【授業の目的】
本講義では、量子多体系を記述する数学的方法から出発して、相互作用する量子ビット及び、磁性や超伝導発現の舞台となる多体電子系を取り扱うための理論手法を学び、実習を通じて、量子多体問題が内包する巨大な自由度を扱うための基礎的な数値計算手法を身につける。
【授業の到達目標】
1. 量子多体問題の数学的記述法である第2量子化を理解し、第1量子化との対応及び固体中の電子状態をハミルトニアン演算子で記述する方法を身につける。2. 量子多体問題を解くための理論手法を俯瞰し、困難と応用例について理解する。3. 数理的背景の学習と数値実習を通じて、基礎的な手法である厳密対角化法とその活用法を身につける。
【授業概要(キーワード)】
固体物理学、量子統計力学、固有値問題、数値計算、磁性
【科目の位置付け】
量子多体問題は、固体中の電子や量子ビット間のエンタングルメントを始めとして、自然科学研究の様々な場面に現れ、理論物理学にとどまらず計算機を用いた計算科学の主要な研究対象の一つともなっている。そのため、量子多体問題の研究には学際的な側面があり、年々その傾向が強くなっている。本講義は、近年の研究動向を反映し、量子統計力学と応用数学、計算機科学、さらには機械学習の成果を含む学際的な科目となっている。
【授業計画】
・授業の方法
量子多体問題を記述し解くための数理的手法について座学と実習で学びながら、オープンソース・アプリケーションを用いた数値実習を課す。
・日程
1. 物理学における量子多体問題 2. 第2量子化: 演算子とケット・ベクトルの演算 3. 多体電子系のハミルトニアン演算子 4. 量子多体問題の理論手法概要 5. 基礎的な理論手法である数値厳密対角化法の導入 6. 数値厳密対角化法に関わる量子統計力学と応用数理手法 7. 数値計算実習の準備: オープンソース・アプリケーションの紹介 8. 数値計算実習とまとめ
【学習の方法】
・受講のあり方
量子力学および固体物理学の基礎を履修していることが必要。最終日は実習のためにノートPCを持参すること。
・授業時間外学習へのアドバイス
講義後の実習と計算機実習へ積極的に取り組んでください。
【成績の評価】
・基準
1. ハミルトニアン演算子とケット・ベクトルの演算について理解していること、2. 必要に応じて量子多体 問題の解法を選ぶための基礎的な知識を身につけていること、及び3. 基礎的な解法の一つである数値厳密対角化法の基礎と利用法を身につけていること、以上の3点を合格の基準とする。
・方法
レポート提出により成績を評価する。
【テキスト・参考書】
・参考書:オープンソース・アプリケーションHΦのマニュアル及び関連するドキュメント http://issp-center-dev.github.io/HPhi/index_en.html
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