日本近世文学演習
 Seminar on Japanese Early Modern Literature (Directed Reading in Japanese Culture)
 担当教員:山本 陽史(YAMAMOTO Harufumi)
 担当教員の所属:山形大学
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:3年,4年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:演習
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
〈江戸の戯作(げさく)を読む〉 江戸時代の日本は高度に商業が発達し、庶民が経済的な余裕を持つようになりました。それに伴って識字率が高まり、商業出版が行われるようになりました。19世紀後半の江戸では「戯作」と呼ばれる笑いの文学が盛んになりました。大衆文化の担い手になった武士や町人が作者となり、世相を諷刺したり、言葉遊びやパロディを楽しむ作品が多数出版されました。その一形態に「黄表紙」と呼ばれる画と文で構成された、現代の漫画に近いジャンルがあります。絵の余白に地の文と登場人物のセリフが書き込まれています。浮世絵師で戯作の作者でもあった山東京伝は黄表紙以外にも画と文が相まって文学世界を作り出す作品を多数書いています。この演習では京伝の作品から未注釈の作品をいくつか選び、原本の影印(写真版)で読み解いていきます。

【授業の到達目標】
1) 江戸時代の庶民文化の特徴を説明することができる。【知識・理解】
2) 変体仮名が一定程度読むことができる。【技能】
3) 辞書などのレファレンス文献から的確な情報を収集できる。【技能】
4) 発表やレポート作成に際して、著作権や引用の作法などを守ることができる。【態度・習慣】

【授業概要(キーワード)】
市民(庶民),戯作,出版,笑い,浮世絵

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
C-1.自分の意見をまとめて発表する機会がある。:1~25%
A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:1~25%
A-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を記述する機会がある。:1~25%

【科目の位置付け】
日本学主専攻プログラムの設置科目の一つです。能動的な学びを通して専門的学芸を掘り下げ、オーソドックスな研究方法を身につけることが目的です。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
04.質の高い教育をみんなに

【授業計画】
・授業の方法
初めの数回は戯作についての概説、山東京伝の代表作の紹介、変体仮名を読む練習です。その間に受講生に作品の一部分を割り当てます。受講人数によりますが、2,3人のグループを作って担当を決めるつもりです。5回目以降は毎回学生の発表を基本に進めます。発表に際しては以下の手順で準備してください。(1)原文(主に変体仮名)を読み、翻字(読んだ結果を文字に起こす)する。(2)辞書等で言葉の意味を調べる。(3)現代語訳を作る。(4)発表では原本の影印とともに内容を説明する。
・日程
1 授業の概要説明、発表割り当て、達成目標の設定 2~4 戯作と山東京伝についての説明、変体仮名の読み方練習、調査方法についてのアドバイス、作品割当て 5~14 発表 15 教員による総括と受講生自身の自己評価 ※コロナウイルスの蔓延状況によってはウェブクラスやzoomを駆使したオンライン開催も併用する可能性もあります。

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
私たちが高校の国語の時間で習った古典文学は現存している作品のごく一部に過ぎません、膨大な量の作品は未翻刻・未注釈のままで存在しています。変体仮名が読めると古典文学の世界が一気に広がります。自分が日本で初めて解読に取り組むのというフロンティア精神で戯作に挑んでみましょう。
準備学習に要する時間は2時間/週です。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
・予習 変体仮名は慣れれば読めるようになります。授業の時間外にも自主的に練習すると上達が早いです。
・復習 発表でダメ出しされた点について発表者だけでなく聞いていた人も補充の調査を行ってください。

【成績の評価】
・基準
発発表と最終レポートを課し、知識の修得・理解の度合い・汎用的技能(情報収集能力、分析能力)・参加の度合い(自身の発表と他の発表に対する質疑応答など)、これら4項目について判定し、その合計点を用いて判定します。基準は以下の通りです。1)文学研究の基礎である変体仮名を読めるようになったか 2)辞書や先行の注釈書など、確かな情報源から正確な知識を抽出できるようになったか 3)作品を正確に読解できているか 4)江戸時代の戯作の精神と方法論が理解できたか
・方法
1) 発表 40%
2) 最終レポート 40%
3) 達成度の自己評価 20%

【テキスト・参考書】
テキスト:山本陽史編『シリーズ江戸戯作 山東京伝』(おうふう)『山東京伝全集』(ぺりかん社)※教員が必要部分を用意し、配付します。
参考書:佐藤至子『山東京伝 滑稽洒落第一の作者』 (ミネルヴァ日本評伝選) ミネルヴァ書房、2009 ISBN-10: 4623054594 税込3,300円

【その他】
・学生へのメッセージ
18世紀後半に成立した西洋市民社会での市民文化に類似した社会・文化が近世の江戸にも成立していました。元駐日米国大使でハーバード大学教授をつとめ、平泉中尊寺や山寺立石寺を開いたとされる天台宗の円仁慈覚大師の研究家であるエドウィン・ライシャワー博士は欧米と日本で同時にそのような社会・文化が成立していたことの重要性を指摘しています。狂歌や川柳、戯作、浮世絵、歌舞伎などといった市民文化を知ることは日本の歴史や文化をグローバルな視点で捉える姿勢を身につけることにつながっていきます。
・オフィス・アワー
研究室またはオンライン、電子メールで授業時間外の質問・相談を受け付けます。ただし出張が多いため面談を要する場合はメールで日時を相談してください。

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