【授業概要】
・テーマ
《中近世に制作された絵巻や絵本を対象に、日本の物語文化の歴史と表現を学び、分析・研究する方法を理解する》 日本のマンガやアニメの源流に位置づけられることが多い絵巻や絵本だが、残念ながらその具体的な様相については、あまり学ぶ機会がないように思われる。本講義では、絵巻や絵本を説話や口承文芸とともに読解し、〈不思議な物語〉を多く生み出した日本の物語文化への理解を深めることを目標とする。
・到達目標
・日本の中近世の絵巻・絵本に関する基礎知識を修得し、日本文化における文学と美術、民俗学の有機的な関わりを理解できるようになる。 ・各自の関心から日本の物語文化についての分析、論述ができるようになる。
・キーワード
日本文学 日本古典文学 日本文化史
【科目の位置付け】
教養科目 文化と社会(文学) 日本文化
【授業計画】
・授業の方法
・プリント資料による解説とパワーポイントによる画像提示で講義を進める。 ・毎回の授業内提出コメントの執筆によって、講義内容の理解を確認する。
・日程
1 ガイダンス―日本の物語文化における絵巻・絵本の位置 2 絵巻・絵本という物語メディア―形式とジャンルの変遷 3 絵巻の〈文法〉と〈方法〉―説話絵巻と王朝物語絵から 4 お伽草子の出現と隆盛―〈不思議な物語〉の宝庫のひらき方 5 人が龍蛇になる物語(1)―『今昔物語集』と『道成寺縁起』の比較を中心に 6 人が龍蛇になる物語(2)―『今昔物語集』と『道成寺縁起』の比較を中心に 7 人が鬼になる物語―『磯崎』を中心に 8 鬼神退治の物語を分析する(1)―『酒呑童子絵巻』をめぐって 9 鬼神退治の物語を分析する(2)―『酒呑童子絵巻』の展開 10 鬼神退治の物語を分析する(3)―『酒呑童子絵巻』の新生 11 近世物語絵への招待―岩佐又兵衛絵巻と伊曾保物語 12 近世の語り物絵本と義経説話群―上方子ども絵本と『義経地獄破り』 13 近世お伽草子の展開―渋川版『一寸法師』をめぐって 14 草双紙の世界―昔話「桃太郎」の〈謎〉 15 まとめと期末試験
【学習の方法】
・受講のあり方
・毎回、講義で取り上げた絵巻・絵本の内容や表現に関して、コメント提出を求めるので、積極的に授業に参加することが必要になる。 ・期末試験で論述を課すので、各授業の復習が重要になる。
・授業時間外学習へのアドバイス
1)図書館で、「日本絵巻大成」(中央公論社)のシリーズや日本古典文学全集『室町物語草子集』(小学館)など関連資料を閲覧する。 2)授業で配布されたプリントを復習し、授業で紹介した参考文献を読む。 3)博物館、美術館、資料館、寺社等に足を運んで、様々な古典籍や美術作品を実見する。
【成績の評価】
・基準
・各回で取り上げる絵巻や絵本の内容や表現を十分に理解しているか(授業内提出コメントの執筆)。 ・講義によって得た基礎知識を適切に応用し、各自の関心に基づいた論述ができるか(期末試験)。以上の2点の基準を中心に成績を評価する。
・方法
・毎回の授業内提出コメント(40%)と期末試験(60%)で総合的に評価する。
【テキスト・参考書】
・【テキスト】資料プリントを配布する。 ・【参考書】網野善彦、大西廣、佐竹昭廣編『いまは昔むかしは今』全5巻(福音館書店、1989~1999年)。このほか参考書、参考文献については随時授業内で紹介する。
【その他】
・学生へのメッセージ
・なぜ人は〈不思議な物語〉を求めるのでしょうか?もしかすると今と同じように、そこには人びとの様々な感情や願いが込められているのかもしれません。現代とは異なる価値観をもつ物語群を、どのように読み解けばよいのでしょうか。既知の物語を新たな角度からみつめなおし、それらを研究するための方法も取り上げます。
・オフィス・アワー
火曜日16:30~17:30 その他事前に連絡をもらえれば調整します。研究室在室時もどうぞ。
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