【授業の目的】
生物個体の表現型はゲノムに刻まれた情報にしたがって発現するが,ゲノムに生じた変異,組換えによって大きく変化する。また,集団内の個体に遺伝的変異が集積されると,集団の遺伝的構造が大きく変化し,集団の進化が生じる。本講義では,具体的な生物の研究事例を交えながら,最新の解析手法,知見を学習することを目的とする。
【授業の到達目標】
1.生物の表現型を支配するゲノム情報,ゲノムに生じる突然変異と組換えの分子機構,および集団の遺伝的変異とその変動機構について理解できる。 2.上記の解析手法の原理を正しく理解し,様々な解析手法を実際に使うことができる。 3.遺伝の現象を分子レベルで理解し、論理的に説明できる。
【授業概要(キーワード)】
ゲノム重複・遺伝子重複,遺伝子オントロジー,エキソン重複・エキソンシャッフリング,中立的変異・自然選択的変異,HWE平衡,適応度,ボトルネック,血縁度
【科目の位置付け】
理学系大学院生として必要なゲノムと遺伝現象の分子機構、生物集団における遺伝的変異とその変動機構に関する専門知識を修得する。
【授業計画】
・授業の方法
事前に資料を提示し、パワーポイント等の視聴覚機材を使用しながら解説する。
・日程
1)ゲノム多様性の解析手法 2)ゲノム多様性に基づく量的形質の解析手法 3)ゲノムから見た組換えの分子機構 4)ゲノムにおける中立的変異と自然選択的変異 5)ゲノム再編成の分子機構 6)下等無脊椎動物におけるゲノム再編成と進化 7)ゲノムから見た実験動物の起源と先端的研究への利用 8)ゲノムから見たヒトの起源と進化(1~8回担当:半澤) 9)集団遺伝学の基礎1:HWE 10)集団遺伝学の基礎2:異なる適応度での遺伝子頻度の変動 11)集団遺伝学の基礎3:Fst,ボトルネック 12)集団遺伝学に関する解析手法 13)血縁度と近交係数の原理1:血縁度 14)血縁度と近交係数の原理2:親子判定 15)血縁度と近交係数に関する解析手法(9~15回担当:玉手)
【学習の方法】
・受講のあり方
理解できなかった内容は質問し、自分でも調べて理解する。学んだことを各自の研究にも生かすよう工夫すること。
・授業時間外学習へのアドバイス
講義に関連する専門書や論文に目を通し、インターネットで調べてみること。
【成績の評価】
・基準
専門用語を正確に理解している。遺伝の現象、生物集団の遺伝的多様性と変動機構を理解し、その解析手法を身につけている。
・方法
演習で各解析技術を理解し、データ処理を正しく行えることを基準50点で評価する。また、レポートで必要な概念を正しく理解し、説明できていることを基準50点で評価する。これらの合計点で合格判定する。
【テキスト・参考書】
テキストは使用しない。下記の参考書を参照すること。 ・ニコラス・バートン.進化・分子・個体・生態系.メディカルサイエンスインターナショナル. ・Strachan, T. and Read A. P.ヒトの分子遺伝学.メディカルサイエンスインターナショナル.
【その他】
・学生へのメッセージ
学部で講義した遺伝現象の基礎知識をもとに、さらに発展的にゲノム科学、生物集団の遺伝的多様性とその変動機構について、最新の研究成果を交えて講義します。
・オフィス・アワー
講義の際に伝える。
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