基盤教育院の設立の趣旨・経緯

基盤教育院の設立山形大学の教育改革山形大学基盤教育の基本方針(抜粋)

基盤教育院の設立

 山形大学では「教養教育を重視した人間教育」という方針に基づき,平成20年7月から新しい教養教育の在り方の検討を進めてきました。

 その結果,平成22年4月の入学者から,従来の教養教育を「基盤教育」と改め,4年間の学士課程教育の基盤となる教育を行うこととしました。

 「基盤教育」は導入科目,基幹科目,教養科目,共通科目及び展開科目の5つのカテゴリで構成し,社会的要請に応える「学士力」の育成,「学ばせたいものを学ぶ」教育への転換,専門教育と教養教育の一体化という視点からカリキュラムを改めることにしました。

 この「基盤教育」のスタートに合わせ,より実施体制を明確にするため,中心となる運営組織として,「基盤教育院」を設置しました。「基盤教育院」は,基盤教育院長(兼任),部門長(兼任)4名及び専任教員16名で運営しています。

▲ページ上部へ戻る

山形大学の教育改革

平成 3年 6月 大学設置基準の大綱化(平成3年7月1日施行)
平成 5年 4月 4年(6年)一貫教育に向けた教育・研究体制を見直し,「教養部における教育改革(平成5年度改革)」を実施
平成 8年 4月 教養教育を開始(教養部等の改革・再編を実施)
平成21年10月 基盤教育院を設置
平成22年 3月 「山形大学基盤教育の基本方針」を承認
平成22年 4月 基盤教育を開始

▲ページ上部へ戻る

山形大学基盤教育の基本方針(抜粋)

はじめに

 「山形大学の将来構想(2008年)」は,教育に関する基本方針を,「教養教育を基盤とした体系的な学士課程教育を実施するとともに,大学院教育の実質化を図ることにより,社会に貢献していくために必要な人間力及び幅広い教養と豊かな人間性を身につけた人材を育成する」と定めている。
 本学の教養教育は,総合大学の利点を活かした幅広い教養とリテラシーを修得する教養教育と,多様な研究実績を背景とした専門教育を明確に区分した上で学士課程教育の二本柱としてきた。特に教養教育では,「学ぶ側の主体的な科目履修」と「教える側の責任ある教育」を基本とした柔軟で多様性のあるカリキュラムを特徴としてきたが,学生の自主性に委ねるのみでは必ずしも所期の目的を達成する科目選択とはならず,領域・科目区分毎の履修制限や履修指導等により,学生の履修の自由に制限を加える必要があった。さらに,学部段階の教育課程を教養教育と専門教育の二つに区分するのみで,最終的には学生自身が両者を統合することを期待するにとどまっていた。
 このため,山形大学学士課程教育の拡充を目指し,共通的かつ基盤的な教育のより一層の充実を図るべく,教養教育の再構築を行うこととした。これまで本学が「教養教育」として行ってきた教育は多様な内容を含むものであり,その名称も多様な解釈が許容されるものであった。このたびの再構築においては,本学の学士課程教育の基盤をなすものとして,教養教育を新たに「基盤教育」と位置付け,大学あるいは学問についての明確な認識を持たない初年次の学生に向けてどのような教育を行うのか,山形大学は教育で何を重視し,大学での学びへの志向性をいかに育てようとしているのかなど,その目的・目標に応じて科目構成を体系的に明らかにし,適切に配置して実施する。

1 基本理念

(1) 学士課程教育における基盤教育の位置付け

 山形大学の学士課程教育では,自立した一人の人間として力強く生き,他者を理解しともに社会を構成していく力を養う。そのためには,健全で良識ある市民として生きるための豊かな教養,人生をどう生きるべきかという人間理解,自然環境の中で生き,社会の中で他の多くの人々と一体となって成果を創造していくための共生のこころ,習得した高い専門知識を具体的な事例に適用し判断・行動する能力が必要である。
 本学では,これらの能力を,初年次の導入段階の教育から目標達成段階の教育に至るまで,明瞭な目的・目標を持った授業科目を,学習の系統性や順次性に配慮して学士課程教育の中に配置し,育成する。基盤教育では,学問の実践に必要な基本的能力と健全な批判精神に裏打ちされた幅広い知識とを身につけさせ,大学での学習及び生涯にわたる学習への基盤となる力を養うことによって,社会に参画し運営していく良識ある市民としての力を育むことを目的として行う。

 

