臓器疾患学:腎・尿路コース
 Organ diseases:Renal and Urological disease
 担当教員:土谷順彦(TUCHIYA Norihiko), 長岡 明(NAGAOKA Akira), 今田 恒夫(KONTA Tsuneo),加藤 智幸(KATO Tomoyuki), 一柳 統(ICHIYANAGI Osamu)

 担当教員の所属:医学部医学科
 開講学年:3年  開講学期:前期  単位数:34単位  開講形態:講義・演習
 開講対象:医学科  科目区分:専門教育・必修 
【授業概要】
・テーマ
2週間のコースで腎泌尿器系の構造と機能の理解し,腎泌尿器科領域の疾患について症例を通して学習してもらいます。この中では基本的な事項の学習に重点を置くとともに臨床実習へ役立つ知識の習得を目指します。
与えられた症例(週1例,合計2例)を通じた少人数グループによる問題基盤型学習(problem-based learning, PBL)により自主的な学習を行ってもらいます.また,コース中には重要なポイントについて講義も行います.
・到達目標
腎泌尿器科の疾患は非常に幅広く,網羅することは困難なので,ポイントとなる疾患について2週間に4症例から,代表的な疾患の診断治療のプロセスを理解し,知識として身に付けることを目的とします.以下は具体的な到達目標です.(△はオプションです)
第1週
構造と機能、診断と検査の基本、腎機能障害、腎移植、神経因性膀胱。
到達目標:
【構造と機能】
1)体液の量と組成・浸透圧を小児と成人を区別して説明できる。
2)腎・尿路系の位置・形態と血管分布・神経支配を説明できる。
3)腎の機能の全体像やネフロン各部の構造と機能を概説できる。
4)腎糸球体における濾過の機序を説明できる。
5)尿細管各部における再吸収・分泌機構と尿の濃縮機序を説明できる。
6)水電解質・酸塩基平衡の調節機構を概説できる。
7)腎に作用するホルモン・血管作働性物質の作用を説明できる。
8)蓄排尿の機序を説明できる。

【診断と検査の基本】
1)腎・尿路系の画像診断を概説できる。
2)糸球体濾過量を測定する方法を概説できる。
△3)腎生検の適応と禁忌を説明できる。
4)尿流動態検査を説明できる。

【疾患】
1 腎不全
到達目標:
1)急性腎不全の原因、症候、診断と治療を説明できる。
2)慢性腎不全の原因、症候、診断と治療を概説できる。
3)慢性腎不全の治療(透析・腎移植)を説明できる。

2 原発性糸球体疾患
到達目標:
1)急性糸球体腎炎症候群の原因、症候、診断と治療を説明できる。
2)慢性糸球体腎炎症候群(IgA腎症,微小変化群を含む)の症候、診断と治療を説明できる。
3)ネフローゼ症候群の分類、症候、診断と治療を説明できる。
△4)急速進行性腎炎症候群を概説できる。

3 腎血管障害
到達目標:
1) 腎血管性高血圧を概説できる。

4 尿細管機能異常
到達目標:
1)尿細管性アシドーシスの分類、病態生理、診断と治療を説明できる。
△2)ファンコーニ症候群(腎性糖尿を含む)の概念、症候と診断を説明できる。

5 間質性腎疾患
到達目標:
1)急性・慢性腎盂腎炎の原因、症候、診断と治療を説明できる。
2)急性・慢性間質性腎炎の原因、症候、診断と治療を説明できる。

6 全身性疾患による腎障害
到達目標:
1)糖尿病性腎症の症候、診断と治療を説明できる。
△2)ループス腎炎の症候、診断と治療を説明できる。
△3)アミロイド腎の症候、診断と治療を説明できる。
△4)膠原病類縁疾患(血管炎症候群、グッドパスチャー症候群)の腎病変を説明できる。
△5)紫斑病性腎炎を概説できる。

7 神経因性膀胱
1)神経因性膀胱症候、診断と治療を説明できる。

第2週
尿路先天異常、尿路上皮腫瘍、腎実質腫瘍、尿路結石症、尿路感染症

到達目標:
【疾患】
1 先天異常
1)腎尿路の主な先天異常(先天性水腎症、膀胱尿管逆流症、多発性嚢胞腎)を概説できる。
2 腎・尿路腫瘍、外傷
1)腎細胞癌の症候、診断と治療を説明できる。
2)尿路上皮癌の症候、診断と治療を説明できる。
△3)腎外傷の症候、診断と治療を説明できる。
3 尿路結石:
1)尿路結石の成因、症候、診断と治療を説明できる。
4 尿路感染症
2)尿路の炎症(腎盂腎炎、膀胱炎・前立腺炎・尿道炎)の原因、診断と治療を説明できる。
・キーワード
腎不全,腎移植,透析療法,泌尿器科,尿路男性性器の解剖,泌尿器科腫瘍,尿路結石症,排尿障害

【科目の位置付け】
医学知識の修得全般の中で腎泌尿器の疾患について理解する。

【授業計画】
・授業の方法
講義は2週間の中に授業概要に示した項目に関しての講義を行います.
・日程
毎週水(または木)曜日に症例を提示します,設けられたPBLの時間でグループ別に分かれてディスカッションしてください.金曜日午後に全員参加して症例に関する発表・討論を行います.

【学習の方法】
・受講のあり方
提示された症例に関連する講義の際には積極的に質問してください.
・授業時間外学習へのアドバイス
参考書の1,2には,単元別に学習目標とMinimum Requirementが示されています.これを元に予習してください.
2週の間に行われる講義の資料,ノートを提示された症例とつき合わせて見直してください.

【成績の評価】
・基準
筆記試験,出欠により判定します.
・方法
筆記試験は症例を通して学習すべき内容を中心に判定します.出欠も評価します.

【テキスト・参考書】
1.標準泌尿器科(医学書院),2.New泌尿器科学(南江堂),3.General Urology (Smith著 Lange-Maruzen)

【その他】
・学生へのメッセージ
泌尿器科は腎,尿管,膀胱,前立腺を対象とする外科であるとともに、排尿障害から腎移植に至るまで幅広い領域を扱います。診断から治療までの単科完結型の医療を行うことも少なくありません.現在の泌尿器科では,各領域のスペシャリストをそろえ,これらの各領域において高度の医療を行うことを目指しています.

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