有機金属化学特論
 Advanced Organometallic Chemistry
 担当教員:前山 勝也(MAEYAMA Katsuya)
 担当教員の所属:大学院有機材料システム研究科
 開講学年:1年,2年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:有機材料システム専攻(博士前期課程)  科目区分:選択講義科目 
【授業の目的】
近年大きく発展し、有機材料・有機工業製品の開発にとって必要不可欠な、有機化学と無機化学の学際領域である有機金属化学に焦点を当て、有機金属化学の基礎的な知識を得るとともに、有機合成化学分野・高分子合成分野における応用例について理解を深めることを目的とする。

【授業の到達目標】
(1)典型金属化合物の調製法および反応例について説明できる【知識・理解】
(2)酸化的付加・還元的脱離・挿入過程について説明できる【知識・理解】
(3)鈴木-宮浦カップリング反応などのカップリング反応の反応機構について説明できる【知識・理解】
(4)Ziegler-Natta触媒・メタロセン触媒・メタセシス触媒・カップリング触媒の特長について説明できる【知識・理解】
(5)遷移金属錯体の中心金属および配位子の種類の違いによる、触媒としての反応挙動の違いについて説明できる【知識・理解】
(6)自ら、合成したい有機分子・有機高分子の合成経路を計画することができる【技能】

【授業概要(キーワード)】
18電子則・酸化的付加・還元的脱離・遷移金属触媒・配位子・鈴木ー宮浦カップリング反応・配位子理論・π共役系拡張

【科目の位置付け】
本授業は、近年発展してきた「有機金属化学」分野について、基礎から応用まで学び、自ら有機物質(くすり・機能性分子・有機材料)を開発する方法を提案できる力を体得するものである。なお、本授業を受講するにあたり、有機化学や無機化学(錯体化学)を受講しておくことが望ましい。

【授業計画】
・授業の方法
(1)授業前に授業内容の要点を整理した授業資料を配付する
(2)講義は、この授業資料をもとに、発展的内容・最新の内容を織り込みながら板書を交えて行う
・日程
第1回 ガイダンスおよび有機金属化学の歴史
第2-3回 有機典型金属化合物の合成と反応
第4-5回 遷移金属錯体の種類と合成、反応形式と配位子
第6-9回 遷移金属錯体を用いた触媒反応(水素化・ヒドロホルミル化・Wackerプロセス・Monsanto法・鈴木―宮浦カップリング反応・右田-Stilleカップリング反応・根岸カップリング反応・熊田カップリング反応・溝呂木-Heck反応・Murai反応・薗頭カップリング反応・メタセシス反応)
第10-14回 遷移金属錯体を用いた高分子合成反応(Ziegler-Natta触媒・メタロセン触媒・ポストメタロセン触媒・メタセシス触媒・芳香族カップリング触媒など)
第15回 定期試験および解説

【学習の方法】
・受講のあり方
授業前に配付する授業資料を基に板書による講義を行うので、授業資料プリントに加筆を行ったり、ノートテーキングを行うことで内容の理解に努める。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
(1)予習は必要ない。
(2)受講後、授業資料およびノートを見直しながら復習を行う。
(3)授業内容で疑問に思ったことは、参考教科書を用いて疑問の解消に努め、解消できなかった疑問点は担当教員に質問をする。
(4)授業内容で興味を持ったことは、参考教科書や調査した文献を用いて理解の深化に努める。

【成績の評価】
・基準
以下の六項目について理解でき、正しく説明できることを合格の基準とします。
(1)典型金属化合物の調製法および反応例について説明できるか。
(2)酸化的付加・還元的脱離・挿入過程とはどういう反応段階か説明できるか
(3)鈴木-宮浦カップリング反応などの種々のカップリング反応の反応機構を自ら説明でき、なぜ機能性材料開発にこの反応がよく用いられているのか説明できるか
(4)Ziegler-Natta触媒・メタロセン触媒・メタセシス触媒・カップリング触媒の特長について理解し、触媒の構造と働きを関連付けて説明できるか
(5)遷移金属錯体の中心金属および配位子の種類の違いによる、触媒としての反応挙動の違いについて説明できるか
(6)自ら開発したい有機分子を設定し、その金属触媒を用いた合成方法を提案できるか
・方法
成績の評価方法としては、授業参加点60点+試験40点で、総合的に評価します。

【テキスト・参考書】
授業資料を適宜配付する。さらに理解を深めるには下記書がおすすめである。
野依良治ほか編、大学院講義有機化学I、東京化学同人(1999)
松田勇・丸岡啓二著、有機金属化学、丸善(1997)
R.ホワイマン著、有機金属と触媒、化学同人(2003)
シュライバーアトキンス無機化学(下)第6版 東京化学同人(2017) 20,22,25章

【その他】
・学生へのメッセージ
学部で開講される有機化学系科目の講義を理解している前提で授業をすすめる。高分子の合成開発を目指すみなさんだけでなく、有機低分子化合物やクスリの開発を目指すみなさんにも受講していただきたいです
・オフィス・アワー
前山教員室(2号館1階109号室)にて、毎週水曜日16:30-17:30に設けます
質問があるときは、授業後に直接問い合せてください。

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