Japanese/Englishリンクお問い合わせ

特色ある教育の開発、教育力の向上をめざして

週刊・授業改善エッセイ
つばさとは?
つばさ連携校
事業内容
FDカレンダー
週刊・授業改善エッセイ
あっとおどろく大学事務NG集
 
 

いわき短期大学 田久昌次郎
(理事長・学長)

 本学の自己点検評価委員会は、御多分に洩れず、努力義務が課せられた設置基準の大綱化によって設けられ、その後の義務化、認証評価の実施等の学校教育法の改正に伴って学内諸活動を充実させ、認証評価にも取組んで参りました。また、FD委員会と称するような組織はなく、教員の職能開発に係わる機能も担っております。10年以上にわたり自己点検評価活動に参画して来ましたが、この間の動きは大変めまぐるしいものであったと実感しています。
 認証評価も第1クールがまもなく終わり、次の周期に向けて着々と準備を進めておられる"つばさ"加盟校もあると存じます。第2クールでは、学生の学習成果・大学の教育力が点検評価の大きな課題となる気配ですが、貴ネットワークにおいてもそれら課題に対する共通認識を深める機会を設けて戴きたいと願う次第です。
 ここでは、学習成果について整理して置かなければならない点をいくつか、私見を含めて、紹介したいと思います。
 @ 成果(outcome)は理想の状態にどれだけ近づけたかを査定(assessment)するものであ
   り、卒業時の就職率や資格取得率・学業成績などの評価はある時点での結果(output)
   であり、本来は切り分けて考えなければならないと思います。まず、そこを明確にして置
   かないと、今後の自己点検評価活動を見誤る可能性もあります。
 A 大学の目的について、坂井昭宏は『大学は研究と教育の場であり、伝統的な学部学科
   (disciplines)で示されるさまざまな「実践」(practice)から成り立っている。大学に入学し
   た学生は一定期間、この「実践」に参加し実地訓練を受けることによって、そこで共有さ
   れている知識技能等を修得する。その際、社会的に見て望ましいさまざまな「徳」を身に
   つける。先に示した「〜力」(筆者注:経済産業省が提唱している『社会人基礎力』など)
   の多くはそのような徳に相当する。しかし、大学の学部学科における直接の教育目的は
   それぞれに固有の知識技術の修得であり、社会的に見て望ましい「徳」=「〜力」の開発
   はその副次的目的に過ぎない。』と述べています。今後、大学はそれぞれが掲げる建学
   の精神・教育理念に基づいて、学生が到達すべき理想の姿や社会的に見て望ましい「徳」
   を学習成果(learning-outcomes)として定める必要が出てくるでしょう。しかし、理想像や
   「徳」の開発はあくまでも大学の副次的目的であり、加えて客観性・再現性もなく、査定は
   難しいものとなります。
 B 現実的には直接の教育目的を踏まえ、定性的/定量的に測定可能なある時点での学習
   結果に頼らざるを得なくなります。GPAを活用した成績評価や卒業後の就職定着率など
   もoutputであり、outcomeには程遠い。測れなければ、各大学が理想の姿や「徳」というも
   のの仮説を立て、程遠いがある程度因果関係を有する指標(中間成果・代理指標)を用い
   て検証するしか方策がないと思うが、その客観的手法を加盟校の協力で共有できないか
   と考えます。
 C これから優れた学習成果を達成するためには、3つの視点が必要であると考えています。
   一番目は先ほど触れた査定あるいは評価手法の開発である。しかし、これを中心に据え
   れば本末転倒に陥る危険があります。二番目は大学の教育力の向上である。そのために
   は、学生の豊かな学びを引き出す教育環境と「実践」を組織的に整えることが必要です。
   現状のFD活動にはさまざまな課題があり、組織的というには不十分かもしれないが、今
   後もその重要性は高まる筈です。三番目は、学生個人が「何ができるようになったか」「人
   格的にどのように成長したか」を自己覚知するととともに、大学は学生個人の「学習過程」
   「学びの質」「生活態度」などを査定することにより学習成果の把握に努め、それを大学全
   体の改善に結びつける視点が必要で、一番不足している部分と言えるでしょう。端的に言
   えば、一人ひとりの学生の学習成果にスポットを当て、その総体を大学の改善にどのよう
   に役立てるかが求められます。その先行事例は"つばさ"が行っている学生FD会議ではな
   いかと思います。

 今後とも、ネットワーク"つばさ"加盟校の皆さまから多くの示唆を得ながら、本学らしい教育のあり方を模索し続けていきたいと考えております。
   
  Copyright 2009 Yamagata University higher education research project center , All Rights Reserved.
 
このホームページに関するご意見・お問い合せは、山形大学高等教育研究企画センターまで。
山形大学 高等教育研究企画センター 〒990-8560 山形市小白川町一丁目4-12
TEL:023-628-4707 FAX:023-628-4720 k3cen@jm.kj.yamagata-u.ac.jp