(2) 基盤教育の基本姿勢

 本学における基盤教育の柱として,次の点を重視する。

  1. 「人間力」の育成
     社会を構成し運営する自立した人間として,人生をどう生きるべきか。より良く,より力強く生きようとする力である「人間力」を育成することは,学士課程教育全体を貫く教育目標となるものであり,基盤教育では,その基となる力を身につける。
  2. 健全な批判精神に裏打ちされた幅広い教養の養成
     知識や意見などをそのまま鵜呑みにするのではなく,本当にそれで良いのかと疑ってみるという合理的な批判的思考を養い,その批判精神によって常に検証されることが期待される広汎な「知」の体系を身につける。
  3. 自立した個人として社会における責任を果たす態度・志向性の養成
     自律的な存在としての自己の尊厳と同様に,異質な他者の存在と尊厳を承認し,他者との協力と連帯によって,共存共生の世界を構築しようとする態度・志向性を養う。
(3) 科目構成

 基盤教育は,「導入科目」「基幹科目」「教養科目」「共通科目」「展開科目」で構成する。

  1. 「導入科目」は,大学教育や大学生活への円滑な接続を図り,自立して学ぶ姿勢を身につけさせるものである。課題の探求などのおもしろさを実感させながら,大学での学習技能や生活技能を育てるもので,必修科目である「スタートアップセミナー」及び選択科目である「アドバンストセミナー」の授業が開講される。
  2. 「基幹科目」は必修(選択必修)とし,本学が教育上重視する「共生」と「人間」をテーマに掲げ,その問題を考えることを通して,学問への問題意識の育成や動機付けを図るものであり,大学での学問的志向性を育成するものである。
  3. 「教養科目」は,学問の多様性を経験させ,知識の幅を広げさせることを目的とする。
  4. 「共通科目」は,学問の実践に役立つ知識や能力,あるいはそれを根底で支える健康な体力を身につけさせること,また,将来のキャリアについて考え,人生を強く豊かに生きていくための「人間力」を高めることを目的とする。
  5. 「展開科目」は,高年次においてもそれぞれの専門領域にとどまらず,より広い視野と健全な批判精神を養うのに相応しい科目を受講させるものである。

2 運営・実施体制

(1) 運営体制
  1. 基盤教育の運営・実施の中心的な業務を担う組織として基盤教育院を置き,基盤教育院長(以下「院長」という。)が統括する。
  2. 基盤教育院に基盤教育の各科目区分に対応した部門を置き,それぞれに部門長を配置する。
  3. 基盤教育院の各部門に,授業科目・領域に対応するディレクターを配置する。
  4. ディレクターは,各科目・領域の授業の確保,共通認識の醸成等の取りまとめに当たり,当該科目・領域を統括する。
  5. 基盤教育の実施並びに基盤教育院の運営に関わる事項を審議するため,基盤教育院会議(以下「教育院会議」という。)を置く。
  6. 教育院会議の下に,基盤教育の実施計画の立案,その他基盤教育の実施に関わる事項を審議する基盤教育実施会議(以下「実施会議」という。)を置く。
(2) 全学協力体制
  1. 基盤教育は,各学部等の責任分担を明確にしながら基盤教育院が運営し,全学協力体制で実施する。
  2. 各部局は,「山形大学基盤教育の安定的実施に関する申合せ」に基づき,責任を持って相応の協力を行うものとする。
(3) 担当教員
  1. 各科目区分ごとの開講コマ数は,入学者数や履修状況調査結果等を勘案の上,基盤教育院が決定する。
  2. 基盤教育の担当教員については,各部局の意見を参考にしながら,実施会議で調整を図った上で,基盤教育院が決定する。
  3. 基盤教育の開講コマ数の調整,授業担当者の選定,授業時間割の編成,シラバスの作成等については,実施会議で審議し,教育院会議で決定する。
(4) 教育の質の保証について
  1. 基盤教育の授業担当者は,基盤教育のFD活動に積極的に参加するものとする。
  2. 基盤教育院は,新規基盤教育担当教員向けの研修,不断の授業改善,新たな教育方法開発,全国的な教育改革の情報収集・提供等,基盤教育の教育の質の保証のための各種事業を企画・実施する。
  3. 理念・目的の共有化,成績評価の適正化を図ることを目的に,各科目区分・領域ごとのFDを積極的に行う。
(5) グランド・プロフェッサー及び非常勤講師の取扱い
  1. グランド・プロフェッサーは,本学の名誉教授を中心に,永年にわたる研究と教育経験の蓄積を背景に,基盤教育の授業を担当する。
  2. グランド・プロフェッサーの選考は,教育院会議の議に基づき,決定する。
  3. 基盤教育を担当する非常勤講師については,教育院会議において審査し,決定する。
  4. 基盤教育に係る非常勤講師の総時間数の設定及び各科目等への時間数の配分基準は,教育院会議が決定する。

3 成績評価・単位

(1) 単位の認定・授与
  1. 基盤教育の授業科目は,セメスター制により各学期ごとに完結する。
  2. 履修した授業科目の成績の審査は,その学期ごとに各授業担当教員が学修状況,試験の成績等によって行い,審査に合格した者には,所定の単位を与える。
(2) 単位数の計算方法

