【授業の目的】
「闘う女性文学」 文学は芸術の一分野でもありますが(ですので,寝っ転がって読んでも,楽しみながら,または笑いながら読んでもよいわけです),社会に存在するさまざまな問題に対して意見を述べ,場合によっては闘いを挑む手段でもあります。その観点から考えてみると,これまで現代社会において活躍してきた女性作家たちはみな,少なくとも2つの敵を相手に闘わなければならなかったと言えます。1つは,彼女たちが関心を向ける問題そのもの,もう一つはそれを生み出し,維持しようとする男性優位社会です。たしかにこのことは,女性作家たちにとって,大きなハンディキャップだったかもしれません。しかしその分,ドイツ文学史上に名を残す偉大な作家たちが数多く誕生したことも事実です(下で挙げているイェリネックとミュラーはノーベル文学賞を受賞しています)。本授業では、適宜写真資料・映像資料も参照しながら,作品のドイツ語原文を読み,彼女たちがいかなる問題に対し,いかなる闘いを挑んだのかを読み解いていきます。
【授業の到達目標】
1)文法学習用に作られたドイツ語ではなく,ドイツ人が実際に使用する生のドイツ語を理解し(一部の簡単な表現については、実際に自分でも使えるようにする),その内容を日本語で的確にまとめ発信できるようになる。 2)現代女性作家たちの視点を通して,現在のドイツ(語圏)の社会をより深く理解できるようになる。 3)ドイツの事例を通じて,自国の社会のあり方や問題点について考えることができるようになる。
【授業概要(キーワード)】
ナチ抵抗文学 / 男性優位社会 / ジェンダー / 女性の役割
【科目の位置付け】
カリキュラム・ポリシーとの関係については,「カリキュラム・マップ」を参照し,よく理解した上で履修してください。
【授業計画】
・授業の方法
1回の授業は、以下のように構成されます。 0.予習 前の回に配付される「予習プリント」に従って行う。次回使用する単語の理解が中心となる。 1.必要に応じて背景説明(写真資料・映像資料等を使用) 2.文字資料読解・考察(資料は授業内で配付) ※必要に応じて文法説明 配付されるプリント(「本文プリント」)には、あらかじめ授業者による「読解のためのヒント」が掲載されている。まずはそれに従って注意点を確認した上で、読解作業に入る。 3.練習問題 「復習プリント」により,その日に学んだ文法事項・表現を復習し,実際に自分でも使える(つまり,それを使って会話できる)ものにする。 4.次回の「予習プリント」配付
・日程
※戦後ドイツにおいて重要な役割を果たした女性作家を数人選び,代表作の一部を2回~3回の時間をかけて,ていねいに読み解いていきます。以下は,取り上げる予定の作家と作品名ですが,授業の進行によって変更される場合があります。
1.アンナ・ゼーガース(Anna Seghers, 1900-1983) ナチ抵抗運動の先駆:『第7の十字架(Das siebte Kreuz, 1943)』 2.インゲボルク・バッハマン(Ingeborg Bachmann, 1926-73) 現代社会の喪失感:『30歳(Das dreißigste Jahr, 1961)』 3.カーリン・シュトルック(Karin Struck, 1947-2006) 女性の役割―「死した母」ではなく「生ける母」へ:『母(Die Mutter, 1975)』 4.クリスタ・ヴォルフ(Christa Wolf, 1929-2011) 東独が消滅した後で:『残るものは何か(Was bleibt, 1990)』 5.エルフリーデ・イェリネック(Elfriede Jelinek, 1946-) 女は男の道具?:『欲望(Lust, 1989)』 母親からの呪縛:『ピアニスト(Die Klavierspielerin, 1983)』 6.ヘルタ・ミュラー(Herta Müller, 1953-) 恋愛感情すらも他人を傷付ける不条理な世界―チャウシェスク独裁下のルーマニア:『狙われたキツネ(Der Fuchs war damals schon der Jäger, 1992)』
【学習の方法】
・受講のあり方
〇背景説明:取り上げる作品を理解するためだけでなく,戦後ドイツを理解するために必要なキーワードがいくつか登場します。説明をよく聞いてください。 〇ドイツ語の読解:作品を読むために必要な文法事項をまとめます。1年次の教科書を持参し,参照しながら聞くことも有効です。
・授業時間外学習へのアドバイス
次回の予習をするとともに,前の回でとりあげた範囲をもういちど読み直しておいてください。
【成績の評価】
・基準
主体的な参加の度合い,知識の修得の度合い,理解の度合い,汎用的技能(論理的思考力・文章表現力など)取得の度合いのそれぞれの項目について判定し,その合計点を用いて評価します。
・方法
授業への取り組みとレポートで評価します。授業への取り組みでは,主に主体的な参加の度合い,知識の修得の度合い,理解の度合い,レポートでは主に汎用的技能(論理的思考力・文章表現力など)取得の度合いを見ます。 授業への取り組み60点、レポート40点 ※ただし,レポート提出は必須とします。また,全授業時数の3分の2以上出席していなければなりません。
【テキスト・参考書】
プリントを配付します。 また,教員が文法表を持参し,必要に応じて黒板上に提示します。
【その他】
・学生へのメッセージ
外国語学習は,それ自体で十分目標になり得ますが,同時にいろいろな問題を考えるための非常に有効な手段にもなります。本演習では,そのどちらの側面をも視野に入れ,両者の相乗効果をねらいます。つまり,ドイツ語文をきっかけに問題を考えることによって,ドイツ語能力が向上し,また,ドイツ語能力が向上することによって,さらに様々な問題をより深く考察できるようになる,ということです。
・オフィス・アワー
木曜日12時〜13時,人文社会科学部2号館3階渡辺将尚研究室。会議・出張等が入る場合がありますので,事前にメール等で照会しておくことをお薦めします。
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