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注目の研究生物学

体内受精の進化を解き明かす鍵となる新規精子運動調節タンパク質を発見

掲載日:2016.11.04

教授 渡邉明彦(生殖生物学) 
准教授 渡辺絵理子(発生生物学)
准教授 越智陽城(機能ゲノム学)
助教 中内祐二(生化学)

 体内受精は陸上環境に適応して子孫をつくるために適した生殖様式で、ヒトを含めた陸生の脊椎動物が共通して行います。脊椎動物の進化において陸上進出を果たした両生類では、体内受精は淡水中の体外受精から進化しました。両生類の体外受精では精子は淡水に触れることで運動を開始しますが、体内受精ではメスの体内で精子は運動が抑えられて貯蔵されます。この精子貯蔵によって受精の時期や場所などを選択する自由度が大幅に広がり、様々な陸上環境に適応して子孫を残すことができるのです。しかし、いざ受精となると、精子が淡水に触れることがない体内環境では精子を動かす独自のメカニズムが必要です。これまで、このメカニズムの解明が体内受精の進化を解き明かす鍵となると考えられてきました。

「受精様式の進化を解き明かす鍵となる新規精子運動調節タンパク質」を発見

 体内受精種であるアカハライモリの卵細胞を取り囲む卵外被(ゼリー層)から精子運動開始因子(Sperm Motility Initiating Substance; SMIS)を分離し、150アミノ酸からなる新規システインノットタンパク質をSMISとして同定しました。SMISは体外受精種2種(モリアオガエルとヒキガエル)でも、淡水に触れて運動を開始した精子に作用して運動状態を活発化したことから、体外受精で機能するSMISが、淡水の作用とは独立に機能するようになったことが体内受精の成立の一因となったと推察されます。

 SMISが開始・活発化させる精子運動は、回転運動やらせん運動など、動物種によって異なるユニークなもので、ゼリー層や泡巣のように、種に固有の性質や形状をもつ卵外被のマトリクスを通過することに特化しています。卵外被マトリクスの性質や形状のちがいは体内や体外の様々な生殖環境に適応したものであり、種ごとに固有の生殖環境下の受精や受精後の胚発生を保証しています。これらの事実から、両生類の生殖様式は、生殖環境に適応した卵外被マトリクスの変化と、変化したマトリクスを通過して受精するために適した運動を示す精子の選択によって多様化し、体内受精が最終的に進化したと考えられます。

 近年、体外受精や顕微受精による生殖補助医療の利用が年々増加していますが、動物の受精において、環境に適応して精子が選択されるという現象は一般にほとんど認知されていません。今後、そのメカニズムの研究と平行して、ほ乳動物においても同様の現象が起こるのかを慎重に検討し、生殖医療への貢献につながることが期待されます。

 ◇論文情報はこちら

Sperm Motility Initiating Substance(SMIS)の模式図の画像
Sperm Motility Initiating Substance(SMIS)の模式図

両生類の受精様式の多様化に関連した精子運動の最適化モデルの画像
両生類の受精様式の多様化に関連した精子運動の最適化モデル

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