【授業概要】
・テーマ
化学工業プロセスの設計・操作のための基礎となる物質収支(Mass Balance)の考え方とその具体的応用
・ねらい
化学工業の特徴の一つは、化学反応、抽出、精留など様々な化学プロセスが複雑に組み合わされている上に、プロセス間で数多くの物質が入り組んで流出入していることである。そのため、化学工業に関する設計では、プロセスそのものについての理解と同時に流出入する物質を整理して考える必要がある。これには、物質収支の概念を適用する必要がある。
本講義は、精密応用化学専修コース学習・教育目標のAに与る。また化学工学専修コースでは、学習・教育目標のG.1の達成に与り、修得すべき小白川地区開講専門科目10単位中に入る
・目標
本講義では、代表的な化学プロセスについて、物質収支の概念の適用法と、その結果得られる物質収支式(連立代数方程式)の解き方について学ぶ。
1)物質収支が、「物質保存則」の化学工業への具体的適用であると理解できること。
2)物質収支を化学反応のないプロセスに適用し、物質収支式が誘導できそれを解ける事。
3)物質収支を化学反応のあるプロセスに適用し、物質収支式が誘導でき、それを解けること
4)複合プロセスに物質収支を適用し、物質収支式が誘導でき、それを解ける事。
5)バイパス、パージ流れ等を伴う複雑なプロセスに物質収支を適用し、問題を解ける事。
・キーワード
プロセス、システム、物質保存則、物質収支式、制約条件式、連立代数方程式、連立代数方程式の独立性と従属性、乾燥、精留、晶析、反応システム、複合システム、バイパス、パージ
【授業計画】
・授業の方法
講義と演習(宿題)、複数の試験で理解度と成績を評価する。講義範囲は前の週に予告する。演習は宿題として課す。次の週はその解答を全員が提出する。指名してその解答を板書させる。解答の手順あるいは陥いり易い誤りなどを指摘し、模範解答を示し理解を助ける。 ・日程
第1週 物質収支の意義と化学工業プロセスとの関わり
第2〜4週 物質収支問題の解析手順とその演習
第5、6週 比較的簡単なプロセスの物質収支解析とその演習
第7、8週 代数式によるプロセス物質収支問題の解析とその演習
第9週 対応成分の意義それを用いたプロセスの物質収支解析
第10〜12週 リサイクルなど複雑なプロセスの物質収支解析とその演習
第13〜15週 試験
【学習の方法】
・受講のあり方
授業中は私語を厳に慎むこと。疑問点は、君でだけでなく他の君も疑問なのだ。質問すること。聞くは一時の恥、聞かぬは末代の恥。演習(宿題)の解答は自発的に板書することを推奨する。板書した諸君には、演習のボーナス点として、提出した解答の成績に一回の板書につき10点を加算する。板書を指名することもある。 ・予習のあり方
予習は。前の週に範囲を予告するので、必ず該当範囲に目を通すこと。一目で良い。それが、積み重なり財産となる。 ・復習のあり方
次週の演習課題を宿題として課すので、必ず復習を兼ねて解くこと。これを繰り返せば大きな力になる。
【成績評価の方法】
・成績評価基準
授業目標への到達度に応じて評価する。到達度は、授業目標を基礎にした試験問題を課すことによって計る。複数回の試験の何れかにおいて、以下の評価方法に従って獲得した点数の最大値が60点以上であれば、目標に到達したものとして合格と判定する ・方法
合格基準:演習(宿題)の累積点を20点満点に換算した点数+各回の試験点数を80点満点に換算した点数≧60点
なお、演習の累積点には板書した場合のボーナス点が加算されている。この場合、累積の点数が演習点の累積満点を超える場合があり得、演習の換算点が20点を超えることもある。
【テキスト】
D.M.Himmelblau(大竹伝雄 訳)、化学工学の基礎、培風館、2900 円(1986)
【参考書】
「化学工学の基礎−化学プロセスとその計算」
A.L.マイヤーズ, W.D.サイダー 共著 大竹伝雄 訳
【科目の位置付け】
精密応用化学専修コースでは専門知識の修得と継続的学習のため、化学工学専修コースでは工学基礎知識の修得と応用能力育成のため、選択必修な小白川地区開講専門科目10単位中に入る
【その他】
・学生へのメッセージ
出席は取らない。自ら進んで学ぶこと、つまり何よりも自分で勉める事こそが重要である。講義に出席する事が一義的に重要だとは考えない。理解度(合否)は演習と試験結果によって判定する。 ・履修に当たっての留意点
1年次開講の「化学システム工学基礎I」、2年次(米沢開講)の「化学工学量論 T、II」との姉妹講義である。特に、「化学システム工学基礎T」は、本講義理解のために必須なので、理解を深めてほしい。 ・オフィス・アワー
山形へは講義日し行かないので、小白川キャンパスで質問を受けることは難しい。質問はメール(shimio@yz.yamagata-u.ac.jp)あるいは、電話(0238-26-3145)でお願いしたい。 ・担当教員の専門分野
反応工学(研究分野:触媒、特に固体酸触媒)、 生物化学工学(研究分野:酵素、特に固定化酵素)、石炭工学(研究分野:石炭の化学的転換、特に電気化学的変換)。
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