 基盤教育における授業科目の単位の計算方法は,1単位の授業科目を45時間の学修を必要とする内容をもって構成することを標準とし,授業の方法に応じ,教育効果,授業時間外に必要な学修等を考慮して,次の基準によるものとする。

  1. 講義については,15時間の授業をもって1単位とする。
  2. 演習については,15時間の授業をもって1単位とする。ただし,コミュニケーション・スキルは30時間の授業をもって1単位とする。
  3. 実験,実習及び実技については,30時間の授業をもって1単位とする。
(3) 成績の審査
  1. 成績の審査は100点満点とし,次の5段階で行う。
         S:100〜90点,A:89〜80点,B:79〜70点,C:69〜60点,F:59〜0点
  2. 成績評価に関し,学生が授業担当教員に問い合せても納得がいかない場合は,学生センターを通じて質問票を提出することができる。なお,提出された質問票は次のように取扱う。
    • 実施会議議長が,授業担当者に質問内容に基づき確認する。
    • 次に,授業担当者に確認した内容を,実施会議議長名で学生に回答する。

4 教育課程

 基盤教育の履修方法については,「基盤教育履修規程」として別に定め,その制定及び改廃等は教育院会議が行う。

(1) 実施方針
  1. 基盤教育は,工学部フレックスコースを除き,原則として,入学当初の1年間に小白川キャンパスで共通のカリキュラムにより実施する。ただし,医・工・農学部で進級できなかった者の基盤教育は,小白川キャンパスで行う。
  2. 基盤教育の必要単位数及び必修科目の単位数は,各学部の定めるところによる。
  3. 基盤教育1年間の未履修者の取扱いは,各学部の定めるところによる。
  4. 2年次への進級条件は,各学部の定めるところによる。 
(2) 履修方法
  1. 各学部は,基盤教育の基本理念の趣旨を十分踏まえつつ,それぞれの学士課程教育の理念・目的に沿って基盤教育の履修方法を定めるものとする。
  2. 各科目区分及び領域ごとの修得単位数は各学部が定め,それぞれの履修要項等に明記する。
  3. 基盤教育に関し,各学部で定める卒業要件単位数を超えて修得した単位については,自由科目等,一定の枠内で卒業要件に位置付けるものとする。
  4. 基盤教育の授業科目は,科目区分または領域ごとに実施会議で設定し,教育院会議に報告するものとする。
(3) 開講科目

1) 導入科目

  1. 導入科目は,「スタートアップセミナー」及び「アドバンストセミナー」を開講し,「スタートアップセミナー」2単位を必修とする。
  2. 「スタートアップセミナー」は,授業科目名と学部・学科名を併記して表示する。
    (例)「スタートアップセミナー(人文学部・人間文化学科)」
  3. 「アドバンストセミナー」は,授業科目名と領域名を併記して表示する。
  4. 基盤教育院は,スタートアップセミナー及びアドバンストセミナーの教材として,それぞれ共通テキストを作成する。

2) 基幹科目

  1. 基幹科目は,「人間を考える」「共生を考える」の2領域とし,それぞれ1科目2単位,計4単位の選択必修とする。
  2. 基幹科目の授業名は,授業テーマと授業科目名を併記して表示する。
    (例)『「共生の生物学」(生物科学)』
    ・『 』…授業名 ・「 」…授業テーマ ・( )…授業科目名

3) 教養科目

  1. 教養科目は,「文化と社会」「自然と科学」「応用と学際」「山形に学ぶ」の4領域とする。
  2. 各領域に亘り幅広く履修するよう,領域ごとの履修方法及び修得単位数は各学部が定める。
  3. 教養科目の授業名は,授業テーマと授業科目名を併記して表示する。
    (例)『「数の仕組」(数理科学)』
    ・『 』…授業名 ・「 」…授業テーマ ・( )…授業科目名

4) 共通科目

 

ア) コミュニケーション・スキル

  1. コミュニケーション・スキルは,「コミュニケーション・スキル1(英語)」4単位と,「コミュニケーション・スキル2(初修外国語)」の2領域とする。
  2. コミュニケーション・スキルの領域ごとの履修方法及び修得単位数は各学部が定める。
  3. 「コミュニケーション・スキル2」のドイツ語,フランス語,ロシア語,中国語及び韓国語のいずれか一つの外国語については,4単位まで修得できるものとする。なお,2年次以降における継続的な学習への意欲を高めるため,それぞれの初修外国語(当面の間は韓国語を除く)の発展コースを開講する。
  4. 外国人留学生のために「日本語」を開講し,8単位までの履修を認める。修得した単位は,教養科目又はコミュニケーション・スキルの単位に振り替えることができる。

