【授業の目的】
I. 講義 ・生体に投与された薬物は作用部位に到達した後、一部の例外を除き薬物受容体に結合し、その作用を発揮する。そして、その後体内から排泄され る。薬物療法の基本について理解するために、薬物動態学・薬力学の知識を得ることを目的とする。 ・安全で効果的な薬物療法について理解するために、細胞機能調節に関与する薬物受容体、および薬物受容体刺激を介する細胞内情報伝達過程の生 理学的機序・生化学的機序に関する知識を得ることを目的とする。 ・臨床の場で各疾患に対して使用される様々な薬物の分子~個体レベルにおける作用機序を理解することを目的とする。 ・最新の研究成果に触れ、医学研究の現状について理解することを目的とする。
II. 実習 ・動物から採取した生体組織を用いて、作動薬の作用および拮抗薬の影響を観察する。それによって、薬物作用の特異性ならびに薬物の濃度反応曲 線について理解を深めることを目的とする。 ・薬物代謝物の尿中への排泄量と尿pHを測定する。それらの関係を検討することによって、薬物動態学についての理解を深めることを目的とする。
【授業の到達目標】
I. 講義 ①薬物の受容体結合と薬理作用との定量的関連性について説明できる。 ②計数的用量反応関係について理解し、有効量・中毒量・致死量の関係を説明できる。 ③完全活性薬・部分活性薬・拮抗薬および分子標的薬を説明できる。 ④薬物の吸収・分布・代謝・排泄を説明できる。 ⑤薬物の生体膜通過ならびにそれに影響する因子について説明できる。 ⑥薬物投与方法を列挙し、それぞれの薬物動態を説明できる。 ⑦薬物および生理活性物質の作用と生体内情報伝達系について説明できる。 ⑧各種疾患に用いられる薬物の作用機序を理解し、説明できる。 ⑨各種疾患に用いられる薬物の副作用を述べることができる。 ⑩プラセボ効果について説明できる。 ⑪基礎医学領域での研究の意義を理解し、未知の病態や治療への興味・関心を維持できる。 ⑫医学・医療において既存の知識・技能では対応できない問題点を抽出できる。 II. 実習 ①実習で使用する薬物ならびに類縁薬物の作用機序について、説明できる。 ②薬物の濃度反応曲線を描き、その決定因子を説明できる。 ③薬物の吸収・分布・代謝・排泄に影響を与える因子について説明できる。 ④実習の目的・方法・結果について解析および考察をし、適切に発表できる。 ⑤講義で得た知識を実習の場で確認し、自己研鑽を行なう態度を身につける。
【授業概要(キーワード)】
薬物療法、薬力学、薬物動態学
【科目の位置付け】
臨床における薬物療法のもととなる薬理学の基礎について学ぶ。
<山形大学医学部医学科教育到達目標(コンピテンシー)> 2.医学知識と問題対応能力(基礎医学) 8.科学的探求(リサーチマインド、課題発見と問題解決) 9.生涯にわたって共に学ぶ姿勢(自己研鑽)
<医学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂版)> C-3-3)生体と薬物、学修目標 (1) 薬理作用の基本 ①-③、(2) 薬物の動態 ①-③、(3) 薬物の評価 ① F-2-8)薬物治療の基本原理、学修目標 ①、④、⑥−⑫、⑭
【授業計画】
・授業の方法
講義:資料を配布し、パワーポイントを用いた講義を行う。講義日程・内容は以下の通りである。
・日程
講義時間 平成30年 月曜日 8:30~10:10、10:20~12:00 9月 3日 薬理学とは、薬物の基本的性質 9月10日 薬力学、薬物動態学 10月 1日 自律神経薬理学総論 10月22日 コリン作用薬・拮抗薬 10月29日 アドレナリン作用薬・拮抗薬 11月 5日 循環器系の薬理学 ①② 11月12日 循環器系の薬理学 ③④ 11月19日 循環器系の薬理学 ⑤⑥ 11月26日 特別講義 抗炎症薬 富山大学 服部裕一 教授
