だと考えている学生が一定数いることがうかがえるのである。
あまり嬉しいことではないが、Moodleの記録を活用することで、こういった様々な現状も確認することができる。もちろん、ICTはあくまでも学習を支援するツールにすぎない。最終的には、コピペがよくない行為であることや、他の文章からの正しい引用のしかた、自分で話の筋道を考えて文章を書く方法などを、学生へと粘り強く伝えていくことが必要となる。これまで学内のICTの環境整備や講習会の企画に関わってきたが、その特徴と限界を意識したうえで、有効活用をしながら教育活動をおこなっていくことが重要である。