【授業の目的】
地形,気候,植生などをとおして自然景観を読み取ることをめざす.そして,人類が自然景観を如何に読み取りそれを生活に生かしてきたかを具体例とともに理解することをめざす.さらに,自然景観を読み取ることで災害を如何に回避するかを学ぶことで,持続可能で安全安心社会の形成に寄与できることを学ぶ.
【授業の到達目標】
1.地理学が目指す自然と人間活動の関係解明について,身近ではあるものの意識を持たなければ混沌としてその本質に迫れない自然景観をの構造を読み取るスキルを獲得できる. 2.自然景観を形成する因子,構成する諸要素に関する基礎知識を学び,要素ごとの景観的特徴を読み取り,さらにそれらを再統合してある地域の総観として自然景観の特徴と成立過程を学ぶことができる. 3.自然景観の成立過程や自然景観の特性を如何に人類が読み取り,それらに対処して活動の場を形成してきたか,あるいは誤った景観分析が災害を引き起こしているかを学ぶことで,安全安心な社会形成にも貢献できる.
【授業概要(キーワード)】
自然環境,地形,植生,気候,伝統的生業活動,自然景観,災害回避
【科目の位置付け】
持続可能な社会形成に向けて学際的に広い視野を持つ人材養成が必要とされる現代,本授業を単に社会科の科目として位置づけするより,人間社会の存立する場所の理解のため,自然科学的要素をもつ境界領域に位置する科目として自然地理学があることを理解して欲しい.
【授業計画】
・授業の方法
画像・映像資料を用いた講義形式と地図資料の読み取りを目指した実習形式の授業でおこなう.
・日程
授業計画 第1回:地理学と何か,地理学は何を明らかにしてきたかを,特に自然地理学分野の研究動向から述べる. 第2回:自然景観の基層構造としての地形を読み取るための地形図について論述する. 第3回:自然景観の基層構造としての地形を表現する地形図を実際に作る手法を演習形式で学ぶ. 第4回:地表を構成する地形面の定義や意味および地形面区分のための地形界線について論述する, 第5回:地形面区分のためのさまざまな地形界線抽出を演習形式で行うことで,地表がさまざまな地形面から構成されていることを理解する. 第6回:地表を構成する地形種について形態的特徴ならびに形成プロセスを論述し,地表がさまざまな環境下で形成されてきたことを述べる. 第7回:地形図を用いて東京,大阪,仙台,山形,広島などの日本の主要地域がどのような地形面から構成されているか,そしてそれらがどのようなプロセスで形成されたかを演習形式で理解する. 第8回:自然景観を形成する気候環境について基本的な大気大循環の概念を論述する. 第9回:地球規模での気候変化が地形形成プロセスにも影響し自然景観が数千年から数万年の時間スケールで変化してきたことを論述する. 第10回:自然景観の重要な構成要素としての植生,特に日本の植生帯について論述する. 第11回:自然景観が,地殻変動や気候変化の重合現象として形成された地形を植生が覆うことで形成されて来たことを世界自然遺産・白神山地を例に論述する. 第12回:白神山地における自然林生産物の伝統的利用形態を紹介し,そこでの自然景観と人間活動について論述する. 第13回:関東大震災,阪神淡路大震災,中越地震,岩手宮城内陸地震,東日本大震災などの地震災害を自然景観学的に論考する. 第14回:自然景観を読み解くことで災害回避を容易にすることを論述し,安心安全社会形成への貢献について論ずる. 第15回:自然景観と人間活動について総括し,持続可能な安心安全社会における自然地理学の果たす役割について論述する.
【学習の方法】
・受講のあり方
身近な景観の形成過程に関心を持つことで自身の生活の場に対する理解を深め,それが安全な暮らしにつながることを学んでほしい.
・授業時間外学習へのアドバイス
地図を生活の中に持ち込んで地球環境問題などの発生場を抑えておくようにしてほしい. 特にないが,普段からメディア報道をとおして自然景観に関心を持って接してほしい.
【成績の評価】
・基準
・出席を前提として,出席が成績評価に連動することはないものとする. ・地形の形成と地形面の理解について演習形式の課題提出を通して判定し成績評価の一部とする. ・自然景観の形成と人間活動に関する試験を行いその評点を主たる成績評価とする.
・方法
授業時の課題(20%)と定期テスト(80%)の評定を合算し,その得点率が60%を越えたものを合格とする.
【テキスト・参考書】
教科書は特に指定しない. 資料を授業時に配付あるいは,WebClassからダウンロードして印刷して持参.
参考書 貝塚爽平他『写真と図で見る地形学』(東大出版), 鈴木隆介『建設技術者のための地形図読図入門』(古今書院)
【その他】
・学生へのメッセージ
高校で使った地図帳を用意して下さい. 山形や周辺地域の景観に関心を持って読み解くようになってほしい.
・オフィス・アワー
ウィークデイの夕方
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