【授業の目的】
「生きているしくみを分子の目で見る」 何気なく飲んでいる栄養ドリンク剤に記載されているニコチン酸アミドやフラビン,何気なく食べている食べ物に記載されている炭水化物,タンパク質,脂肪,カルシウムイオン,カロリーなど,これらの物質や単位がどうして記載されているのかの意味を考えたことがありますか。考えるためには,生命を維持するしくみ(代謝反応)を考え,これらの物質が,代謝反応のなかでどのような役割を担っているかを考える必要があります。生物の生存と繁殖のしくみは,進化のなかで獲得してきたものです。したがって,生物の生存と繁殖に関わる基本的な物質は,生物の進化ときっても切り離せない関係にあります。すなわち,生物が,どのような環境の中で,生存と繁殖のしくみを獲得してきたかを考える必要があります。 本授業は,環境に依存した生物の進化は,どのような物質が鍵物質となり,どのような化学反応を活用して,生存と繁殖のしくみを獲得してきたかを,鍵物質の化学的性質や基本的な化学反応を考えながら進めます。
【授業の到達目標】
生命を維持する基本的な現象を知るとともに,その現象のしくみは,生体を構成する物質の性質が深く関わっていることを理解し,これらの物質の特性及び生命現象のしくみを“分子のレベル”で論理的に考えることができる。
【授業概要(キーワード)】
生命の伝達,生命の維持,分子の目
【科目の位置付け】
中学校教諭・高等学校教諭一種免許状取得のための科目(教科に関する科目)
【授業計画】
・授業の方法
授業の最初に課題を提示し,その課題を学生と考えていくことを通して,生命現象のしくみの不思議さを実感できるような探究的授業を行う。
・日程
大きく2つの内容,「繁殖のしくみ」と「生存のしくみ」から学修する。 第1回:生命とは(自己増殖系,RNAワールド) 第2回:生命体は,次の世代に「何」を伝えるか(代謝と酵素) 第3回:伝えるためにはどのような仕組みが必要か(分子の認識と基本的な化学結合) 第4回:伝える仕組みに関わる物質と生命体を維持する物質(DNA,RNA,タンパク質) 第5回:伝える仕組みに関わる物質から生命体を維持する物質の合成(セントラルドグマ) 第6回:自己増殖系が繁殖するための構造と構造を構築する物質(閉鎖系,細胞膜,両親媒性,脂肪酸,リン脂質) 第7回:細胞膜の構造と環境適応(脂肪酸の構造) 第8回:細胞膜における物質交換の仕組みと仕組みを構築する物質(タンパク質,輸送,熱力学第2法則) 第9回:細胞の構造維持とその仕組み(恒常性と動物や植物における物質の貯蔵とその役割) 第10回:生体エネルギーとは(ATPとエネルギーの放出) 第11回:ATPの生成の仕組みとそのエネルギー源となる食物(ミトコンドリア,炭水化物と脂肪酸) 第12回:食物から生体エネルギーへの変換の仕組み(酸化と還元,解糖系) 第13回:呼吸と生体エネルギー[酸素の役割や二酸化炭素発生の仕組み(TCA回路,電子伝達系)] 第14回:環境適応と細胞間コミュニケーション(情報伝達の方法) 第15回:環境適応と代謝の変化(細胞質と核) [定期試験]
【学習の方法】
・受講のあり方
点としての「知識」を線や面として活用する「くせ」を身に付けてもらいため,「どうして,そのように考える?」を連発した授業になるので難しいように感じるかもしれないが,出された課題は頑張って考えること。
・授業時間外学習へのアドバイス
系統的な学習になるので,前回の講義内容に目を通してくること。板書事項を羅列したノート整理ではなく,自分で調べて,行間を埋めるようなノート造りをする。とくに,未学修の用語については辞書等で調べておくこと。
【成績の評価】
・基準
「繁殖の仕組み」と「生存の仕組み」を物質のレベルで,適切,論理的に説明できる。
・方法
主として,学期末試験の結果に基づくが,観察・実験のレポートも考慮する。試験における採点基準は解答の正誤だけでなく,解答が理論に基づいて論理的に展開されているかどうかを中心にする。 評価の配点割合は、試験80%、レポート20%とする。
【テキスト・参考書】
[テキスト]特に無い。資料を配布する予定である。その他、授業の中で適宜紹介する。
【その他】
・学生へのメッセージ
生物だけあるいは化学だけを学習してきたという学生は,授業ではじめて耳にする用語については,次の時間まで必ず調べておくこと。
・オフィス・アワー
木曜日:10:30~12:00(研究室),その他については授業の中で連絡する。連絡先:hsuzuki@e.yamagata-u.ac.jp
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