写真

校長室だより

令和4年度 卒業証書授与式(校長式辞)

やわらかな日差しが、春の訪れを感じさせる今日のよき日に、菅野大輔PTA会長様、和田宏司同窓会長様をはじめとするご来賓の皆様のご臨席を賜り、令和4年度の卒業証書授与式を挙行できますことに、心より厚く感謝申し上げます。
 さて、卒業証書を手にした「ななかまど学年」97名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、保護者の皆様におかれましては、たくましく成長したお子様の姿に、喜びもひとしおのことと思います。

私が皆さんと過ごした時間は一年間でしたが、4月に会ったときから頼もしい6年生だと思っていました。その代表的な姿が、みのり班での班長です。大テーマ「一人一人のよさをわかり合い 笑顔を咲かせ心をつなげよう」を掲げ、「あいさつ運動」に積極的に取り組みました。皆さんがあいさつする様子を見て、1年生や2年生が「私もあいさつ運動をしたい」と言って、進んで正門前に立つうれしい姿もありました。みのり班での遠足や登山、スポーツフェスティバルの長縄跳びでの下級生を気遣うやさしい姿、みのり班活動や清掃でのリーダーシップなど、皆さんが班長という仕事に責任とやりがいを感じて取り組む姿に感心していました。学校中に笑顔がいっぱい広がったのも、皆さんの行動力とやさしさがあったからです。皆さん、本当にありがとう。

今日は、卒業という節目に際し、一人一人の「心が動くとき」について考えてみたいと思います。相田みつをさんの作品に「うつくしいものを 美しいと思える あなたのこころが うつくしい」という詩があります。
 物事を見聞きしたときに感じる心の動きを「感性」と呼びますが、性格と同じように、人によって感じ方も様々です。皆さんと修学旅行に行ったときのことを例に考えてみます。私の心が動いた瞬間は、例えば次のようなときでした。まずは、最上川舟下りでのこと。初夏に広がる澄み切った青空、川の水しぶきに声を上げてはしゃぐ無邪気な皆さんの姿に心が躍りました。次に、羽黒山の参道を登ったときのこと。大きな杉の木がつくり出す緑の木陰、時折吹くやさしい風に、暑さが和らいでいく心地よさを感じました。旅先での心温まるおもてなしや豪華な食事の数々、川のほとりの暗闇で小さな星のように光るホタルにも、わくわくしたことを鮮明に覚えています。修学旅行で心が動いた瞬間は、皆さん一人一人が違い、それぞれの心に深く刻まれていることでしょう。
 同じようなことは、日々の学習にもあったはずです。七日町を歩いて見つけたバリアフリーや防犯についての課題、山形を元気にするために活躍している多くの方々の情熱、身近な生活の中で気付いた食品ロスや電力不足などの問題の数々。これらのことについて、いつ、どんな瞬間に心が動いたのかも、皆さん一人一人違うはずです。
 美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知なるものにふれたときの感激、やさしさや思いやり、不思議などの様々なかたちの感情が呼び覚まされると、次はそのことについてもっと知りたいと思うようになります。つまり、心が動く瞬間は「学びの出発点」。これから人工知能が発達していく世の中では、心が動く瞬間や感性が働く瞬間は、「その人にしかないかけがえのないもの」としてもっと大事になるはずです。今の自分は、未来の自分に続いています。中学校に進んでも、自分らしい感性をもち続け、新たな学びを切り拓いてください。

保護者の皆様、本日は、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。小学校生活の後半は、コロナ禍で多くの制約を余儀なくされましたが、子どもたちは「ななかまど」の名前の由来にあるように、厳しい環境にも負けず、力強く歩んできました。今、子どもたちは独り立ちの準備の真っただ中にあります。心と身体の著しい成長を遂げる楽しみな時期であると同時に、心を悩ませる時期でもあろうかと思います。どうぞ、どのようなときもお子様との対話を大切にされ、温かく支えていただきたいと思います。これまで、本校の教育活動にご理解とご協力をいただきましたことに、心より御礼申し上げます。

卒業生の皆さん、いよいよお別れのときです。
「ななかまど」の花言葉「賢明・思慮深さ」のように、自分の心・感性を働かせて考え、よりよい自分と未来を築いていってください。
 巣立ちゆく皆さんの前途に幸多からんことを祈念し、式辞といたします。

令和5年3月19日 山形大学附属小学校 校長 林 敏幸

卒業証書授与式