本講義は、最も簡略化された分子軌道法であるヒュッケル近似分子軌道法を用いて分子軌道法的な考え方について詳述し、特に共役系有機分子を取り扱い分子軌道法から得られる結果の物理的、化学的意味について解説する。

繁雑な有機化学を理論的に理解するため、量子論に基づいた分子軌道法について解説する。

(1)分子軌道法的な考え方を理解する。(2)分子軌道法を使って、有機分子の物理量の求め方を学ぶ。(3)有機分子の反応性とフロンティア軌道との関係を理解する。この講義は「精密応用化学専修コース技術者教育プログラム」の学習・教育目標(A)に対応する。

ヒュッケル近似分子軌道法　フロンティア軌道論

講義形式で行う。講義内容の理解を促すため、講義中に演習も行う。

第１回：ボーアの古典量子論（ボーアモデル、原子軌道、原子軌道エネルギー）、第２回：古典力学の破綻と量子力学の登場（粒子性と波動性、シュレディンガー波動方程式、量子数）、
第３回：化学結合論（イオン化電位、電子親和力、電気陰性度、イオン結合、共有結合、混成軌道）、第４、５回：ヒュッケル近似分子軌道法（クーロン積分、共鳴積分、重なり積分、規格化、永年方程式、分子軌道エネルギー、分子軌道係数）、第６回：共役系化合物のヒュッケル近似分子軌道法（共役系化合物の分子軌道エネルギーと軌道係数の計算、非局在化エネルギー）、第７回：環状共役化合物のヒュッケル近似分子軌道法（ヒュッケル則、芳香族性、多角形則）、第８回：異核二重結合のヒュッケル近似分子軌道法（ヘテロ原子の取り扱い方）、第９回：分子軌道計算から物理量を求める（電子密度、結合次数、結合距離など）、第１０回：中間試験（第１回から第９回までの講義内容の理解度を確認する）、第１１回：分子軌道と化学反応(1)（熱および光による分子内閉環および開環反応）、第１２回：分子軌道と化学反応(2)（Diels-Alder反応、置換基効果、反応速度）、第１３回：化学反応の選択性（環状付加反応の位置選択性、立体選択性、周辺選択性）、第１４回：有機化合物の物性（発色性、発光性、電気伝導性）、第１５回：期末試験（講義全体の理解度を確認する）

講義の理解を確認するため、例題、問題による演習を行うので、自分の理解度を確認すること。

シラバスに沿って講義は進行するので、教科書のシラバスに該当する個所を事前に読んでおくこと。

毎回出題される宿題を解答することにより理解度を確認すること。次回の始めに、宿題の解答はプリントで配布する。

筆記試験（中間試験（20点）、期末試験（60点））とレーポート（20点）の合計点（100点）で評価する。本講義の合格ラインは60点である。

第１回から第９回までの講義内容の理解度を確認するため中間試験を行い、講義全体の理解度を確認するため第１回から第１４回までの講義内容について期末試験を行う。また、各講義の理解度を確認するため、宿題をレポートとして提出をしてもう。また、毎回minute paperにより出席をとり、出席率が２／３未満の者は期末試験を受ける権利を失う。

齋藤勝裕著、構造有機化学、三共出版、3150円

廣田穣著、分子軌道法、裳華房. 千原他訳、アトキンス物理化学（上）、東京化学同人.

基礎となる科目：有機化学I～III

講義内容は積み上げていく形になっているので欠席しないように。

本講義は、講義題目とは異なる内容（構造有機化学）となるので注意すること。

木曜日　午後４時から５時　３号館３階３１３室

有機化学