【授業の目的】
テーマは結婚の表象。 フランスの近代文学の大半は、恋愛をテーマにしています。この講義で注目するのは、19世紀の小説で結婚(生活)がどのように描かれているかです。というのも、作中で愛のある結婚が称えられることは稀で、夫婦間の倦怠や家庭内で抑圧される女性、果ては不倫など、結婚がもたらす不幸な側面ばかりが強調されているからです。「恋愛大国」フランスの作家たちは、物語をとおして、大衆や社会に、結婚制度のいかなる問題点を提起しようとしていたのでしょうか。これについて、小説のみならずその映像化作品も参照しながら考えてみましょう。
【授業の到達目標】
学生はこの講義を履修することで、 1. フランスの近代文学に関する基礎知識を獲得し、説明できるようになる。 2. 小説や映画での結婚の表象をとおして、フランス近代社会の価値観を理解できる。
【授業概要(キーワード)】
映画、恋愛心理小説、結婚制度、西欧近代社会、大衆、姦通小説、古典の教養
【科目の位置付け】
カリキュラム・ポリシーとの関係については、「カリキュラム・マップ」を参照し、よく理解した上で履修してください。
【授業計画】
・授業の方法
本講義で扱う名作は多くが映画化されています。それらの映像化された作品も視聴します。またゲストスピーカーによる映画の解説を聞くことがあります。 基本的には、資料・文献を豊富に紹介しながら進めます。抜粋テクストを読んだりすることで、対象の総合的な理解に努めます。受講生からの質問・意見票に対する応答の時間も作ります。
・日程
初回の導入以降、授業では以下を事例として扱います(取りあげる作家はユゴー、バルザック、スタンダール、サンド、フローベール、ゾラ、モーパッサンなどです)。
1. イントロダクション 2. ロマン主義における結婚1 3. ロマン主義における結婚2 4. レアリスムにおける結婚1 5. レアリスムにおける結婚2 6. 自然主義における結婚 7. まとめ
※ 理解度、受講者の関心に応じて一部内容・順序を変更することがあります。
【学習の方法】
・受講のあり方
WebClassで配付される資料を印刷して、重要事項をノートしてください。授業時間前後やオフィス・アワーでの質問も歓迎します。授業中の睡眠学習や瞑想はむろん厳禁(欠席とみなします)。 フランス語の知識はとくに必要としませんが、フランスの事象を扱うため、フランス語を履修していれば理解はより深まるはずです。
・授業時間外学習へのアドバイス
授業で取りあげる作品をなるべく読んできてください。ほとんどが岩波文庫、新潮文庫や光文社古典新訳文庫で読めます。分かりやすい説明を心がけますが、もしよく分からなかった場合は研究室に質問しに来てください。
【成績の評価】
・基準
到達目標に掲げた2つの達成度に関しては、期末レポートで判断します。1に関しては、自分の言葉で説明できているかを見ます。2については、授業で学んだアプローチ法が身に付いているかを見ます。参加点と期末レポートの点数をあわせ、規定点に達した者を合格とします。
・方法
授業への参加度、意見・感想、学期末提出のレポートの3つに基づき総合的に評価します。 レポートの質は、(1)授業内容を理解できているか、(2)関連する文献を読み込んでいるか、(3)説得性のある考察ができているか、の3点から判断します。
【テキスト・参考書】
概説としては以下のものが参考になります。この中から1~2冊は読みましょう。
(1)東浦弘樹『フランス恋愛文学をたのしむ』世界思想社(2012年) (2)野崎歓『フランス文学と愛』講談社現代新書(2013年) (3)鹿島茂『悪女入門 ファム・ファタル恋愛論』講談社現代新書(2003年) (4)小倉孝誠『恋するフランス文学』慶應義塾大学出版会(2012年) (5)工藤庸子『フランス恋愛小説論』岩波新書(1998年)
その他、作家が書いた恋愛論や結婚論(スタンダール『恋愛論』やバルザック『結婚の生理学』など)を含む一次文献は、WebClassで示します。
【その他】
・学生へのメッセージ
いわゆる「文学・映画好き」以外の学生にも聞いていて楽しい、開かれた授業を目指します。 普段本を読んだり映画を観たりしない人は、この機会にフランス芸術の名作に触れてみましょう。学生時代に古典を読み教養を身につけておくと、社会に出たあと必ず役に立ちます。 ほかにも、外国の価値観を知ることで自己を相対化したいと思う人は、ぜひ履修してください。
・オフィス・アワー
初回の授業で指示します(研究室は人文社会科学部棟3号館6階)。 メールアドレス:y.goda@human.kj.yamagata-u.ac.jp
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