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大崎教授の海外駐在記「ラトビア大学駐在記4(2)」

リガのお花見 

 サテライト・オフィスは、昨年に続き、本部ビルディングの国際交流課の一室に設けました。相部屋は、山形大学関係の様々な事務仕事を担当してくれている、ダーチェさんです。スラッとした20代の女性です。

 奥の部屋には、課長のアリーナさんがいます。恰幅の良い50代の女性で、いつも、通りの良い声で電話をかけています。あまり笑顔を見せない人なのですが、先日、笑みを浮かべて近づいて来て、「リガに桜の花が咲く公園があるが、ニュースで花が開いたと言っていた。学生に頼んで、連れて行ってもらったらどうだろうか。」と言いました。

 そんな時に、3年前に、日本語クラスに参加していたイーネセから、「お花見に行こう。」との誘いが来ました。彼女はマスコミニュケーション学部を2年前に卒業し、旧市街地の大きな土産物屋の売り子のバイトを経て、昨年からドイツ系の出版社の理系学術誌の英文編集者をしています。そこで、5月7日の土曜日にお花見に行きました。

 桜は、世界文化遺産の旧市街から、川幅500m以上あるダウガヴァ川を西に越えてすぐの、ウズアラス公園にありました。2012年4月に、日本大使館が寄贈したそうで、114本の桜が、幾つかの品種毎に分けられ、3~5本の小さな木立をあちこちに作り、約60ヘクタールの緑地公園に植えられていました。

 「お花見ってゴザを敷いて、そこに座って見るのでしょう。」とイーネセは言い、ゴザ代わりに持ってきた赤いブランケットを、桜の木の下の、緑の芝生の上に広げました。そこの桜は、ポプラのような垂直仕立てで、白い大きな花をつけていました。

 イーネセは、妹のアンナを同行していました。リガからディーゼル列車で3時間半かかる町の高校3年生だそうで、学年末の試験が終わった週末なので、リガに遊びに来たそうです。英語が非常に堪能なので、それを言うと、テレビでアメリカ映画を見ていると、自然に覚えてしまうそうです。

 イーネセの勤める出版社の編集部は、大きい順に、ロシア語、ドイツ語、英語、ラトビア語の4部門があり、彼女は4か国語とも話せますが、英語が最も簡単な言語で、ラトビア語が一番難しいと言います。姉妹で話をしていると、いつのまにか英語で話していることがあるそうで、ラトビア語で表現が難しいことでも、英語でなら簡単だ、と言います。

 桜の花の下で話をしていると、視界に入って来る人々の多くが見知った顔で、日本語クラスにやって来る大学生や高校生でした。近寄って来て挨拶をする子も何人かいて、桜の花が咲いたというニュースを見て、公園にやって来たそうです。普段はシャイで無愛想な彼らが、自分の方から挨拶に来るなど、今までなら、考えられない事でした。

 他の学生からも聞いたことがあるのですが、この時のイーネセの話では、ラトビア人が不愛想なのは、歴史的に、ロシア、ドイツ、などの異民族の侵略者に虐げられてきたからで、警戒心が強く、人を信用することがないからだそうです。親兄弟にそう言い聞かされて育てられているので、信じられるのは自分と家族だけだと考えていて、その習性を克服するには、数世代はかかるだろう、と言うことでした。

ウズアラス公園の桜の画像
ウズアラス公園の桜

イーネセさんと妹のアンナさんの画像
イーネセさんと妹のアンナさん