【授業概要】
・テーマ
現代の医学は基礎研究、臨床研究問わず様々な研究成果の蓄積によって日々進歩している。その際、どのような研究であっても同等に信頼できるだろうか?しっかりと計画された医学研究でなければその結果を信頼することは難しい。貴重な医学情報を、多数収集したとしても適切な解析法を用いないで解析された結果を信頼することは難しい。医学研究で得られた結果を理解する際にも正しく解釈する力が必要となる。このような医学研究の計画、実行、解析、解釈の方法論となるのが疫学そして生物統計学である。
・到達目標
医学研究の計画、調査の方法、情報収集の手段、集計法、統計解析法、そして結果の解釈について疫学的思考法、基本的かつ実践的な生物統計学的解析を身につけることを目的とする。医学研究、特に臨床研究に関連するキーワードの理解、論文読解に必要な基礎知識、そして、実際に自らの手で基礎的な統計解析が出来るようになることを目標とする。
【科目の位置付け】
医学研究の計画や実施する、あるいはより身近なところでは医学研究論文を読み解く、といった際には疫学的な思考法と生物統計学の理解が助けになる。医学教育の初期段階に疫学と生物統計学の理解を深めることでその後の基礎医学、臨床医学の知識を学ぶ土台を整えることになると考える。
【授業計画】
・授業の方法
講義とグループもしくは個人での演習を組み合わせた授業を行う。
・日程
疫学(1):疫学序論・研究デザイン 疫学(2):因果関係・バイアス・交絡 疫学(3):記述疫学・分析疫学:生態学的研究 疫学(4):分析疫学:横断研究・分析疫学:コホート研究 疫学(5):分析疫学:症例対照研究 疫学(6):システマティックレビューとメタアナリシス、エビデンス、費用対効果、費用効用分析、政策疫学
統計学(1):データの型、データの分布の視覚化、探索的データ分析、相関 統計学(2): 仮説検定、区間推定 統計学(3):連続変数の2群間の比較 統計学(4):連続変数の3群以上の比較、多重比較 統計学(5):カテゴリー変数、比率の2群間の比較、3群以上の比較 統計学(6):多変量解析:線形回帰 統計学(7):多変量解析:ロジスティック回帰 統計学(8):生存解析、カプランマイアー解析、Cox回帰 統計学(9):統計学的予測モデル、その他の応用
なお上記予定は都合により変更になる事がありうる。
【学習の方法】
・受講のあり方
講義:基礎的な知識を講義するほかに、参加型のディスカッションやグループワークを取り入れる。積極的な姿勢での受講を望む。 演習:生物統計学を理解し、また、実践的な知識の習得を目指し、1人1人が統計解析ソフトウェアを使用して演習を行う。
・授業時間外学習へのアドバイス
毎回の授業内容について、予習、講義、演習、実践のサイクルを積み重ねていただきたい。授業中に理解できなかった点や詳しく知りたいと思った点は講義中に質問する事を強く進める。1人の学生の質問は、クラス全体の理解を深める貴重な質問になる。授業時間外であれば図書館、インターネットなどを利用して各自で調べるほか、学生間でのディスカッション、何より遠慮なく教官への質問を積極的に行い理解を深めていただきたい。
【成績の評価】
・基準
平常の授業参加、ミニテスト、出席とレポートによる。
・方法
出席以外に講義中のミニテストを行うとともに、個人もしくはグループ単位でレポート課題を提示する。それぞれについて提出すること。成績はこれらを総合的に評価する。
【テキスト・参考書】
・ はじめて学ぶやさしい疫学 改訂第2版 日本疫学会、 田中平三他編集 ・ 基礎から学ぶ楽しい疫学 中村 好一 ・ ロスマンの疫学―科学的思考への誘い Kenneth J. Rothman著, 矢野 栄二他訳 (原本 Epidemiology: An Introduction Kenneth J. Rothman) ・ 疫学 -医学的研究と実践のサイエンスLeon Gordis著, 木原正博他訳 (原本Epidemiology Leon Gordis)
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