【授業の目的】
テーマは「19世紀恋愛文学における女性の表象」。19世紀のフランスでは、約80年間にわたって離婚が法的に禁止されていました。この講義で注目するのは、その影響が恋愛物語の表象にどう現れているかです。第一に、この法律は不倫を流行させ、「姦通小説」というジャンルを生みだします。第二に、家庭から疎外された娼婦や寝取られ亭主が世に溢れだします。こうした法のみならず、当時の宗教観や教育、社会や家族の制度は、男女の恋愛にいかなる影響を及ぼしたのでしょうか。おもにレアリスム文学をとおしてそれを明らかにするのが本講義の目的です。19世紀の文学は男性中心主義と言われますが、この授業ではマイノリティである女性の書き手にも注目します。フェミニズムの発想がまだ存在しない19世紀に、女性はどのようにして理想の相手や結婚を求め、それに挫折していったのでしょうか。
【授業の到達目標】
学生はこの講義を履修することで、 1. おもにレアリスム文学をとおして、近代フランスの文化史的な基礎知識を獲得できる。 2. 近代における「女らしさ」とは何かを考え、19世紀フランスの社会や制度をジェンダーの観点から整理し理解できる。
【授業概要(キーワード)】
恋愛心理小説、離婚禁止法、ジェンダー、女らしさとは何か、イメージ、結婚制度、階級制度、西欧近代社会、姦通小説
【科目の位置付け】
カリキュラム・ポリシーとの関係については、「カリキュラム・マップ」を参照し、よく理解した上で履修してください。
【授業計画】
・授業の方法
本講義で扱う名作は多くが映画化されています。それらの映像化された作品も視聴します。また、学外からゲスト講師を呼ぶ予定です。 基本的には、資料・文献を紹介しながら進めます。抜粋テクストを読んだりすることで、対象の総合的な理解に努めます。受講生からの質問・意見票に対する応答の時間も作ります。
・日程
初回の導入以降、授業では以下を事例として扱います(中心的に取りあげるのはレアリスム(写実主義)の作家と小説です。昨年度とは異なる作品も取りあげます)。 1 ガイダンス(趣旨説明) 2-3 スタンダール 4-5 バルザック 6-7 サンド 8-9 フローベール 10-11 ゾラ 12-14 ボードレールほか 15 総括 ※ 理解度、受講者の関心に応じて一部内容・順序を変更することがあります。
【学習の方法】
・受講のあり方
WebClassで配付される資料を印刷して、重要事項をノートしてください。授業時間前後やオフィス・アワーでの質問も歓迎します。授業中の居眠りや瞑想はむろん厳禁(欠席とみなします)。 フランス語の知識はとくに必要としませんが、フランスの事象を扱うため、フランス語を履修していれば理解はより深まるはずです。
・授業時間外学習へのアドバイス
授業で取りあげる作品をなるべく読んできてください。ほとんどが岩波文庫、新潮文庫や光文社古典新訳文庫で読めます。分かりやすい説明を心がけますが、もしよく分からなかった場合は研究室に質問しに来てください。
【成績の評価】
・基準
到達目標に掲げた2つの達成度に関しては、期末レポートで判断します。1に関しては、自分の言葉で説明できているかを見ます。2については、授業で学んだアプローチ法が身に付いているかを見ます。参加点と期末レポートの点数をあわせ、規定点に達した者を合格とします。
・方法
授業への参加度、意見・感想、学期末提出のレポートの3つに基づき総合的に評価します。 レポートの質は、(1)授業内容を理解できているか、(2)関連する文献を読み込んでいるか、(3)説得性のある考察ができているか、の3点から判断します。
【テキスト・参考書】
複数の著作や論文を参照していきます。概説としては以下のものが参考になります。 (1) 小倉孝誠『〈女らしさ〉の文化史』(中公文庫、2006)、『恋するフランス文学』(慶應義塾大学出版会、2012) (2)ジョルジュ デュビー他『愛と結婚とセクシュアリテの歴史』(新曜社、1993) (3)ジャック・デュボア『現実を語る小説家たち』(法政大学出版局、2005) その他の文献はWebClassで示します。
【その他】
・学生へのメッセージ
本講義は2年生も履修できますが、高年次科目のため、2年生はGPA3.0以上の学生に履修が限られます。 いわゆる「文学・映画好き」以外の学生の学生も興味がもてるような授業を目指します。学生時代に本授業で扱うような古典を読み、教養を身につけておくと、社会に出たあと必ず役に立ちます。 ほかにも、外国の価値観を知り、刺激を受けたいと思う人は、ぜひ履修してください。
・オフィス・アワー
初回の授業で指示します(研究室は人文社会科学部棟3号館6階)。 メールアドレス:y.goda@human.kj.yamagata-u.ac.jp
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