人体物質代謝学
 Human Metabolism
 担当教員:藤井 順逸(FUJII Junichi)
 担当教員の所属:医学部医学科
 開講学年:1年  開講学期:通年  単位数:4単位  開講形態:講義・実習
 開講対象:医学部医学科  科目区分:専門教育・必修 
【授業の目的】
[講義]
細胞の基本的なしくみと特徴について理解したうえで、物質代謝・エネルギー代謝に関わる遺伝子とその発現・酵素・生化学反応などについて体系的に理解する。
[実習]
講義で学んだ知識を、実験操作を通じて確認し、得られた結果をまとめて考察する機会とする。

【授業の到達目標】
・膜のイオンチャネル・ポンプによる細胞内外のイオン勾配の形成を理解し、静止電位と活動電位の形成と役割を概説できる。
・アクチンフィラメント系や微小管などの細胞骨格と役割を説明できる。
・酵素の機能と補酵素の役割ならびに調節機構を説明できる。
・細胞の分裂・分化・死(アポトーシスとネクローシス)を概説できる。
・解糖・五炭糖リン酸回路の役割を説明できる。
・クエン酸回路・電子伝達系と酸化的リン酸化を説明できる。
・糖新生とグリコーゲンの合成・分解を説明できる。
・脂質の合成・分解とリポタンパクの役割を説明できる。
・タンパク質の構造とその合成・分解過程を説明できる。
・アミノ酸の代謝と尿素回路の役割を説明できる。
・ヘム・ポルフィリンの役割と合成・異化の過程を説明できる。
・ヌクレオチドの合成・異化・再利用経路を細胞分裂との関連で説明できる。
・活性酸素・フリーラジカルの発生と酸化ストレスとの関連ならびに主要な抗酸化系を説明できる。
・ビタミンならびに微量元素の種類と作用を説明できる。
・細胞間および細胞内の情報伝達経路を理解し、概略を説明できる。
・食事の役割を栄養素の摂取とエネルギー代謝の観点から理解し、主要臓器における各種栄養素の代謝経路の相違点と特徴を説明できる。

【授業概要(キーワード)】
細胞膜、細胞骨格と細胞運動、情報伝達の基本、生体物質の代謝

【科目の位置付け】
専門科目の中でも最初に修得しておくべき生命科学に共通する基本科目として学ぶ。
<山形大学医学部医学科教育到達目標(コンピテンシー)>
2. 医学知識と問題対応能力(基礎医学)
8. 科学的探究(リサーチマインド、研究成果の発表能力)
9. 生涯にわたって共に学ぶ姿勢(生涯学習、自己研鑽、共同学習)

<医学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂版)>
C-2-1)-(1) ①-④
C-2-1)-(2) ①-④
C-2-3)-(1) ①-③
C-2-5) ①-⑯

