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羽陽学園短期大学 M田 尚吾
(幼児教育科 准教授)
以前、東北の幼稚園教員研修大会の指導助言を担当するという機会があり、その大会に向けて、本学の附属幼稚園で3年にわたって研修を月1回程度行いました。研修を始めた当初は私が理屈っぽく考えた方法が、なかなか現場の先生たちに浸透しない感じが多くあったため、研修会の度に出来る限り私も幼児と関わり、幼稚園の教員の現場感覚を味わうようにしました。そして、大会の日には保育活動の公開がおこなわれましたが、その時このようなことがありました。
年長児クラスの描画活動の中で幼児が「下がき」をする場面があり、多くの参観者が違和感を持ったということがありました。その違和感が示すとおり幼児の描画活動において一般的に「下がき」はなじまないと思います。「下がき」は、清書に対して行う練習のようなものという認識においては、せっかくの幼児ののびやかな表現・表出の妨げになってしまいかねません。しかし、そのクラスの子どもたちが、それまでの活動の中で様々にイメージが広がり整理がつかない様子や、描き始めてすぐに「間違えた」というような様子が多く見られたため、考えをまとめたり、イメージを明確にする時間として、あえてその活動を取り入れました。事前にクラスの教諭ともいわゆる「下がき」になってしまわないように慎重に活動を展開するように話し合いました。結果としては、イメージの広がりを楽しめる時間となった幼児もいた一方で、逆にその後の表現が少し窮屈になってしまったような様子があったのも事実です。しかし、描画活動を必ずしも完成させて展示するものと考えなければ、この活動は「下がき」ではなく、ひとつの方法として独立できる可能性を持っているという経験知を得ることができました。
その後の研究討議の中でも、「幼児に下がきをさせていいのでしょうか?」という質問が出たりしましたが、教育の方法において「〜していいのか」という考え方については慎重でなくてはいけないと思います。方法論はこれまでの歴史の中で確立されて、もちろん拠り所になるものが多いのも事実ですが、一般化されたり、普遍化されたりする中で抜け落とさざるを得なかったものもあるはずです。そこをイメージして教育の方法を自由に想像していくことは教員のつとめであり喜びであると思います。
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