講義時間 平成31年 月曜日・水曜日 10:20~12:00、13:00~14:40 1月16日 中枢神経系の薬理学 ①② 1月21日 中枢神経系の薬理学 ③④ 1月23日 特別講義 心臓の興奮性 大分大学 小野克重 教授 1月28日 特別講義 カルシウムによる細胞機能制御 日本大学 飯野正光 教授 1月30日 中枢神経系の薬理学 ⑤⑥ 2月 4日 呼吸器系の薬理学、消化器系の薬理学 2月 6日 抗悪性腫瘍薬
実習:内容・日程は以下のとおりである。 1.薬物・受容体反応の特異性 モルモット盲腸紐を用いて、自律神経伝達物質の受容体に対する作動薬・拮抗薬の作用を検討する。 2.薬物の排泄 学生諸君がアスピリン(常用量)を服用し、その代謝物の尿中への排泄に及ぼす尿pHの影響を検討する。 平成30年12月3日(月)、5日(水)、6日(木)、10日(月)、12日(水)13日(木)
【学習の方法】
・受講のあり方
よく考え、時間内に講義内容を理解するように努める。講義時間を無駄にしない。 実習においては、班員と協力して積極的な態度で行なうことが必要である。講義で得られた知識を活かし、測定したデータの意味をしっかりと理 解するように努める。
・授業時間外学習へのアドバイス
講義項目について教科書に目を通し、自分なりに理解できる点・出来ない点を明確にしておく。 理解が不十分なものを残したまま次の講義に臨まないようにする。 実習書を良く読み、どのような目的で実習を行なうのか理解した状態で実習に臨む。
【成績の評価】
・基準
薬力学および薬物動態学の基本的な事項を適切に説明できることを合格の基準とする。 各種疾患に用いられる薬物の作用機序ならびに副作用について適切に説明できることを合格の基準とする。 班員と協力して実習を実施することができたかどうかを合格の基準とする。
・方法
講義(特別講義を含む)および実習の内容に関しての筆記試験を行う。また、講義および実習に臨む態度、さらに実習のレポート内容も評価の対 象とする。
【テキスト・参考書】
テキストを一冊所有することを勧める。薬理学の知識は医師として働く上で、将来も日常的に必要となるものである。特に教科書は指定しないので、自分に合ったものを選んでもらいたい。 1) 標準薬理学 第7版(医学書院) 2) NEW薬理学 第6版(南江堂) 3) 医科薬理学 第4版(南山堂) 4) Bertram G Katzung (ed): Basic & Clinical Pharmacology, 13th ed., Lange Medical Books, McGraw-Hill 5) Brunton, Chabner, Knollman (ed): Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 12th ed., McGraw-Hill 6) Principles of Pharmacology: The Physiologic Basis of Drug Therapy, 4th ed., Lippincott Williams & Wilkins 7) Harvey, Clark, Finkel, Rey (ed): Lippincott's Illustrated Reviews: Pharmacology, 5th ed., Lippincott Williams & Wilkins
【その他】
・学生へのメッセージ
医学部学生のほとんどが将来臨床医として薬物療法を行うことになる。そのため、薬理作用の基礎および薬物の体内動態を理解することは不可欠である。個々の薬物の作用よりも、薬理学における一般的知識の基礎を重視する。薬理学の基礎的な考え方を学ぶことは臨床医学における適切な薬物療法の考え方を身につける上で極めて大切なことである。
・オフィス・アワー
特に設けていない。随時対応可能である。
<山形大学で教えていること> コアカリキュラムをカバーする上記の内容に加え、細胞の活動(機能)に極めて重要な役割を演じているイオンチャネルについての詳細な講義を行っている。また、神経変性疾患の原因・治療についての最新の研究内容を紹介している。
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