イ) 情報リテラシー

  1. 情報リテラシーは2単位とし,必修・選択の別は各学部が定める。
  2. 情報リテラシーは,原則として全員が履修するものとする。

ウ) 健康・スポーツ

  1. 健康・スポーツは,「スポーツ実技」「健康・スポーツ科学」「スポーツセミナー」の3区分とし,必修・選択の別及び修得単位数は各学部が定める。
  2. 健康・スポーツは,原則として全員が履修するものとする。

エ) サイエンス・スキル

  1. サイエンス・スキルは,理系の専門教育を学ぶ上で特に必要と思われる内容について,各学部(各学科)の意向を踏まえて開設するものとし,履修方法は各学部が定める。
  2. サイエンス・スキルの開設科目は,実施会議で設定し,教育院会議に報告する。
  3. サイエンス・スキルは,当該学部(学科)の希望に応じ,クラス指定を行うことを可能とする。
  4. サイエンス・スキルは,当該学部(学科)の収容人数に余裕がある場合には,当該学部以外の学部(学科)の学生についても履修を認める。

オ) キャリアデザイン

  1. キャリアデザインの履修方法は各学部が定める。

5) 展開科目

  1. 展開科目は,次のいずれかの方法で履修させるものとする。
    • 各学部における専門教育との関わりにおいて,高年次の基盤教育として適切な科目を,各学部の責任で開設する。
    • 展開科目の趣旨に基づき,1年次に開講されている「教養科目」の中から自由に選択させる。
  2. 展開科目の開講コマ数は,各学部ごとに開設する,あるいは教養科目の利用によるものであることから,基盤教育の開講コマ数には含まないものとする。
(4) 受講・履修の制限
  1. 同一授業科目(例えば,「哲学」「物理学」等)内の履修については,履修制限を設ける。
  2. 演習・実験・実習及び実技以外の授業(講義形式)は,教室の収容定員等やむを得ない理由のない限り,受講者の制限を行うことはできない。ただし,基盤教育院が特定の科目について,教育効果の観点から受講定員等を定めた場合は,この限りではない。
  3. 学生に適切な履修登録を行わせるため,履修登録後の一定時期(前期:4月,後期:10月)に,履修の取消を認めるものとする。なお,履修の取消をしない履修放棄科目はFとする。
  4. 各領域ごとの履修方法は,各学部が定める。
(5) 開講形態の工夫等
  1. 学生の能動的学習を促進するため,学生主体型授業,フィールドワーク,ディベート等のアクティブ・ラーニング型授業を,積極的に取り入れる。
  2. 教育効果の向上のため,授業支援システム(LMS)及び遠隔講義システム等を積極的に活用した授業方法の改善を図る。
  3. 学生の選択の幅が拡大するように授業の開講形態を工夫するとともに,他大学等との協定に基づく単位互換制度を積極的に活用する。
  4. 大学以外の教育施設等における学修の成果についても,単位認定する等積極的に活用する。
  5. 各学部が開講する専門教育科目の一部を,実施会議の了承を得て,教養科目として他学部学生に受講させることができる。この場合は,各学部の担当コマ数の枠外とする。
  6. 多様な授業を提供するため,学外者による講義の開講を積極的に導入する。
(6) 教育職員免許法への対応

 教育職員免許法施行規則第66条の6で規程される文部科学省令で定める科目の修得については,基盤教育で次のように対応する。

  1. 日本国憲法2単位:教養科目「文化と社会」領域の「日本国憲法」を修得
  2. 体育2単位:共通科目「健康・スポーツ」の科目を修得
  3. 外国語コミュニケーション2単位:共通科目「コミュニケーション・スキル1」の「英語(C)」(コミュニケーション)を修得
  4. 情報機器の操作2単位:「情報リテラシー」を修得
(7) 1年次開講の専門科目

 4(6)年一貫教育の趣旨に鑑み,各学部は1年次の専門教育科目の開講について,各学部(各学科)において前期4コマ,後期4コマの範囲内で積極的に対応するものとする。ただし,特別な事情がある場合には,実施会議で調整を図る。

(8) 1年次開講の補習教育
  1. 補習教育は,高校で学んだ不十分な知識を補完するものであり,基盤教育の正規のカリキュラムの枠外で開講され,単位として認定しない。
  2. 補習教育は必要に応じて各学部の責任で行い,1年次専門教育科目開講コマ数の枠外で行うものとする。

▲ページ上部へ戻る

山形大学 基盤教育院

基盤教育院とは?基盤教育の内容キャンパスライフよくある質問問い合わせ
山形大学

 

Copyright(c) YAMAGATA UNIVERSITY. All Rights Reserved.