数値弾塑性力学
 Computational Elasto-Plasticity
 担当教員:黒田 充紀(KURODA Mitsutoshi)
 担当教員の所属:大学院理工学研究科(工学系)機械システム工学分野
 開講学年:1年,2年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
塑性加工を利用した工業製品の生産性向上,及び塑性域まで考慮した機械構造の安全設計の高度化に対して、ほとんど唯一のアプローチ法といえるコンピュータ利用を前提とした弾塑性論について講義する.後半では,実際にソフトウェアを用いた解析自習を通して実践的な教育を行う。
数値弾塑性力学は主として2つの分野への応用を目指している。第一に、塑性加工を利用した工業製品の生産性向上である。金属製飲料缶の絞り加工、自動車や航空機のボディーのプレス加工、押し出し引き抜きによる棒材の生産、電子部品のマイクロ加工などはその代表例である。第二に、塑性という材料が本来備えている性質の人命保護・災害防止システムへの応用である。金属の優れた塑性変形能力により衝突時の衝撃を吸収する自動車の安全設計、地震時に橋梁の上部構造の脱落を防ぐ落橋防止機構などはその代表例である。生産系・構造系の開発・設計エンジニアとして、この分野で社会貢献するために最低限必要な数値弾塑性力学の知識と解析スキルを得るのがこの科目の目的である。

【授業の到達目標】
(1)3次元連続体力学を展開するために必要なテンソル代数学の基礎を修得する。
(2)3次元連続体力学の基礎を修得する(釣り合い式、応力・ひずみ、仮想仕事の原理等をテンソル代数ベースで理解する)。
(3)降伏関数、塑性ポテンシャル、塑性流動則を用いた巨視的塑性論の基礎を修得。
(4)非線形の有限要素法の基礎を修得。
(5)実際の非線形有限要素解析の実行方法を修得

【授業概要(キーワード)】
弾塑性論、有限要素法、コンピュータ、シミュレーション、金属材料、塑性加工

【科目の位置付け】
材料力学の延長線上にあり、より一般化された学問である。

【授業計画】
・授業の方法
前半は教室で講義形式、後半の一部は情報センターで弾塑性有限要素解析実習を行う。
90分×15回(商用ソフトウェアを用いた演習有り).
・日程
第1週 授業概要の説明
[予習] 線形代数の基礎について復習しておく.
[復習] 連続体力学で用いるベクトルについてその概念を把握しておく.

第2週 テンソル代数学の基礎1:内積,テンソル積,2重積など
[予習] オリジナルテキストのベクトル・テンソル解析について大枠を捉えておく.
[復習] ベクトル基底の座標変換等の演算の練習

第3週 テンソル代数学の基礎2:座標変換と剛体回転,テンソル量の空間勾配
[予習] オリジナルテキストのベクトル・テンソル解析について微積分を含めて大枠を捉えておく.
[復習] ベクトル基底の座標変換とテンソルの座標変換の練習(レポート)

第4週 3次元連続体力学の基礎1:変形勾配,速度勾配,真応力,公称応力
[予習] オリジナルテキストの変形勾配,速度勾配,真応力,公称応力について大枠を捉えておく.
[復習] テンソルの微分演算子の使用に慣れるよう演習.真応力と公称応力の関係について課題学習(レポート)

第5週 3次元連続体力学の基礎2:共回転微分と客観性
[予習] オリジナルテキストの共回転微分について大枠を捉えておく.
[復習] 共回転微分を用いた速度型の応力速度ーひずみ速度関係について理解を深める.

第6週 弾塑性変形の概念,降伏関数,相当応力
[予習] オリジナルテキストのひずみ速度の弾塑性分解,降伏関数,相当応力について大枠を捉えておく.
[復習] 降伏関数や相当応力というキーとなる量について理解を深める.

第7週 塑性流動則を用いた巨視的塑性論の基礎
[予習] オリジナルテキストの塑性流動則について大枠を捉えておく.
[復習] 塑性流動則について理解を深める.

第8週 ひずみ速度効果,異方性の考慮
[予習] オリジナルテキストのひずみ速度効果,異方性の考慮について大枠を捉えておく.
[復習] ひずみ速度効果,異方性の考慮について理解を深める.

第9週 非線形の有限要素法の基礎1:Update Lagrange型の仮想仕事の原理
[予習] 微小変形の仮想仕事の原理を再確認しておく.
[復習] Update Lagrange型の仮想仕事の原理と微小変形の仮想仕事の原理の差異について考察する.

第10週 非線形の有限要素法の基礎2:実際の非線形解析のスキーム
[予習] 微小変形の有限要素法の定式化を確認しておく.
[復習] Update Lagrange型と微小変形論の有限要素法定式化の違いについて考察する.

第11週 有限要素法ソフトを用いた弾塑性変形解析実習1:引張り試験にけるくびれ解析の問題設定
[予習] 情報センターのログイン方法(ID等)を確認し,動作確認しておく.山形大学工学部機械システム工学科から進学した学生は学部3年時の「引張試験」のデータが残っていれば,それを持参すると良い(ない場合には,教員側から代替データを提供する).
[復習] 汎用構造解析ソフト ADINAの操作方法を確認しておく.また,微小変形解析との差異を確認しておく.

第13週 有限要素法ソフトを用いた弾塑性変形解析実習2:解析の実行と結果の評価
[予習] 情報センターのログイン方法(ID等)を確認し,動作確認しておく.山形大学工学部機械システム工学科から進学した学生は学部3年時の「引張試験」のデータが残っていれば,それを持参すると良い(ない場合には,教員側から代替データを提供する).
[復習] 汎用構造解析ソフト ADINAの操作方法を確認しておく.また,微小変形解析との差異を確認しておく.

第14週 発展的話題「塑性学と材料科学の融合について」
[予習] 第1週から第13週までの内容を再確認しておく.
[復習] 第1週から第14週までの内容を再確認しておく.

第15週 試験

[予習] 第1週から第14週までの内容.
[復習] 試験問題を完答すること.

【学習の方法】
・受講のあり方
この科目で扱う学問の応用範囲の広さを認識ながら受講してほしい。
・授業時間外学習へのアドバイス
特に、テンソル代数については自分で解いてみないと感覚がつかめないので、資料を見て予習が必要。
特に、テンソル代数については自分で解いてみないと感覚がつかめないので、資料とノートを見て復習が必要

【成績の評価】
・基準
レポート4回程度(60%)、期末試験(40%)のうち合計で60%以上で単位認定。
・方法
レポート4回程度(60%)、期末試験(40%)のうち合計で60%以上で単位認定。

【テキスト・参考書】
担当者作成の資料(PDF)。機械システム工学分野 黒田研究室のHPからダウンロード可。
久田 俊明 野口 裕久:非線形有限要素法の基礎と応用 (丸善 1996/1)
久田 俊明:非線形有限要素法のためのテンソル解析の基礎 (丸善 1992/11)

【その他】
・学生へのメッセージ
学部のレベルの教育では、力学は1次元、2次元で記述されることが多かったが、実際の開発・設計の最前線ではもちろん3次元を前提に理論が展開されていく。そのとき、3次元物体の力学を効率的かつ簡単に捉えることができる最強のツールがテンソル代数学である。ぜひ、これを克服して3次元への展開に伴う困難を取り除いてほしい。
・オフィス・アワー
木曜日の16:00?17:30

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