生物反応化学
 Bioreaction Chemistry
 担当教員:日野 修次(HINO Shuji)
 担当教員の所属:理学部物質生命化学科
 開講学年:3年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:物質生命化学科  科目区分:選択科目 
【授業概要】
・テーマ
1)生物が生存していために必要な生体内でおきているエネルギー代謝機構について学習する。
2)生体内(細胞内)の糖,タンパク質,脂質などの合成と分解,供給や相互変換(組み換え)の機構を理解する。
生物が生存していくための最も基本的な営みの一つとしてエネルギー代謝系があります。これは,生物化学分野を学ぶ上での基礎的で,共通の分野でもあります。当科目では,エネルギー獲得系としての光合成と呼吸(電子伝達系)について,代謝系として生体に必要な有機物の生合成を中心に理解できるようにします。 この講義内容の一部に関して,化学実験VIで実施した内容を含みます。その説明もありますので,選択ですが出来得る限り受講してください。
・到達目標
生物がどのようにしてエネルギーを獲得するのか?そして,どのように転換するのか? また,細胞内の有機物がどのようにして組み換えられたりするのか? について理解し,それぞれの過程についての動的な現象を生体内でおきる化学反応と生命現象について総合的に理解し考えることが出来るようにすることを目標とします。 生物が生きていくためのエネルギーをどのようにして獲得し,また生体を維持していくのか,そしてどのように応答するのかを広い角度から考えられるようになることを期待します。
・キーワード
細胞の微細構造,光合成(明反応と暗反応),呼吸代謝と電子伝達系,アミノ酸と脂質代謝と糖代謝の関連

【科目の位置付け】
化学系の講義の中でも,生物学との境界領域にある科目です。化学系の基礎的な知識の上に,生体を対象とした幅広い科学的知識を身につけた人材の育成を目標とします。(物質生命化学科学習・教育目標より)

【授業計画】
・授業の方法
板書を中心とした一般的な講義形式で進めますが,教科書の図表を見ながらの講義,あるいは一部配布資料などを使って進めていきます。
・日程
(1)ガイダンス,(2)クロロプラストとミトコンドリア,(3)エネルギー源としてのATP,(4)光合成系の概要,(5)光合成明反応系(光化学系と光リン酸
化),(6)光合成暗反応系(炭素固定系とC3サイクル,C4サイクル,およびCAM型), (7)呼吸代謝系(エネルギーの利用過程)EMP系,ペントースリン酸経路,クエン酸回路,グリオキシル酸回路,糖新生など,(8)電子伝達系および酸化的リン酸化,(9)全体のまとめと試験,また,関連する有機物代謝系(糖,アミノ酸など)についても解説します。
(1)と(9)をのぞき,各々1-2回程度,試験を含め,合計15回開講します。

【学習の方法】
・受講のあり方
内容はかなり多岐にわたりますが,中心となるのはエネルギーの獲得とその利用,および有機物代謝系です。1つの内容から広がっていきますの
で,各回で内容を整理して,その都度理解するようにしてください。
・授業時間外学習へのアドバイス
予習は教科書(ヴオート基礎生化学第3版)の該当部分を事前に読んで,予め概要を理解することを望みます。 復習は毎回の授業終了後,不明点を残さないよう確実に整理していってください。後半になればなるほど,以前の部分とのつながりがでてきますので注意してください。

【成績の評価】
・基準
各項目ごとの基礎的な内容を理解し説明できること,およびそれらの関連に応用して説明できることが合格基準となります。また,生体内で起きる代謝機構について,各事項ごとの関連を理解し,それぞれのつながりを説明できることも合格基準に含まれます。
・方法
2回の試験の(各50点)の合計 100点で総合的に評価します。

【テキスト・参考書】
生物化学Ⅰ,Ⅱなど生化学関連科目と共通の教科書として, ヴオート「基礎生化学」 第3版 東京化学同人 とします。 この中の一部の章を中心に講義しますが,他の章についても関連項目を説明します。
参考書としては下記のものを奨めます。また資料は適宜配布します。
1.コーンスタンプ生化学, E.E. Conn and P.M. Stumpf, 田宮・八木訳 (東京化学同人)
2.現代植物生理学講座 1.光合成,宮地重遠編(朝倉書店)
3.現代植物生理学講座 2.代謝, 宮地重遠編(朝倉書店)
4.基礎生物学選書 2.細胞生物学,太田次郎著(裳華房)

【その他】
・学生へのメッセージ
内容的には生物化学系を学ぶ上で必要な生物学に関する部分も含まれ量的にかなり多いかもしれません。できる限りわかりやすく説明するよう心がけますので出席するようにして下さい。
生化学分野に関して生物化学Ⅰ,Ⅱ,生物化学演習がありますが,相互に関連していますので,十分に復習してください。
・オフィス・アワー
在室時はいつでもかまいませんが,昼休みか,16:30以降が適当と思います。

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