多文化共生論
 Multicultural Citizenship
 担当教員:伊藤 豊(ITO Yutaka)
 担当教員の所属:人文社会科学部人文社会科学科グローバル・スタディーズコース
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:2年,3年,4年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
本授業の目的は、「多文化共生」をめぐる様々な争点について、英語圏での事例を用いて多角的に検討し、異文化理解のための基本的視座と方法を学ぶことである。具体的には(1)多文化共生に関する様々な言論ならびに文化の状況を英語圏での事例に拠りつつ講義し、(2)多様な文化的背景を持った人々が相互交流するに際して、いったい何がどのように問題化し、解決や妥協が目指されてきたかを、具体的な実例を紹介しつつ検討する。上記と連動して、外国人教員や留学生を適宜招いて授業テーマに関連する講演等をおこない、身近な外国人との交流の機会を提供する。また日本との比較を適宜試みることで、受講者は文化の多様性や異文化交流の意義を、日本の歴史や現状の文脈で追体験し、理解することになろう。

【授業の到達目標】
到達目標は以下の通り:(1)授業で学んだ英語圏世界の歴史、社会、文化に関する基本的な内容と、文化的多様性を踏まえた異文化コミュニケーションの現状ならびに課題を理解できるようになる。(2)相互に異なる文化的背景を持つ人々の交流の経緯と現状を、英語圏世界の事例を中心として学び、また、そうした学びを通じて文化の多様性を追体験し、異文化交流の意義について理解できるようになる。(3)授業で学んだ視座と方法を、様々な文化的事象に適用して考察し、期末試験の答案を作成できるようになる。

【授業概要(キーワード)】
多文化共生、シティズンシップ、文化、セクシュアリティ、移民、同化、(リベラル)ナショナリズム、ヴェール論争

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:26~50%
A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:26~50%
A-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を記述する機会がある。:26~50%

【科目の位置付け】
本授業は、受講者が「国際地域社会や多文化社会に関する高度な専門知」の獲得を通じて、「グローバル社会で活躍するために必要な知識と教養を身につけ、他者や異文化への柔軟な理解力を養成」できるよう設計されている(GSコースカリキュラムポリシーより)。カリキュラム・ポリシーとの関係については、「カリキュラム・マップ」を参照し、よく理解したうえで履修すること。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
01.貧困をなくそう
02.飢餓をゼロに
03.すべての人に健康と福祉を
04.質の高い教育をみんなに
05.ジェンダー平等を実現しよう
10.人や国の不平等をなくそう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう

【授業計画】
・授業の方法
毎回の講義後にはコメント票を配り、質問や意見などを聴取しつつ、授業に関する受講者の理解度を確認する。次の授業で前回出た質問や意見に答えつつ、また講義に戻る、といった形式で進めていく。
・日程
第1回:「多文化共生」の諸問題ー序論として
第2回:多文化共生とシティズンシップーアメリカ、イギリス、日本(アメリカ、イギリスからの留学生、教員を招いて討議を行う)
第3回:多文化社会における文化権ーアメリカ先住民をめぐって
第4回:多文化共生とセクシュアリティ―欧米と日本
第5回:イギリスにおける多文化共生と性的マイノリティの歴史ー『ウォルフェンデン報告書』の意義
第6回:現代イギリスにおける多文化共生と性的マイノリティの現在―「修正28条」をめぐる攻防
第7回:多文化社会と移民ーアメリカv.s.日本
第8回:「同化」と多文化共生ーアメリカ移民史をめぐって
第9回:アメリカの反移民主義―ネイティヴィストの主張
第10回:マルティカルチュラリストの反撃ー60年代以降のアメリカ
第11回:ナショナリストの言論ー9.11以降のアメリカ
第12回:文化的多様性と社会的統ー可能性としてのリベラルナショナリズム
第13回:文化的他者としてのイスラームーイギリスv.s.日本
第14回:イギリスのヴェール論争ー争点と課題
第15回:まとめー多文化共生は可能か?&期末試験

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
担当教員は学生からの積極的かつ論理的な質問や意見を求めているので、その点によく留意してコメント票に記入すること。授業用に教員から配られる資料を参考にしつつ、重要事項をノートにとること。授業の前後やオフィスアワーでの質問を歓迎する。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
毎回の講義内容に応じて、授業資料の復習や授業中に紹介した本を読むなどの宿題を与える。授業中のコメント票記入の際には、宿題がきちんとできているかどうかを確かめるための課題を設定するので、受講者は日頃から自習を欠かさないこと。

【成績の評価】
・基準
評価にあたっては、まず以下の3点を重視する:
(1)授業で学んだ英語圏世界の歴史、社会、文化に関する基本的な内容と、文化的多様性を踏まえた異文化コミュニケーションの現状ならびに課題を理解できているか。(2)英語圏世界の事例を中心とした、相互に異なる文化的背景を持つ人々の交流の経緯と現状を理解できているか。また、文化の多様性と異文化交流の意義について、授業での学びを通じた体験的な理解ができているか。(3)授業で学んだ視座と方法を、様々な文化的事象に適用して考察し、期末試験の答案を作成できているか。
上記の3点に関して、本学部のガイドラインである、「主体的な参加の度合い」、「知識の修得の度合い」、「理解の度合い」、「汎用的技能の修得の度合い(論理的思考力、文法表現力)」の4つの基準で成績評価をおこない、合計で最低6割の得点率をもって合格と判断する。
・方法
授業参加状況(コメント票の記入内容についての評価を含む):50点、期末試験:50点

【テキスト・参考書】
授業用テキストとして特に指定するものはないが、授業資料PDFをウェブクラスで配布するので、受講者は各自で事前にダウンロードしておくこと。また、参考書として以下を挙げておく。
・ウィル・キムリッカ『多文化時代の市民権―マイノリティの権利と自由主義』
(晃洋書房、1998年)
・樽本英樹『よくわかる国際社会学(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)』(ミネルヴァ書房、2009年)。
・クリスチャン ヨプケ 『ヴェール論争―リベラリズムの試練』(法政大学出版局、2015年)

【その他】
・学生へのメッセージ
授業は朝一で大変だろうが、まずは遅れず休まず頑張って教室まで来てほしい。
・オフィス・アワー
オフィスアワーは原則として水曜の12:05-12:50とし、伊藤研究室(人文2号館4階)にて開催する。ただし、水曜の12:05-12:50に限らず研究室に在室時は随時対応するので、時間外に飛び込みで来室しても構わない。長時間の面談を希望する者は、事前にメールで予約すること。(メルアドは初回授業にて知らせる。)

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