【授業の目的】
第四紀後半,約100万年間の地球環境変動とりわけ気候変動と地殻変動との重合現象として現れる地形変化について10³〜10⁵年の時間スケールで理解する.
【授業の到達目標】
本講義は,受講者らが将来さまざまな状況で目にする地形景観から,その地域の自然史を自ら解き明かせるようになることを目標としている. 全地球規模での気候変化は,単に気温の変化のみならず陸域・海域の拡大縮小や海面の上昇・下降を引き起こした結果,地表に過去の海岸や流路跡を現在に残している.すなわち地表は,過去の様々な環境の元で発達した地形面の複合体である.本講義では,地図,画像資料を用いて地表に残された様々な時期の地形面を個々に認知・区分・解析することで,それらが形成された当時の古環境を受講者が自ら考え出せるようになる.
【授業概要(キーワード)】
第四紀,気候変動,海面変動,地殻変動,地形発達
【科目の位置付け】
地球環境科学分野のうち地圏環境科学,特に人類の活動場としての地表の成り立ちを学ぶ.身近な景観が,過去の環境変化とともに発達したことを理解するための地球環境学として位置づけられる.
【授業計画】
・授業の方法
最も新しい地質時代,すなわち過去100万〜数万年の時間スケールでの環境変化を理解するため,地形図資料,画像資料を常に提示しながら講義形式で実施する.
・日程
1. 地形発達とは何か 段丘崖の意味を読みとる (1回目) 2. 気候変動と地形変化 (1) 地形に残された氷河時代の痕跡 (2回目)雪氷による地形形成 氷河地形、凍結融解作用、周氷河地形、雪崩地形 (2) 氷河時代の自然環境 (3回目) (3) 気候変動と海水準変動 (4回目) 海底地形に見られる流路跡、埋没波食棚 (4) 大洋底に残された気候変動の痕跡 (5回目) (6) 酸素同位体比から復元された気候変動 (6回目) (7) 陸上堆積物に残された気候変動の痕跡 (7回目) (8) 地形に残された温暖期の痕跡 (8回目) 後期更新世海成段丘群の発見 (9回目) 3. 地形と地層の年代を測る (1) 放射性年代測定法のいろいろ (10回目) 炭素同位体年代測定法 (2) テフロクロノロジー (11回目) 4. 気候変動の成因 (12回目) 5. 地殻変動と気候変化の重合現象としての地形発達 (13回目) 6. 第四紀地殻変動 活断層によって発達した地形 (14回目) 長波長の変形で発達した地形 (15回目)
【学習の方法】
・受講のあり方
授業で用いる資料は,WebClassに配信するので,それを印刷あるいは各自の情報端末にダウンロードして出席すること.それらの図表あるいは景観画像から地球環境の変化を読み取る切り口を学びます.その際,単にきれいな景色として見るのではなく景観の持つ意味を読み取る姿勢を持って下さい.
・授業時間外学習へのアドバイス
授業中に紹介した事象について,図書館資料や検索出来る科学雑誌・論文で各自掘り下げて学習して欲しい.また,マスコミなどが配信する,世界各地で発生する地震や火山活動,地球温暖化に関するリアルタイムな情報やそれらの解説について関心を持って接して下さい.
【成績の評価】
・基準
身近な景観描写を課題として果たし,地域景観に隠された地球史的環境変化を読み取れるたかを成績評価の基準とする.さらに期末試験では,この授業を受けたことで景観が汎地球的な環境変化に伴って変化してきたことの理解が,どの程度達成されているかを評価する.
・方法
授業中に指示する課題と期末試験の評価の比重をそれぞれ10%と90%とし,課題と期末試験の合計点の60%以上を合格とする.
【テキスト・参考書】
授業資料はWebclassに配信するので,各自ダウンロードし印刷したものを持参すること.
参考図書:貝塚ほか,写真と図で見る地形学.東大出版会(ISBN978-4-13-062080-2), 貝塚爽平著,発達史地形学,東大出版会 (ISBN978-4-13-060720-9)
【その他】
・学生へのメッセージ
国内や世界各地の地形景観を示しながら授業を進めます.地図帳を持って来て下さい.
・オフィス・アワー
出張時以外は,夕方(5時すぎ)研究室(地域教育学部2号館3階資料検索室1・地形学実験室)にいます.随時受け付けます.
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