【授業計画】
・授業の方法
[講義]
主にスライドを用いて行ない、毎回資料を配布する。
成績の評価のためではなく、履修者が自分の理解度を確認できるように、定期的に小テストを行なう。
[実習]
生化学分子生物学講座・遺伝子実験センター・生化学解析センター・動物実験センターと合同で行なう。5つのグループに分かれて5種類の内容をローテーションで行う実習に加えて、1回はコンピューターを用いた実習を全員で行なう。
・日程
[講義]
・ 4月10日 細胞の概要
・ 4月17日 消化・吸収
・ 4月24日 アミノ酸
・ 5月 8日 タンパク質構造と機能
・ 5月15日 糖の構造と機能
・ 5月22日 解糖反応
・ 5月23日 TCAサイクル、電子伝達系
・ 5月29日 グリコーゲン代謝
・ 5月30日 脂質の構造と機能、脂質の分解
・ 6月 5日 脂質の合成
・ 6月 6日 タンパク質構造と酵素反応、酵素反応の調節
・ 6月12日 ヘムの合成・分解
・ 6月13日 生体金属、タンパク質合成
・ 6月19日 タンパク質の選別輸送
・ 6月20日 アミノ酸代謝I、II
・ 6月26日 ビタミン・補酵素  
・ 6月27日 実験動物の取扱I、II
・ 7月 3日 タンパク質分解
・ 7月 4日 人体物質代謝学 試験(前半)
・ 7月10日 細胞接着
・ 7月11日 細胞骨格と運動、細胞小器官I  
・ 7月17日 細胞小器官II
・ 7月18日 細胞周期と細胞分裂 核酸の生合成と分解 
・ 7月24日 DNAの複製
・ 7月25日 DNAの傷害と修復、RNAの機能
・ 7月31日 細胞間情報伝達
・ 8月 1日 細胞内情報伝達I、II
・10月 2日 主要臓器の代謝I、実習説明・レポートの書き方
・10月 3日 細胞老化と死、オミクス解析
・10月10日 活性酸素とレドックス反応、癌細胞の特性
・10月17日 放射線と生物I、II
・10月24日 人体物質代謝学 試験(後半)
・10月31日 人体物質代謝学 再試験(前半)
・11月 7日 人体物質代謝学 再試験(後半)

[実習]
・ゲノム解析学の実習と共同で、バイオインフォマティクス、遺伝子のクローニング、遺伝子多型の解析、酵素、タンパク質、動物実験、の6種類の実習を小グループに分かれて行なう。
・10月 2日 実習書の配布・説明
・10月 3日 1回目の実習
・10月 9日、10月10日 2回目の実習
・10月16日、10月17日 3回目の実習
・10月23日、10月24日 4回目の実習
・10月30日、10月31日 5回目の実習
・11月 6日、11月 7日 6回目の実習

【学習の方法】
・受講のあり方
講義については、きちんと出席し、単なる暗記ではなく、総合的・論理的に理解すること。
積極的に実習を行い、得られた結果について考察すること。
・授業時間外学習へのアドバイス
・講義ごとに大事なスライドについてはプリントを配布するので、整理して活用すること。
・授業では重要なポイントを中心に説明するが、それだけでは不十分なので、教科書や参考書を活用して理解を深めること。

【成績の評価】
・基準
講義内容に関する試験に合格し、実習を修了した者にだけ単位を認定する。
[講義]
・日程に示すように、内容全体を前半と後半の2回に分けて試験を行ない、いずれについても合格点をとる必要がある。
・前半と後半の試験で60点に満たない者については、再試験をそれぞれ一度ずつ行ない、60点以上を合格とする。
[実習]
・基本的に遅刻・早退・欠席は認めず、病欠等の場合も含めて別の日にちに補講を行なう。
・出席して実習を行なった者が提出する実習レポートで評価する。
・方法
講義に関連した試験と実習を合わせて評価を行う。
[講義]
・試験は、筆記(マークシート)にて行なう。
・理解度をみるために小テストを講義期間中に何度か行うが、試験の結果には反映しない。
[実習]
・出席とレポートの提出をもって受講修了と認める。

【テキスト・参考書】
[講義]
特定の教科書を指定しない。以下の生化学・分子生物学に関する教科書・参考書に加えて授業中に適宜紹介する。
「ハ―パ―生化学」(丸善)、「分子細胞生物学」(東京化学同人)、「シンプル生化学」(南江堂)、などの最新版
[実習]
実習直前に行なう説明会で実習所を配布し、内容の説明を行なう。

【その他】
・学生へのメッセージ
代謝を分子レベルで理解しておくことは、専門を学ぶ上だけでなく健康な生活をおくる上でも役立つので、日ごろの生活とりわけ食事や運動時に代謝がどのようになっているか考えることを勧める。
・オフィス・アワー
木曜日の授業終了後(16:30-17:30)

<山形大学で教えていること>
臓器ごとの代謝の違い、癌細胞の代謝の特性、放射線とその生物学的影響についての基礎的な事項。

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