【授業の目的】
法と正義についての哲学的思考とはどのようなものか、それにはいかなる意義があるのかについて概説し、法哲学の基礎的知識を得ることを目的とする。法哲学1では「現代の正義論」について、リベラリズムと呼ばれる考え方とそれに対する批判を軸に、現代の法哲学者による正義論の展開を検討する。家族・親密圏における正義や国境を超える正義等の個別の論点に対する考察も織り交ぜる。全体を通じて、正義という理念への信頼と懐疑の双方に十分目配りしつつ、法に対する柔軟で主体的な考察のための機会を提供したい。
【授業の到達目標】
正義について哲学的に考察するための基本的知識を身につける。現代社会の抱える難問について適理的に討議することができる。法と正義の意味について自分なりの観点をもつ。
【授業概要(キーワード)】
正義、リベラリズム、功利主義、リバタリアニズム、フェミニズム、自由、平等、共同体
【科目の位置付け】
この授業は、現代社会で活躍するために必要な知識と教養を身につけ、法学分野の高度な専門知を獲得するための科目である。
【授業計画】
・授業の方法
講義形式で行うが、受講生とのディスカッションを極めて重視する。論点提示や参考文献紹介のためのレジュメをWeb Classにアップロードする。
・日程
初回をイントロダクションにあて、2回目以降は概ね以下のトピックを扱う。
1、メタ倫理学について 2、リベラリズム 3、功利主義 4、公正としての正義 5、リバタリアニズム 6、平等主義 7、リベラリズムへの挑戦 8、共同体論 9、多文化主義 10、フェミニズム 11、国境を超える正義について
【学習の方法】
・受講のあり方
講義の内容を各自ノートにとりながら、論点を把握すること。各トピック毎に問い掛けを事前に提示するので、応答を考えて授業に臨むこと。授業中の発言・Web Class等を通じて、授業内容に積極的に応答すること。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
受講ノートを見直し論点をまとめる。疑問点を質問する。授業で紹介する参考文献(映像資料を含む)にあたり、授業内容への理解を深める。授業と関連する国内外のニュースに関心を持ち、授業内容と結びつけて考える習慣をもつ。なお、折に触れて憲法学、政治思想史、公共政策学等との関連性について言及する予定なので各自の学習の参考としてください。
【成績の評価】
・基準
正義について哲学的に考察するための基本的知識を身につけたこと、現代社会の抱える難問について適理的に討議することができること、法と正義の意味について自分なりの観点をもつこと、が合格の基準である。
・方法
期末試験(60%)、授業への主体的参加(40%)。ただし、受講生の人数に応じて配分を変えることがあり得る。
【テキスト・参考書】
テキストは使用しない。
参考書〔授業内でも適宜紹介する。図書館に所蔵しているものを中心とするが、仮に所蔵がない場合も教員が所有している場合があるので、遠慮せず問い合わせてほしい。〕 (本授業と現代の大学を取り巻く情況について)佐藤郁哉『大学改革の迷走』(2019年、筑摩書房) (法哲学1・2共通)井上達夫編『現代法哲学講義〔第2版〕』(2018年、信山社)、J.S.ミル『自由論』(翻訳は各種あり)、深田三徳・濱真一郎編『よくわかる法哲学・法思想〔第2版〕』(2015年、ミネルヴァ書房)、瀧川裕英・宇佐美誠・大屋雄裕『法哲学』(2014年、有斐閣)。 (法哲学1について)マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』(2011年、鬼澤忍訳、ハヤカワ文庫)。
【その他】
・学生へのメッセージ
この授業が、正義と法という言葉は「切れば血の出る」生々しい概念であることに触れるきっかけになり、法学という学問領域に魅力を感じている学生はもちろん、そうでない学生にとっても、法への新鮮な関心を喚起する時間になれば、と思います。総合法律コース以外の学生も大歓迎です。
・オフィス・アワー
火曜日10:30~12:00(これ以外でも研究室在室中は随時可能)/人文2号館3階、池田(弘)研究室。
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