【授業の目的】
人類学者たちが、ボアズやマリノフスキー以来、長きにわたって蓄積されてきた民族誌を自省的に見直すようになってから、社会文化人類学的研究は隘路を歩み始めることとなった。ある種の閉塞感が漂い始めるなか、レヴィ・ストロースの思想を継承した一部の研究者たちが「人間と他の生物種との関係」という新しい研究領域へと踏み込むとともに、アニミズムやパースペクティヴィズム、多自然主義などの新しいトピックを生み出した。ここでは、人間という概念そのものや、多種との関係が見直され、それまでの人間中心主義的な思考を覆す試みがなされた。「マルチスピーシーズ人類学」の名で総称されるこの動きは、人類学のみならず、広く人文学一般やその周辺領域をも巻き込みながら、新しい思想を形成しつつある。この授業では、こうした「人間的なるものを超えた人類学」とその影響を概観することを目的とする。
【授業の到達目標】
この授業の到達目標は以下のとおり: • マルチスピーシーズ人類学の成立過程やその影響について適切に説明できる。 • マルチスピーシーズ人類学に関連する基本的な概念や用語、考え方を正しく理解する。 • 授業をとおして得られた知識や経験にもとづいて主体的に考察し、積極的・能動的に発言できる。
【授業概要(キーワード)】
再帰人類学、人新世、アニミズム、パースペクティヴィズム、多自然主義、マルチスピーシーズ民族誌、制作論的転回、文理融合
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
B-2.事前学習(下調べ、調査等含む)をした上で、他の学生の意見を尊重しつつグループとしての結論を出すために議論をする機会がある。:1~25% C-2.事前学習(下調べ、調査等含む)をした上で、プレゼンテーションを行い、互いに質疑応答や議論を行う機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
⼈間と⽂化について地域や分野を横断する視点から幅広い教養を⾝に付け、⼈⽂学の専⾨知を体系的に修得するための基礎を獲得するために編成される科⽬である(⼈⽂社会科学部⼈間⽂化コースのカリキュラム・ポリシー)。
【SDGs(持続可能な開発目標)】
01.貧困をなくそう 02.飢餓をゼロに 05.ジェンダー平等を実現しよう 07.エネルギーをみんなにそしてクリーンに 10.人や国の不平等をなくそう 11.住み続けられるまちづくりを 12.つくる責任つかう責任 13.気候変動に具体的な対策を 14.海の豊かさを守ろう 15.陸の豊かさも守ろう
【授業計画】
・授業の方法
教員からの一方通行の授業ではなく、質疑応答と議論によって授業を進めていく。
・日程
主要なテーマは次のとおり: • 構造主義人類学の遺産とその展開 • 既存概念の見直し(人間、自然、種など) • 多種混淆の世界と人類(人間-存在から人間-生成へ) • 制作論的転回 ※ 内容や順序は状況によって変更する。
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
• 漠然と講義を受けるのではなく、質疑応答に積極的に参加し、自分の考えを述べる。 • パワーポイントの内容を配布することはしないので、しっかりノートを取ること。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
• 授業で扱うテーマについて、授業前に関連書籍を精読しておく。 • さらに理解を深めるために図書館やインターネットで調べてみる。
【成績の評価】
・基準
合格の基準は次のとおり: • マルチスピーシーズ人類学の成立過程やその影響について適切に説明できること。 • マルチスピーシーズ人類学に関連する基本的な概念や用語、考え方を正しく理解していること。 • 授業をとおして得られた知識や経験にもとづいて主体的に考察し、積極的・能動的に発言できること。
・方法
• 出席ポイント(50%)と中間・期末試験ポイント(50%)の合計をもって評点とする。 • 毎回の授業後にWebClassで設置される「出席カード」(いわゆるリフレクションペーパー)に、授業を聞いて感じたこと・考えたこと・質問・要望などを書いて提出してもらう。これを出席ポイントとして換算する。 • 対面授業が許される状況であれば、中間・期末試験ともに授業時間中に教室内で実施するが(第8回および第15回授業)、すべてオンライン授業になる場合にはレポート課題を課す。
【テキスト・参考書】
授業内で随時紹介・配布する。
【その他】
・学生へのメッセージ
休講および補講を行う可能性があるので、WebClassでのお知らせに注意すること。
・オフィス・アワー
• 水曜日11:00~12:30(人文社会科学部2号館4階 松本剛研究室) • 連絡先:gocito@human.kj.yamagata-u.ac.jp • 事前に電子メールでアポイントメントをとること。
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