【授業概要】
・テーマ
マヤ文明の文化人類学的研究
マヤ文明を事例研究として、文明とは何かについて文化人類学的に考察する。日本の縄文時代末から室町時代にかけてメキシコ南東部から中央アメリカ北西部に栄えたマヤ文明は、先コロンブス期(1492年以前)の南北アメリカ大陸で文字、暦、天文学を最も発達させた「究極の新石器時代の都市文明」であった。最近の調査・研究の積み重ねと共に、新しい科学技術の導入、人類学としてのマヤ考古学の理論・方法論の発展によって、「神秘的でユニークな文明」という従来のマヤ文明観は、「世界の数ある古代文明の一つ」という、より現実的な新しいマヤ文明観に変遷している。マヤ文明は、16世紀のスペイン人の侵略によって破壊された。しかしマヤ文化は、現在進行形の生きている文化であり、メキシコや中央アメリカ北西部の国々において、様々な旧大陸文化との交流によって生まれた現代ラテンアメリカ文化の一部を形成している。講師自身の現地調査を含む最新の調査研究の諸成果を紹介し、マヤ文明の起源と発展、およびその特徴を論じる。
・ねらい
マヤ文化という異文化を学ぶことによって、人間の文化や社会の多様性と共通性についての理解を深める。
・目標
新しいマヤ文明観を学ぶことによって、紀元前からスペイン人の侵略までのマヤ文明に関する知識を得るだけでなく、現代マヤ人の歴史・文化伝統やマヤ文明が興隆したラテンアメリカ諸国の文化・社会・歴史をより良く理解すると共に、旧大陸世界との交流なしに独自に発展した「究極の新石器時代の都市文明」であったマヤ文明を比較研究することによって、旧大陸の社会あるいは西洋文明と接触後の社会の研究からは得られないかもしれない人類学的知見とは何かについて考察したレポートを執筆する。
【授業計画】
・授業の方法
講義形式を基本とする。毎時間プリントを配布する予定。教科書(『マヤ文明』青山和夫著、京都大学学術出版会、2005年)を使用する。予習の有無を確認する小テスト及び映像資料を批判的に検討する小テストを課す。 ・日程
@「マヤ・オリエンタリズム」:異文化理解としてのマヤ文明
Aマヤとは?
B多様な自然環境と人々
C「都市なき文明」から「究極の新石器時代の都市文明」へ
Dマヤ文明の起源―先古典期マヤ文明
E古典期マヤ文明の王権と初期国家群の発達
Fマヤ文字の解読
G「究極の新石器時代の都市文明」の技術
H古典期前期のマヤ都市の盛衰
I古典期後期のマヤ都市の盛衰
J石器研究と政治経済組織
Kマヤ低地南部の「古典期マヤ文明の衰退」とマヤ低地北部の全盛期
L後古典期マヤ文明とスペイン人の侵略
M国内植民地主義と現代マヤ人
Nマヤ文明と現代世界
【学習の方法】
・受講のあり方
プリント資料等を参照。受講前に教科書を通読しなければならない。積極的な質問・発言を望む。 ・予習のあり方
毎日の授業の予習(教科書の読解)が不可欠である。毎日最初の授業において予習の有無の確認のための小テストを行う。 ・復習のあり方
講義の内容を自分なりに整理してみること。レポート提出を課す。
【成績評価の方法】
・成績評価基準
小テスト及び、授業の内容を自分なりに咀嚼しているか、それを元に自ら何を考えたかについてレポートにより評価する。 ・方法
原則として100%レポートによる。小テストを受けなかった場合、10点ずつ減点する。ただし毎授業後に配る質問票の内容等、授業への積極的貢献により、レポートに加点することがある。
【テキスト】
『マヤ文明』青山和夫著、京都大学学術出版会、2005年
【その他】
・担当教員の専門分野
文化人類学
|