【授業の目的】
〈大正期の谷崎潤一郎とその周辺〉 「文豪」谷崎のスランプ期といわれ、これまで必ずしも高く評価されてはいなかった大正期における谷崎潤一郎の文学的営為を、今一度たどりなおす。同時代の文学・社会と深く関わって出立し、先駆的な様式を次々と採用して変化し続けたこの時期のテクスト群は、幻想小説という手法の可能性と臨界とを探り尽くす実験としてあった。この講義ではその内実を総合的に探求する。
【授業の到達目標】
(1)文学研究における方法論を理解し自身の関心に基づいて応用できる。【技能】 (2)対象とする文学テクストの歴史的位置づけや特質を説明できる。【技能】 (3)同時代の文芸思潮やメディアの問題を含めた文学に関する多面的な理解に基づき、特定の文学テクストや文化現象の特質について独自の問題意識を示す論述ができる。【技能】
【授業概要(キーワード)】
大正文学 谷崎潤一郎 幻想文学
【科目の位置付け】
この科目は、日本近代文学・文化についての高度な専門知を修得するための科目である。(人文社会科学部のカリキュラム・ポリシー)
【SDGs(持続可能な開発目標)】
04.質の高い教育をみんなに
【授業計画】
・授業の方法
配布資料に基づいた講述を中心とする。発言(小スピーチ)やレポートの提出を求めることがある。
・日程
1 ガイダンス 2 谷崎文学と「思想」性 第1部 漱石の影響 3 「それから」現象 4 実篤、荷風と谷崎 第2部 幻想文学とマゾヒズム 5 「刺青」冒頭を巡って 6 ドゥルーズのマゾヒズム論と谷崎テクストの構成 7 「少年」と幻想文学の構造 第3部 先駆的なミステリ様式として 8 「幇間」とパノラマ 9 「秘密」と目かくし 10 視線、浅草、近代 11 中間レポート講評 第4部 幻想の臨界 12 「人面疽」とアメリカ、日本 13 「小さな王国」と「地方」 14 初期谷崎小説の射程 まとめ 15 まとめ
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
・配布された資料をもとに、自分のノートを作成し、授業内レポートや期末レポートに備える。 ・小スピーチや小レポートの提出には積極的に取り組む。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
本科目では以下の課題等を課す。準備学修に必要な学修時間の目安は1時間/週。 ・事前に指定されたテクストがある場合にはそれを読了する。 ・中規模レポートの提出が要請された回では、確実にそれを準備する。 ・期末レポートに備えて、ノートを用いて授業内容を整理し、授業内で取り上げられた作品や提示された参考文献のいくつかを読み通すことに挑戦する。
【成績の評価】
・基準
・授業内に扱う文学テクストの歴史的位置づけや特質を説明できる。 ・特定の文学テクストの特質について独自の関心や問題意識を示す応用的な論述ができる。 以上の基準について、授業への参加の度合いと知識の修得及び理解、論理的思考とその表現という4点で評価する。
・方法
期末レポート(70%)、授業内レポート(20%)、その他の授業内活動に対する評価(10%)
【テキスト・参考書】
特に指定しないが、授業計画に示した、「刺青」「少年」「幇間」「秘密」「人面疽」「小さな王国」の6作品についてはすべて読了できる環境を整えること。いくつかは青空文庫/Kindleで参照できる。
【その他】
・オフィス・アワー
授業時間外に学生の質問にこたえるオフィスアワーについては、木曜日14:40〜16:10 森岡研究室(人文社会科学部1号館4階425室)に設定する。ただし、その他の時間についても相談に応じる(メールなどでアポイントが必要)。
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