【授業の目的】
演習問題に自らとりくむ事で熱・統計力学の基本的な理論構成を学び,具体系へ応用する.熱・統計力学に関する基礎的な事項の理解と,実際の問題に対する適用法の修得を目的とする.熱力学の知識と関連づけながら,相乗的に平衡状態の理解を深める.必要となる物理数学の演習も行う.
【授業の到達目標】
1. 講義で修得した熱・統計力学の基本法則を演習問題に適用できる. 【知識・理解】 2. 問題の解決に必要となる数学を説明でき,使用できる. 【知識・理解】 3. 演習問題の解を基本法則に沿って理解し,定性的に説明できる. 【知識・理解】
【授業概要(キーワード)】
平衡状態の熱・統計力学,熱力学量,確率論,アンサンブル,学生主体型授業(アクティブラーニング)
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:1~25% C-2.事前学習(下調べ、調査等含む)をした上で、プレゼンテーションを行い、互いに質疑応答や議論を行う機会がある。:26~50%
【科目の位置付け】
この授業は,選択したコースの専門的知識を身につけ,その分野の先端的な研究内容を理解し,説明できる能力を身につけるための1科目である(理学部ディプロマ・ポリシー).選択したコース以外の幅広い理学の基礎的知識も身につける.
【SDGs(持続可能な開発目標)】
07.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
【授業計画】
・授業の方法
講義・輪講形式で熱・統計力学の体系を学び,以下に挙げた標準的なテーマについて実際に応用する.適宜レポート課題を課し,熱・統計力学の深い理解とともに数学の力を向上させる.受講者に教科書の内容を整理して発表してもらい,ディスカッションしながら理解を深める.
・日程
統計力学の関係式の導出とともに,熱力学の背景知識を補いながら講義を進めます.主要なテーマと順序は以下のとおりです. 第1回 数学の準備 - 確率論の基本 第2回 数学の準備 - 物理量のゆらぎと大数の法則 第3回 量子力学 - エネルギー固有状態と状態数 第4回 量子統計力学(基礎)- 熱力学と平衡状態の特徴 第5回 量子統計力学(基礎)- ミクロカノニカル・アンサンブル 第6回 量子統計力学(基礎)- カノニカル・アンサンブルの導出 第7回 量子統計力学(応用)- 理想気体と状態方程式 第8回 量子統計力学(応用)- 常磁性体 第9回 量子統計力学(応用)- 調和振動子の集団と比熱 第10回 古典統計力学(基礎)- 古典近似とエネルギー等分配則 第11回 量子・古典統計力学(応用)- 重力中の理想気体,高分子の弾性,二原子分子理想気体 第12回 量子・古典統計力学(応用)- 格子振動と結晶の比熱 第13回 量子統計力学(基礎)- グランドカノニカル・アンサンブルの導出 第14回 量子統計力学(応用) - 量子理想気体の基礎 第15回 期末テストとまとめ
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
熱力学の知識と統計力学で新しく出てくる概念をしっかり整理・理解し,さまざまな具体系への応用を扱う中で平衡状態の理解を深めましょう.自分で手を動かして計算力を高めてください.受講者に予習内容を発表してもらいます.他の人が発表者になった時にも,活発な質問と討論を期待します.
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
次回の範囲を各自予習し,最低限,教科書の式は自分で導出すること.レポート課題も課しますので必ず提出してください.熱・統計力学はミクロの詳細とマクロの物性とを結びつけて理解できる点が強みです.単に熱力学量の解析的な式を導いて放り出すのでなく,例えばグラフにプロットしてみて,その特徴とミクロの状態がいかに対応付いているか考えてみてください.開講前に量子力学と熱力学を復習しておいてください.
【成績の評価】
・基準
授業の到達目標で示した基礎的事項について,基本的な概念や数式を正しく理解・応用できていることを合格の基準とします.とりわけ以下の事項を中心に評価します. 1. 熱・統計力学に出てくる数学を自在に使える. 2. 様々な熱力学量の意味合いとアンサンブルの特徴を理解する. 3. 特にカノニカル・アンサンブルを使って,授業で扱う程度の基本的な問題を自分で解ける.
・方法
レポート点(50%, 発表点10%込み),期末テスト(50%)の結果をもとに理解度を確認し,成績評価します.
【テキスト・参考書】
テキスト: 田崎晴明 著,統計力学 I・II(培風館) 参考書: ライフ 著,統計熱物理学の基礎 上・中・下(吉岡書店),高橋康 著,統計力学入門―愚問からのアプローチ(講談社),清水明 著,熱力学の基礎(東京大学出版会)
【その他】
・学生へのメッセージ
演習問題に対応する物理現象を数式とつきあわせてイメージするように心掛けましょう.講義中に発表してもらったり意見を求めたりしますが,間違えても全く構いません.理解を深めるために講義やディスカッションを活用してください.自学自習を欠かさないこと.
・オフィス・アワー
授業時間外に学生の質問に答える「オフィス・アワー」は火曜日12時から13時で,場所はC308号室です.
|