工芸と文化
 Introduction to Craft Production and Culture
 担当教員:齋藤 学(SAITO Manabu)
 担当教員の所属:地域教育文化学部地域教育文化学科文化創生コース
 開講学年:2年,3年,4年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
優れた工芸作品やプロダクト製品の特徴について,制作された歴史的背景や地域性から理解する。特に,各時代における社会情勢(信仰・政治・経済・科学技術等)と「ものづくり」の関係について論理的に考察する姿勢を身につけることを目的とする。
優れた工芸作品やプロダクト製品の鑑賞(実物の使用・映像視聴)を通して,各時代の造形的・工芸史(デザイン史)的成り立ちについて理論的に概観し,制作者が「ものづくり」に込めた材料・技術・デザインマインドについて解説と議論討議を交え理解を深めていく。

【授業の到達目標】
①:工芸の価値の所在について,時代背景や地域性を捉え論理的に説明することができる。
②:今日の工芸がおかれた状況を捉え,次代の在り様について持論を述べることができる。

【授業概要(キーワード)】
材料,技,道具,風土,工業,工芸,民芸,デザイン,意匠

【科目の位置付け】
工芸およびプロダクトデザイン理論の基礎的学習

【授業計画】
・授業の方法
講義を中心に行い理解を助けるための演習・鑑賞や議論を交えます。また、随時、小レポートを課し、その発表を求めます。
・日程
第1回:オリエンテーション,および今日の日本と世界の工芸・デザイン事情について概説する。(講義)
第2回:工芸・デザイン関連用語の理論的解釈:工芸・工業・民芸・デザイン・図案・意匠・企図について文献調査をもとに考察する。(演習)
第3回:工芸の史的変遷① 古代から中世/長者ヶ原遺跡,正倉院宝物(アジア諸国の工芸)等について概説する。(講義)
第4回:工芸の史的変遷② 中世から近世/法隆寺,薬師寺,唐招提寺等の造作材と技術について概説する。(講義)
第5回:工芸の史的変遷③ 近世から近代/藩政下から維新・国策へのものづくりの変化について概説する。(講義)
第6回:工芸の史的変遷④ 近代から現代(1)/万国博覧会と内国勧業博覧会について概説する。(講義)
第7回:工芸の史的変遷⑤ 近代から現代(2)/デモクラシーと柳宗悦の民藝運動(朝鮮の工芸を含む)について概説する。(講義)
第8回:工芸の史的変遷⑥ 近代から現代(3)/民藝の作家(河井,富本)と人間国宝について概説する。(講義)
第9回:工芸の史的変遷⑦ 現代から次代へ(1)/伝統技術の継承と施策(各工芸展と伝産法)について概説する。(講義)
第10回:工芸の史的変遷⑧ 現代から次代へ(2)/デザインの振興施策と啓蒙運動について概説する。(講義)
第11回:工芸の価値の所在と要件(材料・技・デザインマインド)の関係について考察する。(小テスト・演習)
第12回:伝統工芸と地域産業のデザイン振興① 山形の鋳物・打刃物を鑑賞し考察する。(演習)
第13回:伝統工芸と地域産業のデザイン振興② 山形の家具・木工(漆芸含む)を鑑賞し考察する。(演習)
第14回:伝統工芸と地域産業のデザイン振興③ 山形の染織(テキスタイル)・陶磁・硝子を鑑賞し考察する。(演習)
第15回:工芸(ものづくり)の特徴(状況)と次代の在り方についてレポートを報告する。(演習・討議)
※概説においては各回とも具体的作例を鑑賞し、その鑑賞の留意点について明示しながら講義する。

【学習の方法】
・受講のあり方
進んで「観る」「調べる」意欲が大切です。
・授業時間外学習へのアドバイス
次回の講義に即したキーワードについて、予め調査および関連事業(展覧会等)を取材してもらいます。学期中に1回は発表を課します。各回、関心事やキーワードについて独自の補強を。

【成績の評価】
・基準
①:工芸の価値の所在について,授業で解説した時代背景や地域性の特徴をまとめ,他の参考文献や図版、独自の取材を加えてレポートにまとめることができる。
②:今日の工芸がおかれた状況について,授業で解説した現状や課題をまとめ,他の参考文献や独自の取材を加えて持論をレポートにまとめることができる。
・方法
上記の基準①②を評価の観点として,小レポート(5回程度):50%,期末レポート:50%を総合的に評価する。

【テキスト・参考書】
テキスト:適宜配布
参考書:森仁史『日本<工芸>の近代』吉川弘文館/佐藤道信『日本美術誕生 近代日本の「ことば」と戦略』講談社/西岡常一 著 ,塩野米松 聞き書き『木のいのち木のこころ(天)』草思社 ほか適宜紹介する。

【その他】
・学生へのメッセージ
「工芸」と「工業」はどちらが新しい?「民芸作家」という言葉に矛盾を感じ取れますか?「伝統工芸」と「伝統的工芸」にどんな違いがあるのでしょうか?知っているようで知らない言葉が「工芸」ではないでしょうか。
・オフィス・アワー
随時

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