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あっとおどろく大学事務NG集
 
 

明海大学 岩下哲典
(ホスピタリティ・ツーリズム学部教授)

 ある日、いささかラディカルで有名な大学教員A氏が、まじめなFD委員B氏にこんなことを言った。「『FD』って本当に必要なのかな?本当は必要ないんではないの?必要なのは、本当に授業が下手な一部の教員で、学生が「おもしろい」とか「わかる」とか言ってくれてる授業をしている教員には必要ないでしょ。そもそも大学教員に限らず、常に向上していかなくてはならない人間にとって、あえて他人からあれこれ言われてやることが、本当に身につくことなんでしょうかねえ。ゼミ生にあれやれ、これやれって言っても反発してその挙句、ゼミにも顔を見せに来なくなるのが関の山だよ。だからさ、どれだけの教員が、心から、『FDは必要だ!大切だ!だから参加しよう!』って思って参加しているんでしょうかね?FD評価アンケートとってみたらどうですか、ねえ、FD委員殿。」

 ここまで言われてくだんのFD委員殿。しっかり反論する。「そうは言ってもですよ、FDを行うのは、大学設置基準にうたわれてますし、もう世の流れですよ。そんなこと言っていると取り残されてしまいますよ。それに、実際、教壇で立ち往生しないためにはやっぱり必要ですよ。まあ、少なくとも私は必要だと思ってますけどね。」

 A氏「それで、あなたとしては、この前のFDは参考になったの。自分の授業に活かしているの」。B委員「確かに、いざ自分の授業に活かすとなると、すぐにはなかなか難しいですね」。A氏「それじゃ、意味ないよね」。B委員「確かにそうですが。まあ、自分の授業の流れやこれまでのスタイルがあるから、せっかくいい話を聞いてもどう活かしたらいいのか、なかなか難しいもんですよね。要は、学生が授業をきちんと理解さえしてくれればいいんですけどね・・・。ともかく、ともかくですよ。A先生、活かさないまでも他のやり方を知っていることが、自分の立ち位置を確かなものにしてくれますよ。だから、次回は参加しましょうよ」。A氏「しかたがない。では、教養を高めるために参加するとするか。」

 B委員から、この話を聞いた、FD委員である私のひとりごと。
「確かにA先生の言うこともわからないでもないな。性悪説に則ったFD活動に対する反発だね。西洋文化的なそれへの反発と言ってもいいかもしれない。性善説に則った東洋的な思考からすると不要なものかもね。でも、それだけでは、授業が難しくなっているのも現実だな。自分は、毎回、授業感想を書かせている。記名式だから、どこまで本音を聞かせてくれるかという点で限界があるが、けっこう参考になる。板書の字をていねいに書いてほしいとか、いろいろ改善に役に立つことも書いてくれる。毎回コメントして返すのも、履修人数が多くなると時間的には大変だけど、もうこれなしではいられないようになっている。毎日毎日の改善。日々新たなり。日新だな。さてと。あ、始業時間ちょいまえだ。授業に行くかな。」

注「このエッセイは、事実をもとにしたフィクションです。」

   
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