【授業の目的】
南米・中央アンデス地域は、世界遺産のマチュピチュやナスカの地上絵など、先史時代の文化遺産の宝庫である。これらの文化を担ったのは、私たちと同じくアジアにルーツを持つ人々である。この授業では、約14,000年前からはじまるこの地の先史時代に焦点を当て、チンチョーロ文化による最古の埋葬風習からインカ帝国における祖先崇拝儀礼まで、バラエティに富んだ宗教儀礼の裏にある彼らの死生観に迫る。 先史時代の南米大陸では、旧大陸で文明の礎となった鉄器や車輪、文字や活版印刷の発明などは行われなかった。16世紀前半にスペイン人が侵入してくるまで南米には文字がなかったため、それ以前の歴史を明らかにするためには、考古学的手法に頼らざるを得ない。文字に残されていない歴史を、当時の人々が残した物的痕跡から少しずつ紐解いていくことが、この地の考古学研究の醍醐味である。民族誌、民族歴史学、図像学、建築学、バイオ考古学など、アンデス考古学者たちがこれまでに用いてきた様々な方法論や関連理論を通して、当時の死生観について考えてみたい。なお、担当教員がペルー北海岸で行っている発掘調査についても触れる。
【授業の到達目標】
この講義を履修した学生は、 •人類学やアンデス考古学における主要な学説や事例に触れることで(【知識・理解】)、先史アンデス地域における死生観について広く人類学的な立場から討議できるようになる(【技能】および【態度・習慣】)。
【授業概要(キーワード)】
アンデス先史学、死生観、祖先崇拝、民族誌、民族歴史学、図像学、建築学、バイオ考古学
【科目の位置付け】
この授業は、アンデス地域における死生観について人類学的な視点から多角的に考察することで、健全な批判精神に裏打ちされた幅広い知識を習得するものである。
【授業計画】
・授業の方法
•人類学やアンデス考古学における主要学説について取り上げるとともに、最新の研究動向も踏まえて授業を行う。 •配布する資料の精読を中心に講義を進める。 •ゲストレクチャラーを招いて授業を行う。 •教員からの一方通行の授業ではなく、質疑応答によって授業を進めていく。
・日程
人の生や死、祖先といった概念にまつわる人類学的な議論について広く理解し、それを理論的な土台としてアンデス地域における事例について考察する。15回の講義の中で具体的に以下のテーマについて扱う。 順序は変わることがある。 •人の生や死、祖先に関する人類学的議論 •先史アンデス地域における人の生や死、祖先について •民族誌、民族歴史学、図像学、建築学、バイオ考古学などによる方法論 •ペルー北海岸における研究事例
【学習の方法】
・受講のあり方
•漠然と講義を受けるのではなく、質疑応答に積極的に参加し、自分の考えを述べる。 •パワーポイントの内容を配布することはしないので、しっかりノートを取ること。
・授業時間外学習へのアドバイス
•授業で扱うテーマについて、授業前にテキストや参考書を読んでおく。 •さらに理解を深めるために図書館やインターネットで調べてみる。
【成績の評価】
・基準
授業中の質疑応答、学期末試験によって、知識の修得、理解の度合い、論理的思考力、文章表現力、参加の度合いのそれぞれの項目について判定し、その合計点を用いて判定する。 評価基準 •人類学やアンデス考古学に関する基本的な概念や用語を正しく理解していること。 •授業をとおして得られた知識や経験にもとづいて主体的に考察し、論述できること。
・方法
•出席カードと授業中の質疑応答(50%)、学期末試験(50%)の評価項目の得点の合計をもって評点とする。 •毎回の授業開始時に配布する「出席カード」に、授業を聞いて感じたこと・考えたことなどを書き、授業終了後に提出する。 •学期末試験は第15回目の授業時に教室内で実施する。
【テキスト・参考書】
この授業の内容を網羅した日本語のテキストは存在しないため、部分的にPDFやハードコピーの形で配布する。 テキスト: •Matsumoto, Go. Ancestor Worship in the Middle Sicán Theocratic State (Chapters 2, 3, and 8). Ph.D. Dissertation. Department of Anthropology, Southern Illinois University at Carbondale, IL. 2014.(https://www.dropbox.com/s/iiiq04iatbrcgm1/Matsumoto%202014.pdf?dl=0よりダウンロード可) •松本剛著「アンデス斉一説にもとづく祖先イメージの再検討-ペルー北海岸シカン遺跡からの考古学データをもとに-」『古代アメリカ』第20号, 2017.(https://www.dropbox.com/s/bni6b82xdedhl3b/Matsumoto%202017.pdf?dl=0よりダウンロード可) 参考書: •Betanzos, Juan de. Suma y narración de los incas. Polifemo, Madrid. 2004 [1551]. •Hill, Erica and Jon B. Hageman (eds.) The Archaeology of Ancestors: Death, Memory, and Veneration. University Press of Florida, Gainesville, FL. 2016. •Kaulicke, Peter. La muerte en el anriguo Perú: Contextos y conceptos funerarios. Boletín de Arqueología PUCP, No. 1. Fondo Editorial de la Pontificia Universidad Católica del Perú, Lima. 1997. •Shimada, Izumi and James Fitzsimmons (eds.). Living with the Dead in the Andes. University of Arizona Press, Tucson. 2014.
【その他】
・学生へのメッセージ
休講および補講を行う可能性があります。掲示に注意してください。
・オフィス・アワー
•水曜日10:30~12:00(人文社会科学部2号館4階 松本剛研究室) •連絡先:gocito@human.kj.yamagata-u.ac.jp •事前に電子メールでアポイントメントをとること。
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