【授業の目的】
大企業との対比から捉えられる中小企業は、その経営資源の制約から弱い存在と長らく見なされ、政策的支援の対象とされてきました。しかし近年、中小企業はその経営特質から大企業とは異なる強みを発揮することで新産業を創出し、雇用の担い手となっていることも認識されるようになっています。講義の目的は、①中小企業に対する見方(中小企業観)がどのように変化したのかという点から中小企業研究や中小企業政策の潮流について基礎的な知識を得ること、②中小企業観が変化していった理由について、日本経済や産業発展の歩みと重ね合わせながら理解すること、③中小企業を積極的に評価する研究を検討し、中小企業が経済で果たしている役割について理解を深めること、さらに、④人口減少・高齢化といった現代的課題に対して中小企業がどのような役割を担いうるのか、ケーススタディを通じて展望をもつことです。
【授業の到達目標】
この講義を履修した学生は、 (1)中小企業研究や中小企業政策がどのような問題意識で行われてきたのかについて、概ね説明できる。(知識・理解) (2)日本経済や産業の発展に対する中小企業の役割について、積極的に評価する先行研究をふまえて述べることができる。(知識・理解) (3)人口減少・高齢化といった現代的課題に対し、中小企業が果たしうる役割について自分なりの意見を示すことができる。(態度・習慣) (4)身近な中小企業に関心を向けるとともに、中小企業に関する新聞記事などを興味深く読むことができる。(態度・習慣)
【授業概要(キーワード)】
経済成長と中小企業、中小企業観、中小企業政策、地域と中小企業
【科目の位置付け】
カリキュラム・ポリシーとの関係については、「カリキュラム・マップ」を参照し、よく理解したうえで、履修してください。
【授業計画】
・授業の方法
パワーポイントと配布資料を使って講義を行います。中小企業に対して具体的なイメージを持つために、映像資料等を参照することもあります。
・日程
1.オリエンテーション―中小企業の見方 2.中小企業の歴史的展開(1)―近代工業化における中小企業の役割 3.中小企業の歴史的展開(2)―高度成長期の中小企業 4.中小企業の歴史的展開(3)ー産業構造の変容と中小企業 5.中小企業研究の潮流 6.問題型中小企業認識論と貢献型中小企業認識論 7.中小企業をとりまく取引構造 8.国による中小企業政策 9.自治体による中小企業政策 10. 中小企業と産業集積 11. 中小企業の協同組織 12. 地域社会と中小企業 13. 地域金融機関と中小企業 14. 国際化と中小企業 15. まとめと試験
【学習の方法】
・受講のあり方
授業は講義を中心としますが、単に聴くだけでなくメモをとり、授業最後の小レポートで議論すべき内容を考えながら、問題意識をもって授業にのぞんでください。
・授業時間外学習へのアドバイス
(予習のあり方)身近なところで中小企業とかかわる機会は多いので、よく観察しておくと講義への理解が深まります。 (復習のあり方)配布資料やノートを参考に、ミニレポートで出されたテーマにそって知識を再整理しておくといいでしょう。また、新聞やテレビにおいても頻繁に中小企業・ベンチャービジネスの特集が組まれていますので、定期的に目を通してください。
【成績の評価】
・基準
毎回実施するミニレポート(記述式)によって、主体的な参加度、知識の習得度、理解度、汎用的技能の修得度合いについて判定します。期末試験では、授業で得た知識を総合的に理解し、適切に説明できるかどうかを評価します。さらに、ミニレポートや講義で、授業外で得た中小企業に関する知識を活用したり、自分なりの問題意識を発見できたりしていれば、高く評価します。
・方法
期末試験(60%)、小レポート(40%)
【テキスト・参考書】
特定のテキストは使用せず、プリントを配布します。参考書は以下の通りです。中小企業庁編『中小企業白書』各年版(中小企業庁ホームページで閲覧できます)、植田浩史他(2014)『中小企業論・ベンチャー企業論』有斐閣。
【その他】
・学生へのメッセージ
地域を支える中小企業に対する見る目が変わり、身近に感じられるようになるでしょう。
・オフィス・アワー
木曜日10:30~12:00 吉原研究室 ※上記の時間以外でも在室時は質問などに対応します。
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